by jun | 2022/04/03

2005年に出たCushing Stroutの本。
表題作のOn the Other Side of the Mirrorは不思議の国のアリスを題材にしたトリックで、他にもシャーロックホームズネタがあったりスペリングやダウンアンダーにもセリフで一工夫されてたり、ナラティブな感じの作品がまとまっています。

まずOn the Other Side of the Mirrorから。これはアリスのカードが消えて鏡の中に入ってしまうトリックで現象はとても魅力的です。
このカードがアリスで、このカードがマッドハッターで…とスペリングで出していくとこは恣意的であんまり好みではないけど、現象とテーマは上手くマッチしています。不思議のアリスで一番不思議な鏡に入るところをクライマックスにするのもスマートなのではないでしょうか。
紹介されているギミックは面白そうだけどもう手に入らないっぽいので残念。

ホームズの方は”Six Napoleons”というカード当てがなかなか。徐々にカードを減らしていくのはホームズの話に合ってるし、段取り的にもちょうど良いテンポの良さ。ダウンアンダーをちょっと変わった見せ方してて、これもストーリー手品的に悪くない見せ方だと思いました。ダウンアンダーの動き自体を無理にストーリーに絡めるわけではなくカードで語る感じは良いです。

あとはNine Problemのスペリングのアイデアとか、表向きでやってもラダーセットに気付かれないようにする方法とかがありますが、大半が日本語置き換え不可のスペリング絡むので即戦力を求める人には全くおすすめできません。
スペリングの使い方としてはケースバイケースで観客の自由を増やしていたり、上手いこと意外性に使っていたりしていて勉強にはなります。

ストーリー手品については物語を語る手段として手品は適さないからあんま好きじゃないですけど、手品でしか表現できない形にはなってるので全然ありだと思います。
まあでもそれに如何程の価値があるのかというのは難しいところですね。
アリスとかティムバートンが映画にしてもみんなが喜ぶものにはならなかったわけで、お馴染みの話をあらためて語るというのは難易度高いと思います。
手品は目の前で起こる不思議が引きになるから、というならなおさら絵説きするようなストーリーは要らんのではと思いますし、手品の面白さとはなんなのかというようなことを考えさせられる一冊でした。

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