1996年にリリースされたJames Swainの作品集でカードマジックがいっぱい解説されています。
プレゼンテーション重視でインパクトも強いトリックを中心に、演じてみたいトリックがいくつか載っていて普通に面白かったです。
クライマックスにかなり重点を置いていて、意外な展開や更にと言った見せ方がお好きなよう。単に現象が付け加わるだけでなくセリフも作り込まれているので演じやすそうです。
一方で、無茶しやがって…と思う改案もそれなりにあり、オチが蛇足に感じられる作品もありました。
手法としてはだいたいのトリックでマニアックな技法や原理が使われていたりするので、クライマックスの見せ方や演出などと合わせて美味しいとこ取りをするのが正しい読み方な気がします。
The Airmail Card
サインカードでトライアンフをやったあとに、ポケットから裏に面白いことが書いてるカードを取り出してきて、その表に観客のサインがあるという現象。
こういう現象をやる時にどうやってカードを選ばせるかという問題の解決とトライアンフのナニが上手いことはまっており良い感じです。
裏に何書くかって事と演出が面白く、良い感じにサプライズしてる見せ方も素敵でした。
Clue
ジョンハーマンのSealed-Room Mysteryの改案。
現象は殺人者のカードを当てて被害者のカードが移動するもので、元の面白いところはそのままです。
犯人を当てるパートがトライアンフ的なあれになっていて、確かに演出と合っていてなるほどという感じ。細かいセリフもなかなか良かったです。
Out of this World
赤黒の後、スートも別れるOOTW。
仕組みは面白いけど、2つに分けてもらった後に重ねてひとつにして広げるという動作にアレルギーがあるのでなんとも。その中にそれなりに負担がある技法もあって、ちょっと厳しい感じです。この現象でなければ何かに使えそうな気もしますが。
Superbowl Aces
オーヘンリータイプのアセンブリで、スーパーボウルにまつわる演出がついています。
これが別に上手い例えにもなっておらず、普通にエースアセンブリを見たり普通にアメフトの試合を見た方が面白いんじゃないでしょうか。
スイッチ周辺の技法は良いものでしたが。
Card in the Matchbox
カードが4つ折でマッチの箱に入ります。
元ネタがTony Giorgioという人のトリックで、これがちょっとコロンブスの卵的で面白いんですが、技法のタイミングを変えて穏当になった感じのトリック。
カードの選ばせ方に制限がありサインもしてもらえませんが、先にマッチで満たされたマッチ箱を見せられるし、デックからカードが消えた事も明らかにできるので、現象の示し方としては十分でしょうか。
Card in the Card Box
カードインボックス。
箱からデックを出してもらって、そこから演者は一切デックに触れずに、というのが売りです。
カードの決め方があれなやつで、これだと確かにこっちにあったものが移動した感がないので微妙かなと。確かに観客が箱からデック を出すので十分ではありますが、これだったらセリフにもう一工夫欲しい感じでした。
Boxed B’Wave
B’Waveに移動現象をくっつけたもの。
移動と裏の色変化、手順も悪くないと思いますが、equivoqueを知らない人のために簡単に説明しましょうと言ってされる説明があんまりこだわりを感じられないものでなんか残念でした。
The World’s Greatest Card Trick
帰ってくる方のホーミングカード。
カウントのポジションで見せるので、先に観客が変な事が起こってるのに気付く見せ方が出来ません。
クリーンでちょっと意外性のあるエンディング含めクロースアップ用と割り切れば悪くないですが、ホーミングカードならではの面白さは弱くなってる気がします。
Perfect Triumph
アンビシャスカードをサイン入りのジョーカーでやって、ジョーカーはポケットにしまってトライアンフをやります。ニューオーダーオチのトライアンフで、観客がトライアンフパートで選んだカードの位置にジョーカーがあり、ポケットから選ばれたカードが出てきます。
色々盛りのパワフル手順。ハンドリングも無理がない感じです。
パワフルな現象に慣れた後のオチがトランスポジションというのはちょっと気になるところではあるけど、サインカードで押せる感じなんだと思います。
Gambler’s Miracle
4枚のJがAに変わって、J別々のポケットから出てきます。
即興で出来るのでフォーオブアカインドは指定可能。
