by jun | 2019/05/31

調べたいことがあって去年買って読みたいとこだけ読んで連休中に全部読み直して感想をちょこちょこ書いていたら、先日マジオンで取り扱いが始まって丁度いいので感想まとめておきます。
これはポールハリスの全3巻のベスト盤的なシリーズの1冊目で、Re-SetもLas Vegas SplitもThe Bizarre TwistもColor StunnerもInterlaced VanishもこのBook 1に入ってて、それ以外のあんま知られてないのも大豊作で超おもろかったです。
収録数も多いし一個一個のアイデアもキレまくってるし現象から変わってるのが多いのでカード好きなら絶対楽しめます。
カード以外の物だとそれをそう使うのかっていうのがより際立っていて発想自体が本当に面白い。
この本の大半が70年代の作品ですが、今読んでも本当に新鮮で初めて読むやつでも良すぎてこれ知らないの俺だけなのではという不安に襲われたりしました。
とにかく量が多いので章ごとに半分ぐらい現象だけでも書けたらなという感じでいきます。

NEW STUFF

ここのメインは”Buck Naked”というお札を使ったアイデア。
見た目パズル的ではあるんですが演出もちゃんとあって面白い変化の現象です。
“Buck Naked Grant”というトランスポジションの手順が気に入りました。

カードは”Unshuffling Rebecca”というのがよくて、デック全体のリバース現象みたいな感じなんですけど、軽い演出で普通に考えたら別に何も起こってないっぽくも見えるところを手品にしていて素敵です。

“Backlash”はサインカードの移動プラスアルファの現象です。
両面にサインしてもらうけど移動後に片面が演者のサインに変わってしまうもので、演者のサインじゃなくても他のメッセージ残したり色々考えられそうだし超低負担で説得力も強いです。

お気に入りは”Apple”というりんごのトーンアンドレストア。
断面がくっついてポコーンつって丸ごとりんごになります。
クリーンアップの処理が凄い良いですこれ。

FIRST PIECE (1973)

ここは一作品、”P.H. Vanishing Deck”が解説されてます。
オリジナルのギミックとハンドリングをねっとり解説。
売りネタのバニッシングデックと違って箱の外で消せて、消えたデックが箱に戻る的な使い方ができます。
カードケースをデックが貫通する的な使い方も解説されてて個人的にはそっちが好きです。

THE MAGIC OF PAUL HARRIS (1976)

“Color Stunner”はここで解説。
まあ今の目で見ればトライアンフとカラーチェンジングデックの食い合わせ問題とかあって、もう少し何かしらの演出が欲しいとは思いますがハンドリング的には何の問題もないです。

他、”Illusion”はサンドイッチしたカードの移動現象で、消えたカードがデックの中から表向きで出てきます。
確か松田さんの本に載ってましたねこれ。小技がちょこちょこ登場する感じが良いです。

“Flip Flop Plop”は錯覚を使ったシンプルなコントロール技法。

見て覚えてもらっただけのカードを当てる”Think of a Card”が面白い解決法で、これのレイコスビーによるレイコスビーとしか言いようがないバリエーションが載ってます。
どっちもそこそこむずいけどよく考えられてもいるので、手数をかけないThink Cardとしてはかなり優れてる方だと思います。

あと”Flash Hold”っていうマッチの中に名刺が入るネタが良かったです。
不可能ですよーみたいな状況設定自体が仕掛けという手品っぽさ満開でとても楽しい。

PAUL HARRIS REVEALS SOME OF HIS MOST INTIMATE SECRETS (1976)

“The Bizarre Twist”がここで解説されてます。
まあ面白い手品ですね。
なんの力も感じさせずここまでビジュアルにカードがひっくり返るのもやばいし、超ミニマムに色違いオチができるのは本当いいです。

“La La’s Lu Lu”というパケット間のカードの移動もめちゃくちゃ良くて、ちょっと一箇所弱いとこあるけど他は超綺麗。
変な演出も面白くてこの本の中でも結構気に入りました。

“The Dehydrated Deck”は折りたたまれたカードケースを展開して組み立てると中からちゃんとカードが出てくるという、なんか最近話題のピョンっと組み立てられるあれ的なあれです。
最近あれの話になる度に「ポールハリスが1976年にこういうのをやってて〜」とイキれるのでそれだけでも読んでよかったです。
いやでも普通に組み立てるのは普通に組み立てるのでまた別の味わい出て良いですけどね。
演技条件的にもほとんど同じだし。

SUPER MAGIC (1977)

エキストラを使わない3/4復活の”The Ultimate Rip-Off”は、1/4の破片を自分で持っとかなきゃいけないのはアレですが軽くて良い手順。
Reformation以降の追加アイデアも載ってます。

“Double Monte”は最後にあたりだと思われてたカードが外れの2枚で、外れの2枚だと思われてた方があたりの1枚になるトランスポジションオチのモンテ。
今だと逆にもうちょいゴテっとさせちゃいそうというか実際にそういうのもあるけど、やはりモンテである以上はこれぐらいフェアな感じだと良いですね。

靴の中から石が出る”Earth Shoes”というギャグネタや、1枚のカードをプロダクションする”Open Revelation”、どちらも出てきそうにない出方をするという意味で共通してて、ビジュアルなプロダクションの一工夫の大事さがよくわかります。あんまり意味不明すぎてもこういう感じは出ないというか、不思議なりの説得力のようなものがあると気持ちいいです。

“Machine-Gun Aces”もプロダクションで、銃の形にして連射できます。まあマシンガンというには程遠いし、どっちかというとリボルバー的なアクションも必要なのですが、片手でポコポコ撃てます。

