by jun | 2018/12/07

97年に出たサイモンラベルの本でL&Lに電子版があります。今なら7ドルぐらいで買える模様。
カードマジック主体でスライト推しから変なギミックを使ったものまで幅広く解説された大作になっていて、ベロにペンが貫通するやつもここで解説されています。

Part One—The Thoughts of Chairman Lovell

最初はいくつかのエッセイから。
クローズアップマジックとは何か、演技の組み方やルーティンについてなどプロ向けの内容で読み応えあります。
手順読んでからの方が納得度上がると思うので後回しでもいいかもしれませんが、先にどういう意図や狙いがあるのか知っておくと手順の良さも見えるので軽くでも目を通しておきましょう。
“Entertainment and Sleight of Hand”はよく話題になる同じ現象起こす場合の手法についての話で、彼なりの創作論についても触れられています。
ある程度長くやってる人なら自分なりの答えがあるテーマですが、一般論への見解的な書きぶりなのでどっちサイドから読んでも元気が出る文章だと思います。
この手の話は場合によるってことが多いので、色んな人の意見に触れておくと老害化防げて良いですね。

Part Two—Openers, Middlers and Closers

最初に解説されてるトリック”Fingered Number Three”はサカートリック風のリバースとキックバック現象。
使われてる技法は基本的なものですがタイミングや観客とのやりとりなどねっとり解説されています。
手品見て知ってるネタでもおーーってなることは多いと思いますが、やはりこういう細部の詰めというのは大事なものですね。

そこから続けて演じると効果的な”Fingered Number Four”はカードトゥウォレット。
手が小さい人を勇気付ける文章が書かれています。

“Another Departed Point”はPoint of Departureからは大きく離れて3枚のカードの移動現象になっています。
手法的にはヘルダーギマレスのあれ的な考え方で、カードがペンの中から出てきたりして楽しい手順。
ペンの中から出てくる後にそのインパクトよりは劣るオチがあるのですが、サインカードを使うこととそこへの持っていき方がうまいです。

ミスディレクションを使って演者のメガネの下にカードを移動させる”Optician’s Delight”はセリフもカードの動きもかっちり固まっててこの手のマジックの参考になります。

“The Gambler’s Move”はAKのトランスポジションでイカサマ的な演出で見せるもの。
手順的にはあんま好きな感じじゃないんですが、この手の入れ替わりの演出としてはこれぐらいがちょうどいいかなと思ってるんで、その話に合ったハンドリングだとは思います。

3段階のサンドイッチカード”Hold The Mayo”は直前まで挟まってない改めがどのフェイズでも効いててとても良いです。
特に3段目のサーチャー風のとこはクリーンでそこへの持っていき方も綺麗。
ギャフ使用の”Give Me The Mayo”も賢いですが、ギャフ見せないようにする方が負担に感じる気がします。

リバースルーティンの”Challenge Reverse!”は8枚ぐらいのカードを選んでもらうちょっと面倒な手順ですが、サトルティ効果は高まっています。
ギャグと勢いでワイルドな動きするのも好みではないですけどここは今だと良い技法あるので置き換え可能。
仕事を終えてから別の現象を付け足すラベルイズムはこのオチではちょっと不発に見えました。

カードが口の中に入る”Sleight Of Mouth”は、出てきた後口だけを使ってカードを広げる方法をがっつり解説していて図がヤバイことになってます。

Part Three—Sitting Specials and Other Bits

ラッピングやデックスイッチを使うパート。

“Outfold”は4つ折りカードの変化現象。
折ってるカードの表裏が変わってカードも変わってしまうという流れで、物理的な変化からありえない変化という流れが楽しいです。
サインカードでやるバージョンも解説されてますが、裏の色違いとかでやっても面白そう。

デックバニッシュルーティンの”Sitting Deck Vanish”は前段階がジョーカーが観客のカードに変わる手順で、Curry Changeが紹介されててお得感。
ギミックは少し変わったものが使われていて安定してラップできますがやや煩わしさはあります。

特にラッピングとか使わないのはオイルアンドウォーターの”Oily Snobs”は4-4の3段階。
堅いハンドリングで観客参加型、オチもはっきりしていて理想的なルーティンです。

