by jun | 2020/11/16

2007年に出たDavid Solomonのカードマジック本。
バノンやアロンソンと比べるといわゆる改案という感じのものが多く、あーよくそんなこと思いつきましたねーってよりは元ネタの良さはそのままに現象やサトルティを足していく方向という印象でした。
その中に現象が新しくて面白いものや、クラシックの革新的なバリエーションがたまにあります。
良くも悪くもマニアックで、ちょっとマニアを関心させることが目的化しすぎてるきらいもあり、特殊なセット/両面テープ/ギャフ/デュプリケートあたりの解決が多いのは好みが分かれるあたりかと思います。好みが分かれるっていうかお好きでない人が大半だと思いますけど、おかげで手順は軽くてタイトになってるし、カバーも概ね上手くいってるんで割と手を出してみたいのが多かったです。

In The Beginning

低負担でできる感じの手品が載ってる第一章。
現象が良いのはここに固まってます。

Just Friends

観客に4つのパケットに分けてもらって、4枚のKを1枚ずつそれぞれのパケットの中にカット。Kがいきなり出てきてパケットのボトムを見ると全部Qになってる。
手順としてはただKをカットするんじゃなくやや意味のよくわからない儀式が必要ですが、その儀式が直で現象になるのでそんなに気にならないかもしれないです。
カット技法は有用。

Pure Vice-Versa

2人の観客のカードを当てますが、どっちがどっちのカードかを間違えてしまい、おまじないで正しい場所にトランスポジションします。
ちょこちょこバリエーションがありますけど良い手品ですよねこれは。
間違ってることがはっきりしてるからトランスポジションの位置関係の説明としてわかりやすいし、ここで使われる技法はとても好き。

Jokers Are Wild

選ばれたカードの表にサインをしてもらって、ジョーカーの裏にもサインをしてもらう。差し込んだジョーカーが観客のカードの隣に来る予定が、ない。ジョーカーの表を見るとサインカードでした。
セレクトカードもジョーカーの裏も観客にサインしてもらえるのでアニバーサリーワルツ的な演出も可。フォースもいらんのでとても良いです。
手法的はしゃらくさ感がありますけど、とてもクリーンに行えハンドリングに気を使う部分もないのでこれやるなら取り入れた方が良さそう。

Houdini Card

観客のポケットの中でカードケースの貫通現象を起こす手品です。
このあたりの単純な仕掛けでインパクトどんする感じは結構はまりました。
演出もそれっぽくてそれっぽいです。

Very Dicey

サイコロ使ったエニーナンバー現象。
ダイレクト目な方法なのですが、うまいこと連続で偶然が起こったように見せつつ、数える前にデックに触ってないように見せることができます。
セットちょっとめんどいけど大ネタっぽくも見せれるので割とあり。

Revised Mexican Poker

10カードポーカーディール。
セットや演じ方は若干違うけどバノン本に載ってる”The Power of Poker”と同じで、近年における10カードポーカーディールのエポックな作品です。
全部観客に選んでもらうことができ、エキボックもエキストラもディールテクも不要。
ちょっと微妙な形になることもありますが、綺麗に勝てます。
最後明らかに観客に有利なように選ばせるところがフェアさも強調してるし現象のインパクトも強めててとても良いですね。
バノン本では小説風パートで解説されていてあっちの方が詳しいですが、ソロモン本にはTomas Blomberg版の解説が載ってます。

Classic Plots

クラシックプロットの改案集。
やや現象が複雑になってしまってる感もありますが、インパクトのあるオチを狙っているので上手く演じれば楽しそう。

Gold From Straw Elevator

4枚のジャックと4枚のAを使ったエレベーターカードで、Aがロイヤルフラッシュになるオチがつきます。
オチの現象は良いとして、エレベーター部分が前フリっぽすぎてやや退屈で、あんまり綺麗などんでん返しには見えんような。

Real Gone Hour

クロックトリックの消えオチバージョン+カードケースへの移動。
アロンソンもやってましたがクロックトリックで消えるのおもろいですよね。枚数が減ったことが明らかだから移動現象の説得力もあります。
仕掛けを扱うにあたってのウェバーのハンドリングが解説されててこれが良かった。

Whispering Queens

2枚のQがカードの位置と名前を教えてくれます。
位置→名前の順で当てるもので、どっちかというと逆が良いってのはあるんですけど、手品やなーって感じの原理で楽しいです。