さて”RE-SET”がここで解説されてます。
技法の好みとか色々ありますし、原案の手順はいかにもな動きも多いのですが、改案から入ってる人も多いと思うんで一旦オリジナルの動きをやってみるのはおすすめです。
チャドロングとアールネルソンのアイデアも収録されていて、だいたいリセットはここでカバーできる感じになってます。

カードが分裂する”Las Vegas Split”もやっぱり楽しいし、”Flap Jacks”のお手軽版的な”Ace Trap”も気持ちいい。(Flap Jacksは2巻に出てきます。パタパタなるやつです)

“Vacuum Cleaner Cards”も綺麗な4Aのパケット間移動でとても実用的だし演出も良い。
やっぱりSUPER MAGICはやばいすね。

LAS VEGAS CLOSE-UP(1978)

このあたりからちょっと凝ったようなものが増える気がします。

ホッチキスで止めた2枚のジョーカーとサインカードが入れ替わる”Stapled”はかなりシンプルに解決していて見事です。
裏面同士を止めることを最大限に活かしてて効率的。ブラックジャック的な演出もおもろいし、このやり方だと演者のサインカードと観客のサインカードがくっつくというような見せ方もできそう。

“OverExposure”はデックをフィルムカメラに見立てたネタで、筋としてよくできてます。
ポールハリスはなんかが変化してフォー・オブ・ア・カインドが揃うというネタ多くて、大まかなプロットや手法が似てても全然違うように見えるからすごいですね。

別にそこまでやらんでもええやろと思えるような工作で完璧な錯覚を作る”Absorption”も、ハンドリング的にはおかしくなりすぎてなくて徹底ぶりが効果をあげてます。

個人的に結構理想的だと思ってるカードアクロスの”Las Vegas Leaper”。増える方のパケットは観客に数えてもらってからずっと持っててもらえるのがとても良いですね。

“New Twisted Collectors”はツイスティング現象からのコレクター。
カード3枚覚えてもらってツイスト現象して挟まるってちょっとなにそれって感じであんまり好きではないんですけど、これの最後のディスプレイはやらしくて結構好き。
しゅこしゅこしたりするより勢い大事にしてる感のほうがなんか全体的には綺麗に見える気がします。

カードの下から4枚コインが出てくる”Silver Slide”、これ系どんどんハードコアになってきてて辛かったりするんですが、比較的安全なやり方だと思います。途中無理しすぎず現象のインパクトも落としてないバランスが良いです。

“Invisible Rising Card”はライジングカードではなくインビジブルデック的な見せ方のリバース現象。
見て覚えてもらって、ひっくり返ってて、それがそのカード。
面白いけどこれはちょっと色々難しそう。

“Interlaced Vanish”はここで出てきます。
あらためて手動かしてみるとほんとすごいっすねこれ。
ここまで順番に読んでくるとポールハリスらしさみたいなのも感じられて味わい増し。

カード以外だと”Paper Chase”というナプキンちぎってやるマトリックスがストーリー的に綺麗なのでよかったのと、”Perpetual-Motion Coin Myth”というコインとコインでコインを挟んで間のコインを回転させるフラリッシュが面白かったです。

MISC PEICE OF PAUL 1985)

“Air”という風船を使ったおもしろネタから始まって、”Classic Eleven Card Trick”という大作があって、バランス芸的な”Cheap Juggler”と3作品、ちょっと変わった作品が揃ってます。
“Cheap Juggler”は3枚のペニーを手の中で立てていって、ギャグ的に終わるネタ。ちょっとおもしろく見せる方法がよくわからん感じ。
“Air”は一回どっかでやってみたい。

ASTONISLING FRIENDS / GREGORY WILSON

ここからハリス以外の作品です。
普通に良いんですが、ポールハリスの作品と比べるとセンスオブワンダーみはかなり落ちる感じですね。
手法も現象も普通。
いや普通でも全く問題ないのですが、やはりかなり物足りなさを感じます。

“Griffin under Glass”はガラスのテーブルをカードが貫通する現象。
これっぽいのをちょっと前にパトリッククンがインスタにあげててかなり不思議でした。
ここで解説されてるものは安定はするけど貫通感で言うとやや落ちるでしょうか。

Gregory Wilsonはさすがにおもろい手順が揃っていて、リダイヤル機能がついた電話と電話帳を用意してね!という”411″はたぶんやることないけど良かったです。
“Shell-Shock”はゆで卵にちっこい穴開けて息吹くと卵がポーンて出るっていう、なんか伊東家の食卓かなんかで見た気がするのの手品版。ちゃんと手品です。

サムチップを使わない砂糖の消失”Vanish 5000″とかもセリフ回しと演出パワーで成り立たせてる感じがおもしろいです。
この調子でやられたら絶対引っかかる。あとやっぱ日用品のこう動いたらこうなるっていう刷り込みは強いですね。

メインは代表作”ReCap”。
ペンとキャップが消えたり出たり。
これDVDのOn the Spotに収録されてるバージョンも軽くて良いんですけど、流れ的には無印の方が綺麗かなと思います。

いやー面白かった。
普通にポールハリスすげえとは思ってましたが、どの作品でも新しいことやったろっていう気合が本当にすごくてリスペクト度めっちゃ上がりましたね。今見ても斬新感って狙ってできるわけじゃないですし、類似のアイデアすらそんなに見ないあたり本当に天才なんだと思います。
マジオンの商品ページで、英語の本で最初に読むならこれ的なおすすめのされ方をしていてこれは完全に同意です。
英語の本に求めるものって、日本語になってない、映像にもなってない、知らないことがいっぱい書いてる、文が短い、挿絵いっぱい、わざわざ苦労して読むなりの面白さ、あたりだと思いますがこの本は全部満たしています。
今だったらこれかPrincipiaかどっちかって感じでしょうか。

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