ギャンラーのストーリーもよく出来ていて、即興でやるための道具立てともマッチしていて綺麗な手順です。
The Blank Deck
ヌーディストデックを使ったブランク手順。
フォースが必要になってるけど、普通のデックとしてスタートでき、あらための時も現象の時もカードを広げて見せられる強みは大きいです。
Australian Aces Revisited
オーストラリアンエーセスであれする時にとある方法を採用しています。
あれに慣れてる人は良いけど、最初はこういうやり方するとめっちゃやりやすく感じる系の。
The Impossible Card Trick
観客4人にそれぞれ1〜13までで好きな数字を言ってもらい、その枚数をそれぞれ配るとトップにAが出て、ボトムにK、Aをどけたトップに観客が選んだ数字のカードが出ます。
こういう手順を見た時、まずは普通に4枚のAだけ出す手順を作って…と思いますが、この手順実質4枚のA出すだけなのと負担が同じなのでそこはまあ許せました。
おまけを付けられるからといって何でも付ければいいかどうかは微妙ですが。
Real Mindreading
とある原理の有効活用法なんですが、肝心の方法は解説されてないのでイマイチよくわからず。
釣りの方法も、うーん。
The Spectator Cuts to the Aces
2つ方法が解説されています。
おおまかな手順は良いと思いますが、リフルなんとかが必要。自由な選択でAが出たという観客の体験は損なわれないかもしんないですけど、そこだけ目に見えて手法が変わるって結構都合が見え隠れすると思うのですよね。
Boxed Reset
パケットに観客が触れる問題と、エンディングの処理を解決したリセット。
解決というより別のプロットにしてしまった感じで、Kだと思われてる4枚が全部2になるオチが付きます。
オイルアンドクイーン的な。
Brainweave
エルムズレイのブレインウェーブにPlay it Straight的な展開が付きます。
残務処理を上手いこと2段目にしてる感じですが、ブレインウェーブ感はややぼやけそうな気も。
ファンを閉じた時に1枚ひっくり返ったように見える技法は知らんかったので良かった。
Fortune Telling Cards
3枚のカードがヒントになって1枚のカードがわかる的なやつで、最後に3枚が当たりの1枚になります。
ちゃんと3枚が1枚になる前振りもあり、ビジュアルに終えるハンドリングもなかなか好みでした。
Hitchcock Aces
ダーウィンオーティスのHitchcock Acesの改案。
Hitchcock Acesは移動ではなく入れ替わりを強調したアセンブリで、オーヘンリーに繋がるのも鮮やかなトリックですが、この改案では最後リーダーポジションにAの代わりにKが4枚出て別の場所にAが集まってるという見せ方になってます。
もちろん手間も増えてます。
ポーカー風の演出で実はこっちが勝ちですみたいな見せ方は面白そうですが、移動見せるならオーヘンリーが十分意外な展開だし別に不要な付け足しかなーと。
Miracle Aces
デックの上からAが消えて、全部下に移動してきます。
消えるところはパスが見えないようにする一工夫で、これは手順の流れにも合ってるし使い勝手良さそうです。
ボトムから出てくるところはとあるビジュアルなカラーチェンジで、この技法の使い方としては早い方で現象としても説得力ある見せ方。
Bluff Control Routine
Aをバラバラに戻し、Kをテーブルに置きますがこれが入れ替わります。
Kはバラバラの位置ではなく真ん中で揃って表向き。
確かにブラフコントロールはこういう使い方が出来るなーという事を知れたので良かったです。
Topping the Mental Topper
選ばれたカードのフォーオブアカインドを出す手順です。
タイトルにメンタルとあるようにコールカードでも演じられるし、メンタルっぽい遊びができる場面もあって楽しめます。
フォーオブアカインドはバラバラの位置から出てきたように見えるもので、元ネタはマルローらしいです。結構気に入りました。
My Opener
Aプロダクション、トライアンフ、ニューデックオーダーという手順。
オープナーて、この後一体何するつもりなんやという感じが好き。
A出すとこもトライアンフもニューオーダーを感じさせない手順になっていて、クライマックスも意外性ある感じに見せてて普通に良い手順だと思います。
Gorilla in the Middle
人が何をモンキーインザミドルと思うかは自由というか思想というか色んな考え方があっていいと思うのですが、個人的にはビドルグリップで持ったらあかんでって思ってます。