Purely A, 2, 3, 4 Thru The Kings

4枚のKとA〜4までのカードを使ったエレベーターカード。
エレベーターするカードが増えていって盛り上がるのですが、少数枚かつ最初からずっと辛めの技法が要求されるのでちょっと難しい気がします。ここはオートマティックにクリーンにできます的なところが欲しかったです。最後だけやたら気持ちいいんですが…

Marlo’s Secret Kato

表裏に混ぜたパケットを使ってのカードの移動現象。Katoは加藤英夫さんのこと。
表裏に混ぜて選ばせる導入が謎といえば謎ですが、ここにあなたのカードがあります、こっちに移動しました、というのをわかりやすく説得力を持って示せる方法です。

Right Side Up

Do us I Do的なカードの当て合いっこをリバース現象で示します。
この手の現象で2つに分けたパケットを一つにまとめる問題とかありますけど、リバースで2枚同時に返るなら別にいいかなと思います。
手法は手堅い感じで全然良いです。

The 21 Card Trick

21カードトリックをちょっと早く当てれるやつ。
シャッフル感も強く、これ系の中ではセットも原理もシンプルな方だと思います。
2段目に消え落ちのやつがあって、これはまあダイレクトな方法。

Three Selection Discovery

選ばれたカードがスペリングで出たり表向きで出てきたりポケットから出てきたりします。
マルローの表向きプロダクションが良かった。
連なりがあんまりないので、もうちょいワンアヘッド感が欲しかったです。

Play Poker With Me, Please

フルデック使って3フェイズで10カードポーカーディールみたいなことをやります。
観客が自由に選択する部分が多いから、ポーカーデモに慣れてなくても演じやすいです。
また、異なる手法を組み合わせて別のカードでやって、最後に綺麗にストレートフラッシュが出たりするのでかなり不思議に見えます。
とても良い手順だと思いました。

Card In The Card Case

変わった見せ方のカードケーストラベル。
ゲーム的な演出で進むので意外性強そう。
レギュラーデックほぼ即興な感じでできるので、息抜き的に演じたい感じ。

Hofzinser King City

バノンのDiscrepancy City Predictionのバリエーション。
ホフジンサー風の入れ替わりがあります。
まあ、技法を足せばそういうことができるよねという感じですが、エンドクリーンになるのは良いことです。

Which Switch?

手法的にはなんということもないトランスポジション+カードの変化現象ですが、見せ方がとても良いです。
この手品のためにカードを選んでもらうんじゃなく、さっきまで使ってたカードとかサインカードに変化させるとかするとオチや手法
を想像させにくくできます。

The King Thing Revisited

4枚のKを一枚ずつ出していって、また元に戻して次は1枚ずつ色んなところから出てきます。
元ネタはリチャードサンダース。
プロダクションは自由にできるもので、不可能な場所から取り出すこともできます。
良いと思う部分はほとんど原案の部分だけど、おしゃれで良いトリックではないでしょうか。
最後に出していくとこはもうちょい綺麗にできそうなもんですが。

Cut Deeper Sans Deeper

ノーセットの状態から、カットディーパー的なことをやって観客のカードを知る方法。
コントロールも済むようになってて後はいかようにもできるという感じです。
これだけだとあれですが、こういうテクニックは複数枚カード当てに有用なので覚えておきましょう。

Ace Assembly

アセンブリを集めたチャプター。

SolMar Ace Assembly Updated

スローモーションからのリバースアセンブリー。
バックファイア式ではなく、ちょっとこう遊びつつ戻る感じでパームいらんし文脈もあるので結構気に入りました。

Marlo vs. The Observation Test

4枚のA、K、Q、Jを使ったアセンブリー的な、フォロー・ザ・リーダー的な何か。
Aアセンブリをやると思わせつつ、それぞれのランクごとに集まるという現象なので、何かに続けて演じると良い感じに意外な雰囲気が出て良さそう。

O’Henry’s Jazz Aces

ジャズエーセスのオーヘンリーオチ。
見た目的には普通にオーヘンリーな感じですが、ジャズエーセスの1枚置いて消えてうんたらみたいな流れがオーヘンリーで必要な作業と相性良いような気もしました。

Another Succession Of Aces

プログレッシブ系のアセンブリ。
どんどん隣に移動していくやつ。
これはどうしてもパケットの接近が必要で、テーマ的にもそんなにそそられないので一応そうなりますけど感でした。

