by jun | 2022/02/07


1992年に出たリチャードカウフマンによる日本人マジシャンフィーチャー本。
カウフマンのジャパン本でいうと1988年のNew Magic Of Japanと2013年のJapan Ingeniousの間の本です。
この本では厚川昌男さん、前田知洋さん、黒木健一さん、藤原邦恭さん、ヒロサカイさんの5名の手品がそれぞれ5つずつ解説されています。
まあそりゃええやろという本で、実際にとても良いです。
面白い仕掛けを使うものが多く、ギミックの面白さ以上にプレゼンテーションが上手くハマったものばかり。
魅力的な現象があって、それを実現するための仕掛けがあり、それを自然にするための合理的な演出も用意されてるという、ちょっとこれ以上手品に求めるものはないというレベルの一冊です。

Masao Atsukawa

Four by Four

MA系の技法を駆使したコインズアクロス。
全くうまく出来ないんであれですけど、この技法でこういうことが出来るというのが詰まっていて、たしかに他の方法だとこういう見せ方は出来ないというのはよくわかります。
この技法以外でも、最後の一枚の解決とか良い感じのがあって良かったです。

Four From Nowhere

1枚のコインの移動を繰り返し、最後にコインが4枚出現します。
これは基礎的な技法のみで行えるもので、オチに備えた移動の見せ方などよく考えられた手順です。
出現部分もプロダクションというよりあれよあれよと4枚になる感じでおもろい。

Propelled Chinese/Silver

3フェイズのコイントランスポジション。
これもMA系のあれで、泡坂妻夫マジックの世界に載ってるトランスポジションを組み合わせたようなルーティンになってます。
最後のフェイズのノーエキストラがえぐい。

Fabric Through Pasteboard

カードをシルクが貫通するやつ。
今スマホとかでやるやつもあるけどその原型みたいなもので、仕掛けとしてはこっちの方が使い勝手よさそうな感じあります。

The Knotted Letter

太いリボンでやる結び目が消える手品。
リボンならではの手法で、かなり説得力ある結び方です。
現象の見せ方としてももんだり引っ張ったりではなく、パタパタと広げる感じでおもろい。

Tomo Maeda

Ambitious Clip

クリップを使うアンビシャスカード。
ビジュアルなものとマジカルなものの二段構成で、一つのアイテムでこういう幅をもたせられる手順いいっすね。
クリップの取り回しの良さが活きた手順でもあって、とても実用的。

New Era Moving Pips

ムービングピップスの面白い角度からのアプローチ。
一旦作ってしまえばレギュラーカードでかなり手軽にできます。

Match Transposition

焦げたマッチと素のマッチのトランスポジション。
まずこの現象めちゃ良いですね。マッチが入れ替わったことを区別できるのって焦げてるかどうかしかないですし、開いて火つけてまでの動作で色々サトられてる非常によく出来た手順。

BoxBack

デックがカードケースに戻るやつ。
簡易的なやつもあるけど、これは割とじっくり見せられます。
この現象って見た時にさっき箱から出したよねとかさっきのケースはどこいったとか色んな感情が湧いてくるので、ケースに戻るときのビジュアルとかじっくり見せられるとかは結構大事です。

Pieces of the Future

風船のやつです。
この本に解説されている作品だけでも素材の活かし方の上手さはよくわかるけど、これは際立って良いですね。
それがそんなことになってるとは、という状況を現象の中で自然に作れてて本当に綺麗。

Ken Kuroki

Stanley Collins Meets Corinda

クラシカルな輪ゴムの手品をルーティンにしたもの。
オチが観客の指に輪ゴムが移動したように見せるやつですが、これを効果的にするための要素がいくつもあってとてもよくハマってると思います。

The Mystery of Width

カードワープみたいに細長く折ったお札を見せますが、両方の端の太さが変わって見えるという面白手品です。
折り紙に見えないちゃんとしたハンドリングがあります。
日本のお札だと最後折り目がちょっと目立つけど、まあじっくりあらためたりしなければ問題ないかと。