手渡せるとか両面示せるとか載せた後に何もしないとか色々こだわってもやっぱりビドルグリップで持った瞬間に普通のサンドイッチに見えてしまうのが世の常で、本作もまあ挟まるのがいつなのかというタイミングをずらしていて技法も悪くはありませんがモンキーインザミドル感はないですね。
まあデックの上で広げてないのでそもそもそんなにこだわりはなさそうですが…
Trapped
キックバックがある2枚のカード当てをするサンドイッチカード。
これ系でよく使われる技法じゃない方の技法が使われています。
The Well Traveled Card
観客のサインカードが消えて、観客の指定した枚数目に。デックはケースは収まった状態で、CAANとしてもなかなか良いですし、Traveled Cardという演出はとても気に入りました。
これは数字を聞いた後にデックをちょっと触んないといけないですが、サインカードやるなら数字はあらかじめ決めておいても良いですし、スタックを使った応用は色々考えられるかなと。
The Stand In
ニューオーダーのデックで観客の指定したカードとケースの外にあるジョーカーの位置が入れ替わります。
上のやつと同じ原理で行うトランスポジションです。
負担増えそうなもんですがなかなか綺麗にまとまっているのではないかと。
Anastasia
ラリージェニングスのトリックの改案。
5枚のうちから1枚覚えてもらって、それがポケットの中から出てきます。
カードは自由にシャッフルしてもらえますがThink a Cardとしては見せられないのが残念。
The Lost Multiple Shift
4枚のAをバラバラに戻しますがポケットから出てきます。
この技法をできるようになったらこういう事が出来るよの例としては良い感じであります。
Honest Aces
観客が手品の矛盾に気付いてないと思ってるお気楽なマジシャンが多く、エースアセンブリの欠陥も考慮せずに大量の改案が発表されており…という問題意識の元に作られたアセンブリの改案です。
ここで指摘される問題点は観客がどのパケットに移動させられるか選べないこと。正直アセンブリで一番気になるのそこ???って思いますし、そこの解決は別に大したことはありませんが、面白い技法を使っていてそこは良かったです。
ちなみに観客が移動先を選ぶの上手いことやってるのはアーロンフィッシャーのやつだと思います。
Honest Collectors
上のやつと同じ技法を使ったコレクター。
まあやることはスイッチなので似たような見た目のコレクターもなくはないです。
Annemann’s Miracle
システムを使ったカード当てなんですが、自由な選択を与える見せ方が面白いです。
ちょっと質問とかが必要になってくるわけですけど、システム使う時ってこれぐらいのバランスの方が良いんじゃないかと思うこともあり勉強になりました。
Something for Nothing
ポーカーデモンストレーションで、現象説明には観客がめっちゃシャッフルするみたいなことが書いてるんですが、実際にやるのはカットだけ。
いやまあ新品のデックからバラバラに混ぜるの見せるからそう思わなくもないと言えないこともないですけど。
Rules of the Game
これは観客がガチでシャッフルして、全てのポーカーの役をプロダクションしていきます。
これは観客がシャッフルした後にどうにかする手法として良くできていて、セリフとかも楽しい感じになっておりました。
プロダクションも色々解説されてるしとても面白かったです。
Finale for the Capitulating Queens
Capitulating QueensはQの裏の色がそれぞれ別の色に変わっていくパケットトリックで、それにカードトゥウォレットのエンディングを付けた手順。
ありえんぐらい変わるし捻りが山場になっていてエンドグリーンというめっちゃ良くできたパケットトリックですね。
カードトゥウォレットに繋げるのもただくっつけてるだけじゃなく、プレゼンテーション含め面白いアイデアが見られて大変良かったです。
Final Departure
Between Your Palmsのバリエーション。元になってるのはアールネルソンの手順で、最後はサインカードから箱から出てきます。
これは相当むずいけど、実現可能な範囲でパームなしで箱から出せるかなり良い方法なんではないかと。怪しまれるタイミングでは空なのを示せるので慣れたらそんなに負担も大きくないかもしんないです。
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