Mayce Assembly

変わったハンドリングのアセンブリ。
ちょっと矛盾はあるんですけど、バラバラにおいたように見えてちょっとずつ裏で集まっていく感じは気持ちいいです。
見せ方としても観客が選んだパケットのところに集まるようになっていておもろい。

Don May’s Genius

Don May氏のトリックを集めたチャプター。

May’s Assembly

あー、そういう誤魔化し方もありますねというアセンブリ。
4枚のAの上にアディションするのに技法を使わずに済む方法です。

May’s Take on Vernon’s Trick

観客がカードを1枚選び、演者は残りのデックを見てそのカードと同じ数字の3枚をさっさと取り出して当てることができます。
もちろんカードの選ばせ方が重要なわけですが、シャッフルしたデックで観客に自由な選択もさせることができるので、なにその選ばせ方っていうのはあっても当たる不思議さはあるものです。

May’s No Strip Out Multiple Shift

ストリップアウトせずにマルチプルシフトする方法。
一時これ系のやつダウンロードコンテンツ界隈で流行りましたよね。
最近だとGagnon本でも見た。
正直差し込むところを綺麗に見せれないならストリップアウトしたいですって気もしますが、5種類解説されていて他のやつはブラフシフトの応用でなかなか良かったです。
特に5種類目のやつはちょっとブラフするタイミングが違っててフェアな印象。

Stinger Monte

観客が4つのパケットに分け、その1箇所のトップカードを見せて位置を動かしモンテ的なことをしますが、他のトップカードを見るとフォーオブアカインドになってる現象。
意外性が大事な現象ですが、これは後から考えたらそういうことをやったのかなと思われる手法でもあり難しい。

Nine or Ten Hands

9人目のプレイヤーに4枚の9を配ったり、その後に4Aとかロイヤルフラッシュが出ます。
人数が多いだけで基本原理はポーカーデモのそれなんですが、9を抜き出してまたバラバラに戻すところが良い感じでした。

The Kings’ Escape

2枚選んでもらい、4枚のキングを取り出してデックを3つに分ける。
端の2箇所にKを配りますが、全部真ん中に移動してきて、端のトップカードを見ると2枚のセレクトカード。
実際は観客にやってもらえるところがあったりするので文字面より盛り上がりそうです。

Casino Clock

クロックトリックの別演出。
どれほど不思議さがアップしたように見えるかは不明ですが、予言の仕方は良い意味で回りくどくて好き。

Think, Spell & Stun

MRD式のThink a Card当て。
セットがほとんど全てを解決していますが、シャッフルすることができてなかなか不思議かと思います。

Does Anyone Faro Shuffle?

2枚のカードをカットしてプロダクションします。
ファローシャッフルを使うことでカードを戻す時も取り出す時も一切ブレイクを取らなくて良い手順です。

Solomon Meets Gardner/Marlo

ちょっとテクニックも使う普通目のポーカーデモンストレーション。
後半に向けてフェアになっていくから、テクの部分は見せでも行ける感じの手順。ち

What’s Your Number?

2人の観客にカードを選んでもらって何枚目に戻したのかも覚えてもらうのですが、その位置が入れ替わります。
あんまりないトランスポジションのアプローチで面白かったです。
アロンソンだったらメモライズドデックで枚数目は聞かずにやりそう。

Building Math Principles

アロンソンとの共作。
アンチファローやダウンアンダーなど、やや作業感は強いですが不思議なカード当て。

Smith Without The Myth

2人にカットした枚数をこっそり数えてもらって、その枚数目のカードを覚えてもらいますが当てることができます。
2人の観客の枚数を知る方法がクール。
なんだかんだシークレットナンバーを作るメンタルセレクションは覚えてもらってからの手続きは少ないから綺麗に見えますね。

Just a Little Something Extra

ギャフカードとかデュプリケートとかその他もろもろを使う章。全然リトルじゃないのもあります。か

Diamond Bar – Gaffed

ダローのDiamond Bar(アセンブリ)のギャフバージョン。
まあ、確かに説得力増してるとこはあるんですけども、逆に重たくなってるところも増えてるんで全体の印象は若干落ちる気がします。

Blank Jazz Aces

ブランクオチのジャズエーセス。
デックもブランクになります!みたいなことが書いててマジで興味湧かんと思ってたんですが、やってみると結構楽しみが。

Solomon’s Gypsy Curse

ソロモン流のジプシーカース。バノンのアイデアも多く入っていて、最初のあらためと演出、終盤の処理が違います。
セットは市販のものと同じので出来る。

Outdoing “Hummer Outdone”