Cocktail Bill Penetration

ビルスルー。
紙と重ねて貫通させるタイプで、めちゃシンプルなんですけどかなりリアルに見える方法。
本当なんでこれでそう見えるのかよくわからない感じの絶妙なバランスです。

The Talisman

カードケースにホッチキスでとめたジョーカーが、セレクトカードと入れ替わります。
ホッチキスでとめたカードはある程度やり方も限られるし、デックとの接近も避けられませんがこういうやり方があったかと目から鱗ぼろん。

Illusion Box

紙マッチの真ん中に2本だけマッチがあって、これが両端に移動します。
その現象をイリュージョンとして見せるというのも面白いし、ハンドリングもごく自然。

Kuniyasu Fujiwara

The Appearing Deck

アピアリングデックです。
財布の中から折られてないカードケースを出し、それを組み立てると中からデックが出てきます。
ちょっと前に流行ったのとかポール・ハリスのとか色々あるけど、テーブルいらんしセッティングもラフに出来るし角度的にも使い勝手はかなり良い方ではないかと。

The Card Machine

伸びるクイーン的なやつです。
伸びるクイーンとはちょっと違う部分があって、この一工夫が伸びた感を強調してます。
要はただカードを引っ張りだしただけには見えず、伸びないとそういうことにはならないという見せ方。

The Joker Takes A Ride

ジョーカーの絵柄が消えて、その絵柄の部分がカードを当てます。
ジョーカーがカードを当てるという時に、くり抜かれた部分が当てることでただのカードではなく人格が立ち上がってくる感じがおもろい。
消える時にカバーするんではなくリフルしてピャッと消えるビジュアルが素敵。
読んだだけだと安定しないかなと思ったけど、ちゃんと作れば普通にできる感じでした。

Soft Spots

トランプにはソフトスポットがあって、それを示すカードを乗せて鉛筆でツボを突くとデックを貫通し、引き抜くと観客のカードだけ鉛筆に刺さってます。
現象もハンドリングもとにかく最高。

Lie Detector

折り畳める透明のプラスチックに線が書いてあって、折りたたむと文字が出てきてそれをLie Detectorの演出に使い、最終的にカードが当たります。
ただ折りたたむとカードが表示される、だけだと別になんでもええやんって感じですが、この演出だと観客にも色んな想像の余地があって面白いですね。
最後の変化のところとかも気持ちいいし、不思議なアイテムを使う予言ならではの良さがあります。

Hiroyuki Sakai

My Little Kaps

銀貨と銅貨の入れ替わりの後、2枚ともチャイニーズコインに変化します。
「ヒロ・サカイ マジック・コレクション」にも収録されていて、動画でご本人の演技も見れます。
たぶんこれ系の現象の中では楽にできるもので、全体的な流れも自然です。
空の手を示すタイミングの良さとかもあってちゃんとオチのインパクトに繋がってます。

Imprisoned Rising Card

デックケースに入れて行うライジングカード。
デックはレギュラーで箱もケースとしての機能が失われないので常用できます。
ハンドリングもクリーンで安定性も高いです。

It Doesn’t Fit!

現象としてはデックとケースのサイズが合わなくなり、サインカードのサイズが変わるというもの。
手法もクレバーだし、サイズが合わないことを表現する現象がめちゃくちゃ良いです。

The Perfect Assistant

2枚のカードにサインしてもらい、それをジョーカーで当てようとしますが失敗します。
ジョーカーを破ると、その2枚の破片がサインカードになってるというありえへん系手品です。
Perfect Assistantという演出も素晴らしいですね。
コミカルなプレゼンテーションで意外なオチがつく手品好きです。

The Flowing Pips

Qの間に白い3枚のカードをはさみ、再び広げると観客のカードと同じ数字のカード3枚に変化し、Qが全部Aに変わります。
仕組みも面白いけど、この連続する変化現象にちゃんと理屈があるのが素敵。

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