by jun | 2018/07/17

ルイスオテロさんのDVDは前にカルティフィシオスをレビューしましたが、こちらのインライトゥンド・カード・マジックの方が先に出ていて評判も良さげなので見てみました。

Otero Opener

選ばれたカードを当てようとしますが別のカードが出てしまい、それを真ん中に差し込んで振ると裏向きになって、さらに振ると選ばれたカードに変わります。

ビジュアルでわかりやすく、カバーする面積が狭いカラーチェンジとしては難易度もそこそこなのでオープナーには適していると思います。
一旦裏向きになってから変わるって見せ方もミステリアスで素敵。
単に2回同じことするだけでも、物理的な不可能性が少し別の軸にシフトすると不思議な感じです。
一方でオープナーにサッカートリックってどうなんっていうのは少し気になりますし、トリックが終わったあとにデックの中にゴミが残るのもどうでしょうという気はします。

Transposition By Estimation

2人の観客にカードを選んでもらって、1人目のカードはデックに戻し、2人目のカードは手で押さえていてもらいます。
好きな数字を言ってもらってその枚数を正確に取り、更にそこから手で押さえていたはずの2人目のカードが出てきて、1人目のカードは手の中に。

エスティメーションとトランスポジションは一見すると食い合わせ悪そうですが、エスティメーションのガチっぽさからちゃんと手品に着地する綺麗な流れだと思います。
手で押さえてもらうというのは「どうせこのカードが何かに変わるんでしょ」と予想されそうなもので、それをエスティメーションのガチっぽさで誤魔化す構成も巧み。

Card To Bill Change

適当に選ばれたカードがお札に変わって、カードはポケットから出てきます。
他であんまり見たことないチェンジで、一瞬なのですけど確実に物質が変わった感がある見せ方。

先に示すのはカードだけなので厳密なトランスポジションではありませんが、ポケットの中に入ってるお札と入れ替わったという話は特に違和感ありませんし、カードは強いオフビートでポケットから出せるので引っかかりも少ないかと思います。
チェンジ後カードはクラシックな位置に来ますので、ポケットじゃなく怪しい財布から出すのもいいかもしれません。

Super Jazz Aces

ジャズエーセスの最後にリバースというかトランスポジション現象がくっついています。
スーパーかどうかはよくわからんのですけど、さすが見せ方はうまいです。

ジャズエーセスって未だにピンとこないプロットの一つで、連続で同じ作業が続くので結末と中盤に落差がなく単調に見える気がしてます。

そんなわけでこの作品は最後にトランスポジションするわけで、それならジャズエーセスじゃなくてええやんという気もしますが、入れ替わりはビジュアルじゃなく1枚ずつ移動するという演出をしていてジャズです。
手法的にも無難ですし、足し算的な改案としては良い感じではないでしょうか。
しかしそれでもジャズエーセスをやりたいかというとかなり微妙。
パズル的なオートマティックさは好きなんですがエンターテイメントとしてはなんとも…

Rapidigitation

ピークで見せたカードのプロダクション。
テーブルにスプレッドしてウエーブでうねうねしてる途中にパッと取り出します。

マットが必要なのであれですが、知らないとマニアもひっかけることはできるような感じです。
トップやボトムを改めて見せてるのでかなりマニア相手向きに作ってる感じあります。
ガチ芸寄りなのでTransposition By Estimationと組み合わせて使っても面白そうです。

Record Aces

4枚のAをバラバラにデックに戻し、シャッフルします。それをカットしながらピョコピョコ取り出していき、残りのデックを見るとオーダーになっています。

ルイスオテロさんの代表作。
この手のリベレーションはA〜Kまで取り出していくものも多いですが、それやると「混ぜたように見せて混ぜてなかった」と思われがちですし演技力がないと間延びしてしまいますので、Aをバラバラに混ぜるとこから始める構成は演じやすいです。
バラバラに混ぜていく過程で観客の選択もありますし、Aを取り出す困難さに焦点が行くのでオチのインパクトも強く感じます。
最初にAを抜き出す過程でさりげなくバラバラのデックを見せれるあたりも高ポイント。

Vanishing Collectors

コレクターです。
Aを1枚ずつ消していって真ん中で3枚のカードを捕まえる方式。
数あるコレクターのバリエーションの中でも変わった方法で、色んな技法と原理の集積でできあがったルイスオテロさんらしい作品だと思います。

ポイントはAは1枚ずつ確実に消していけることで、4枚スプレッドしてから持ち方変えて1枚ずつ示しつつあれするあれがないところ。
消す前はそれぞれのAが独立してるので後々考えても挟まった状態のものを動かしただけ感はないです。

若干最初にAを置くところにノイズは残ってますが、その後にそれぞれ示せるのでギリ帳消しって感じでしょうか。
カード3枚覚えさせる手順としては長すぎってあたりも欠点ではありますが、バニッシュパートで興味は持続させますし、消えた後はクリーンにスプレッドできます。

Customized Coincidence

観客に表裏混ざるようにデックをシャッフルしてもらい、次々とメイトカードを取り出していく手順。

徐々にエスカレートしていく手順で、メイトカードという一般のお客さんにはちょっとピンと来ない一致現象が後半にはわかるようになりますし、最初にシャッフルしてもらえるのでとても不思議です。

んなわけで、なかなかマニアックな作品集でした。
個人的ベストはVanishing CollectorsとRecord Aces。

この人の作品はファローシャッフルを使うものが多いですが、それやるタイミングがよく考えられています。
少なくともマニア目線で見るとどうしても原理感が漂うファローシャッフルなのですけど、直接現象起こすために使うのとはちょっとタイミングずらした場所で行います。
例えばコレクターならA4枚を重ねてセレクトカード3枚を固めてコントロールしてそこで噛ませれば一発ですが、ファローシャッフルしてからAを1枚ずつ見せるところが憎いです。
Record AcesにしてもあくまでAを取り出すのを難しくするためのシャッフルで、その前にランダム性をしっかり示すので、規則正しく混ぜるファローの意味は悟られにくいかと思います。

最近色々とファローシャッフルのことを調べているのですが、原理的な面白さは間違いないので、構成上どこでそれをやるか、いかにそれをなんでもない行為に見せるかというのを考えればまだまだ発展の余地はあるんかなという気がしてます。
次作のカルティフィシオスの方がそこらへんうまくやってるのですけども、手順と解説見れば意図がはっきりわかるタイプの作品が多いので、考え方は色んなところに応用できるのではないでしょうか。

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