Hummerの原理を使ったカード当て。
表裏に混ざったパケットをテーブルの下で元に戻し、観客が覚えたカードだけ裏向きにすることができます。
マニア受けしそうなトリックです。あれ、そんなことできたっけってなります。

Blank Thought

サンドイッチした透明のカードが観客が言ったカードに変わります。
現象も魅力的だしカードの扱いも軽いし、Think a Card感も結構良いです。
良作。

Doubly Open

カード2枚でやるオープンプリディクション。
2枚でやるならではの手法と、完全防備によってかなり良い感じの見た目です。
よっぽどオープンプリディクションやりたい人向けではありますけど、よっぽどやりたい場合は良いと思います。

Everywhere And Nowhere

かなりハードコアなどこにもあってどこにもないカードファンでないとこんな手品は作らんだろうというマニアックな一作。
3枚テーブルに出す、全部セレクトカード、アウトジョグして見せるとどこにもない、という見せ方です。
デュプリケート使用ですが、あんまり下品な見せ方はしてなくて、どこどこ感は守られてる感じがします。

Double Joker Sandwich

クラブサンドイッチのギャフカード版。
デックとパケットを接近させずに軽いタッチで扱いながら入れ替えることができるのでクリーン。
まあ、サンドイッチ周辺技法はレギュラーでもそれに近いことは出来るのでどこまでを許容できるかの好みの問題でしょうか。

For The Card Expert

最終章。
章題から連想されるような難しさはないです。

Million Dollar Oil & Water II

4-4ノーエキストラの水油。
1段目はちょっと変わったやり方だけど普通、2段目は表向きに混ぜてからのカーニーのあれ的なあれ。
なんぼでも複雑なことやりそうな人なので穏当な手順でよかった。
からは

S-V-S Shuffle Stack

シャッフルのデモンストレーション。
トップに置いた4枚のKが数回シャッフルしても一番上にあって、またシャッフルすると4枚のAになって、最後はロイヤルフラッシュが出ます。
普通にスタックシャッフルとしても効果的なもので、変化していくのも楽しい手順。

Kissing Cousins Twice Removed

ポールカリーのKissing Cardsのバリエーション。
ちょっとサトルティが足されてる感じで、2段になってます。
これはまあ現象の良さだし、めっちゃ良くなってるってこともないですかね。あとこれは2回やるようなもんじゃないと思います。

Christian’s Prediction

3枚のカードを予言として置いておき、3人に1枚ずつカードを選んでもらいますが、予言の3枚を見ると当たってるという手品。
ミステリーカードの枠に入るんでしょうか。
レギュラーデックで行えるもので、複数枚であることと観客が選ぶカードに秘密があります。
これ系の手法を使う作品は、読んだ時に感じる試みの面白さに対して演じる気がなかなか起きないことが多く、これもまあそういう感じでした。
というか色々気を使わないといけないはずなのに解説が足りてない気がします。に

Clearly Up the Ladder

Aの上には1枚、2の上には2枚、3の上には3枚、4の上には4枚のカードを載せるよ!当然A〜4はバラバラになってるね?でも重ねて上の4枚を見るとほら!という手品です。
これにロイヤルフラッシュが出るオチがついたりするんですが、何の何なのかがよくわからない手順。
パケットのスイッチ技法の面白さはあります。

Army Card Trick

一枚だけ表向きのカードがあって、そこからその数字の枚数目を数えると観客のカードが出てくる。2段目は観客の選んだカードの数字の分だけ数えると出てくる。
現象と関係なく色違いのカードを使う必要があったり、なんかめんどくさいとこもあるんですけど、2フェイズになってるところはなかなか巧妙。2段目はフォースもないしブレイクも取らないから結構不思議に見えると思います。

んなわけで、イマイチよーわからんのもありましたがなんだかんだ良い作品が多かったです。作品としてはそこそこでもギャフやパケットの扱いなんかで参考になる部分も多かったし、ポーカー系のネタがThe ギャンブリングという感じじゃなくて面白く読めました。
バノンやアロンソンの方向で期待するとちょっと肩透かしかもしんないですけど普通に良い本です。傑作級のやつは知ってるのが多かったから初見だったらもうちょい感動したはず。

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