by jun | 2021/06/19

今年Vernet Magicから出たIñaki Zabalettaの作品集。
超面白かったです。かなりテンション上がってます。
No Way Bottle Production、R & B Phenomena、Psychoなど有名なやつも入ってるので知らなかったらここだけでも十分ですし、Fool Us出演時のトリックとFismアクト、古典プロットの鮮やかなバリエーション、有用なオリジナル技法、変なギミックの面白い使い方、ラフに演じられるサロンとシチュエーション的にも現象のバラエティとしても隙がない感じで割と誰が読んでも楽しめるんじゃないかと思います。

Chapter I: Intimate Miracles

軽く演じられるクラシックのスマートな改案という感じの手順が色々解説されてます。
後の手順と比べると手法の斬新さは大人しめですけど、古き良き感もありつつ今風のリズムになっていて好みのバランスの手順が多かったです。

Joker Transformation

セレクトカード2枚のジェネラルカード。
コントロールから連続のチェンジまでとても綺麗な流れで行ける手順です。
複数回変わるチェンジの手順だとビジュアルと非ビジュアルの組み合わせ方色々ありますけど、この手順は後半に意外性とクリーンさを残す感じでかなり好みの感じでした。
最後ジョーカーに戻るオチまで無理がないので落ち着いて行える手品になってます。

Turned Cards

2枚のセレクトカードが順番に表向きになる手順。
これはちょっと難しいけど、バラバラの位置から選ばれてコントロール感がなく全部裏向きを見せた状態から現象に行ける感じで、見えないカード演出のリバース現象としてはかなり理想的な気がします。

Through the Deck

コインボックスを使ったコインカット。
コインが貫通するというビジュアルを見せてからのコインカットの流れで現象に説得力あって良い感じです。
箱貫通のとこのハンドリングも綺麗。

Ordered Transposition

A〜Kまで並んだデックとジョーカーを使って、観客が選んだカードとジョーカーの位置が入れ替わるという手品。
新品のデック使ってやるカード手品としてもちょうど良さそう。
補足で書かれてるthought card版が更に好み。

Spelling

スペリングでセレクトカードを出して、途中ぇ出来たパケットのトップからフォーオブアカインドが出る手順。
即興とノーフォースでできるもので、適切な位置にカードを配置する方法は応用が効く便利な方法。
スペリングもこういう手軽に複数のミラクルが起こる感じだと味が出て良いですね。

Back in Time

観客が言った枚数目のカードを取って破って、時間が戻ってカードも元の位置に復活した状態で戻るという手順。
道具を使った演出もそうですし、綺麗に消えて戻るので時間が戻る手品にちゃんと見えます。
シャッフルされたデックからスタート出来る手順になってて、カードの消耗の仕方的にも管理しやすいプロユースなルーティンだと思います。
観客が数字を言ってからデックを触ってないといけないのはちょっと好みが分かれるとこかもしれないですけど、同じカードが入ってなかったことを説明せずとも後から思い出してもらえる形なのでこの手品には良い手法ではないかと。

Follow the Leader

10枚10枚のフォローザリーダー。
しつこいぐらいに赤10枚黒10枚ということを繰り返し見せるのですが、見せる目的がそれぞれ違うので良い感じに頭にこべりつくような流れだと思います。まあ1個ぐらい飛ばしても良いかもしれません。
10枚使うけどやらなきゃいけないことはそんなになくて、全体がフォローザリーダーした感を出すちょうど良い塩梅です。
別のチャプターでAlternate Finale for Follow the Leaderとして、残り数枚をシャッフルして観客が選んだカードがフォローザリーダーするというクライマックスが解説されてて、このオチを含めるとかなり良いバリエーションに跳ねます。

Chapter II: Two for Parlor

パーラーカードマジック 2種。

haveStand-up Assembly

サロンで行うエースアセンブリ。
スタンドアップならではの手法が使われていて、これは大変面白かったです。
確かに手に置いたAがーーってところが強く、ここだけでも良いけど現象の見せ方の詰めもめっちゃしっかりしてます。

Zen Cards Across

10枚のうちフリーthought card3枚が移動するカードアクロス。
ちょっと勇敢なことをしないといけないので習得は難しそうですけど、2つのパケットを離したイメージを残したまま良いタイミングでちょっとずつ仕事していく構成はよく出来てると思います。この時点ではこれだけやればOKみたいな考え方は参考になりますね。
フリーで覚えてもらうタイプの解決としてもスマートだし、技法の使い方も適切で1枚ずつ移動していくという見せ方もおもろいです。

