マジックマーケット2020で発売された、でいしゅうさんによるジャズマジックの解説本。
電子書籍で動画リンクもついており、今後も動画が追加されていくようです。
この本で言うジャズマジックは一応現象は決まっており、シャッフルされたデックや借りたデックで臨機応変に対応しながら現象を達成するものをそう呼んでいます。
特定の枚数目にあるカードを気分で出し方変えるのもジャズ的と言われることがありますが、この本で扱われてるのは観客の選択やランダムな状況に応じて演じ方を変えていくものです。
現象はどれも魅力的で、シャッフルされたデックでそれをできるわけがないというところに観客の操作も入ってくるので、サクラやただの偶然とは思われない手順(便宜上)になってます。
このバランスは結構重要で、説明できないトリック的なことをやろうとした時にちゃんとマジックとしての不思議さを提示できるかというのは難しく、そこはかなり意識的に作られてるように思いました。
でいしゅうさんはコンテストで入賞もされており、そこで演じた手順も解説されていて、全体的にコンテストでかけられるぐらい「安定」して演じられてマジックとして不思議に見えるような作品になっています。
そんなこんなでジャズマジックの魅力、なぜそれが不思議に見えるのかということもとてもわかりやすい本で、これは手順が決まった手品の演じ方を考える上でも大いに参考になる話です。
手順の中にはセットが必要なマジックを即興でやるというものもあるので、何か既存のマジックをシャッフルされた状態で演じるにはどうすればいいかと考えるヒントも多くあります。
解説も現象が決まってる分、この手のマジックの資料としてはかなり具体的で、有用な技法も多く紹介されています。
引き出しの増やし方とそれをいつ開けるかという部分が大事なわけですが、解説されてる技法は現象を起こすために多くのシチュエーションをカバーできるもので、何が肝なのかもわかりやすいので観客がこうした時はだいたいこういうことをするという感じも掴めるようになってます。
観客を前に演じられた動画もついてるので、リズムや態度、観客との接し方などめちゃくちゃ勉強になりました。
最後に説明のできないトリックやジャズマジックについての考察が書かれていて、どのようにして状況に応じたマジックをできる体力を作るかというところがかなり整理されており、これを説明出来ているというだけで全体の説得力も上がるような文章になってます。
当然経験がものをいうジャンルであり、難易度も高いですが、過剰に怖がってるだけかなという気もしてくるモチベーションが上がる一冊でした。何より楽しさが伝わってくるのが良かったですね。
読んだら絶対にもっと早く知っておけばよかったと思う内容なので、今後手に入れられる機会があれば逃さないようにしましょう。
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