Chapter III: Unpublished Techniques

技法2つ。

Ricardo Martin’s total False Shuffle

フォースシャッフルです。
テーブルで行うリフルからカットの流れ。

Spread Switch

この本のメインとなる複数枚のスイッチ技法。デックから独立した状態で行えるマルチプルスイッチで、変わる前も変わった後も分厚さを隠す感じがなく、仕組みとしても従来のものとは違うので色んなことが出来そうでワクワクするテクニックです。
これを使ったトリックは次の章で。

Chapter IV: Tricks Using the Spread Switch

Spread Switchを使った手品の章。

Discarding aces

Spectator finds Acesのバリエーション。
変わってるのは4枚選ぶのではなく4枚になるまで観客がカードを減らしていくというところで、この見せ方がとても面白いです。
技法を使う関係で選ばせ方にもちょっと制約があるところ、ちゃんと楽しい手品になってるのがおもろい。
傑作だと思います。

The Different Ones

上のやつの表向き版で裏の色が違うカードを選んでしまうというバリエーション。

Prediction

1枚のカードの予言トリック。
この技法と特に相性の良いものですが、他の仕掛けは他に応用できます。

Tribute to LePaul

ルポールのQuadruplicate Mysteryのバリエーション。
元で使われてる技法を置き換えやすいということはありますが、Spread Switchを使うにあたっての手順の流れも自然なものになってます。
この技法、A4枚とかでなく観客が選んだ4枚をまた選ぶという現象にしてもそんなに怖さがない気がしますね。

The Spectator Cuts to the Aces

まあそれもできるよねという感じ。

The Problem of Card 13

Problem of Card 13にとても向いた技法ではあるけどCarrollのSuit Appearance的な総チェンジのオチもついたりする面白バリエーションです。
結構準備段階が難しい技法ではあるのですが、流れの中でうまいことやっていて現象的にサトルティもうまいこといくとこがあったり超素晴らしい手順です。

Chapter V: One Principle, a Thousand Possibilities

カードのとある仕掛けの変な使い方。

52 B’wave

B’wave要素のあるブレインウェーブ現象。
カードの向きをあれしたりあれしたりしなくていいので最初に裏を見せれます。
また、カード構成のおかげで普通のデックに見えやすくなるポイントがあったり、極端に端なのを避けれるのも丸。

Impostors

2枚のジョーカーがセレクトカード2枚に変わります。
サロン用の見せ方で、ジョーカー2枚は抜き出すとこからずっと軽く扱える仕掛けになっていて、そこからするーーっと変化させれる仕掛け。
ビジュアルじゃないけど無駄な動きがない分良い余韻が残ると思います。

Red & Black Phenomena

OOTW。
ステージ上から観客のコールによって赤黒2つのグラスに分けていくのですが、パケットの接近やカードを足したり引いたりすることなく綺麗に分かれます。
この仕掛けの良さが存分に出た手順ですね。
矛盾が出そうなところの処理もお見事。

Chapter VI: Firm Favourites

それぞれ単売もされてる必殺級の手品。

The “No way” Bottle Production

ジャケット不要のボトルプロダクション。
ジャケットを着てたからといって不思議さが損なわれることはないけど、着てないことによる効果は大きいですし、演じられるシチュエーションが増えるのも嬉しいですね。
傑作でしょう。

Ethereal Deck

ハンカチの中でデックが消えて観客のカード1枚だけが残ります。
服装制限もなくテーブルも不要なデックバニッシュ。
デックにハンカチをかけて直前まで観客に持っていてもらえます。
最近流行ったこれっぽいやつのあれを触ってて、ちょっと浮世で見せるのは怖いなーと思ってたんですがこのルーティンならそういうストレスは全くないですね。

Psycho – Card Stabbing

ナイフで刺すカードスタブ。
マルチプルセレクションかつ目隠し状態で観客にテーブル上でぐちゃぐちゃに混ぜてもらえるようになっていて、ここのアイデアがとてもよく他の手品でも使えます。

Silkeny 2.0

消えたり観客の指定した色に変わったりドバドバ出てきたりというシルク手品。
これもジャケット不要で準備しやすいようになってるのが良いですね。

Chapter VII: A Great Finale

Fism 2003のカードマジック部門で2位になったというポーカールーティン。
オチがエニーコールポーカーハンドになっていて、セットからだいたい何をすればいいかわかりやすいし自由度も高い。
ここだけでも十分良いトリックですが、観客に選択をさせるデモンストレーションの連続からのオチというのが綺麗だし不思議だし素晴らしいですね。

とにもかくにも面白い一冊でした。
技法もギミックも実践的な素敵手順が紹介されてるし結構遊べると思います。
クラシカルな現象をテンポ良く面白く見せる感じが好みにハマったこともありますが割と万人におすすめ。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です