マニアックなカード当て”Impossible Location!” “Double Trouble”あたりはマジシャン向けですが、セリフもしっかりしてるのでマジシャンも一般の人もいる場でみんなをあっと言わせたい時にこういうの覚えておくといいんでしょうね。

Part Four—Gaffed and Faked

ギミックを豪勢に使ったパート。

ブルースリーに影響を受けたという”Hyperpoke”は指でデックを貫通させてストップしたところから観客のカードが出てくるもの。
映画から影響を受けました手品はある程度警戒する必要があると思っていますがブルースリーは大丈夫です。
いやでも普通にこれされたらビックリすると思います。

赤と青のデックを使うDo as I Doの”Predicted Bermuda”はかなりフェアに見える現象で、ポケットに入れた3枚のカードが一致します。
いかにレギュラーデックに見せるかという部分もよく考えられていて、フォーシング使うならここまでやらんとなという感じ。
それを1デックとメイトカードでやる”Blind Date Bermuda”は全く別手法でこれも面白いです。

ブランク落ちの”Kicked!”もギャグを織り交ぜつつレギュラーデックであるように見せるラベルらしさが出てます。
インパクトあるオチのプロットこそ中盤の盛り上げ大事なんで、ここまでねっとりやるかはキャラにもよりますがセリフ例は参考になるのではないでしょうか。

“Heartless”はアンビシャス現象からビジュアルなフォーオブアカインドのプロダクションを見せ、他のカードは全部真ん中がくり抜かれてしまうオムニデック的な手順。デックスイッチ不要でこのオチにふさわしいストーリーもついてます。
同様のデックを使ってデックバニッシュ風に見せる”Heartlebox”も捨てがたいです。

このパートのベストは最後に解説されている”Flashburn 2!”という、サインカードがデックの真ん中で焼け焦げる手順。
フラッシュペーパーとコインを使った面白い見せ方で、あまり使われてない方法だと思います。

Part Five—Sleight Of Hand Goodies

スライトオブハンド。
変なコントロールとかプロダクションとか。
現象的にはクラシックの改案メインです。

“Simon Takes On Le Paul”は観客が選んだ4枚のカードをデックに戻して、また観客に4枚選んでもらうと一致する現象。
ラベルはサインカードでやるのが好きみたいですが、単に4枚選んでもらって全部エースでしたみたいな見せ方もできますね。
ルーティンでは観客にシャッフルさせるまで組まれていて、それができたらそりゃそっちの方が良いです。

アンビシャスカードのサイモン版”Sambitious Card”でもダンデブさんも使ってる技法が解説されてます。
おまけでそれを使ったカラーチェンジも。
ルーティン的にはアンビシャスカードの流れ的にどうなんという感じもしますが、個々の技法はおもろいですね。

カードアットエニーナンバー風の”Frank’s Fave”は自然な流れでカードをコントロールし、観客の言った枚数目に移動させる方法はシークレットでないながらも枚数を数えてるようには見えないものです。

現象的におもろいのは選んだカードと思ったカードが2つのパケットから同時に出てくる”Double Coincidence”。
まあそれしかないやろという手法ですが、そこまで技法のクウォリティが高くなくても実現できるルーティンで気に入ってます。
スライトの代わりにトリックデックを使う2手順も解説されていて、メンタル寄りの見せ方もできるし簡単だし良いです。
メモライズドでもいけそうすね。

“Mini All Backs”はパケットで見せることで説得力を強めるオールバック。
レギュラー縛りだと無理に手をこねこねする感じになるのでクレバーです。
最初からこれ変なデックなんですよーというパターンだと特に説得力いるのでベストな解決だと思います。

Part Six—Gags, Stunts, and Other Bits!

ベロにペンが突き刺さったりベロが飛んだりペンが不気味に動いたりグラスの下から犬のフンが出てきたり取り扱い注意なものも多いです。
犬のフン出すのにそれなりにマジックっぽく始めるあたり悪質なんですが、ペンが動くやつは普通に良かったりします。

意外とちゃんとした手順として見せられそうなのは”The Nightmare Deck”という観客にもはっきり見える文字で書かれたマークドデックのやつ。
小道具使いにギャグ要素があってちゃんと不思議というのはもっと煮詰めれば面白くなりそうです。

タバコの箱が新品になる”Anticadge”とかコインがやぶれる”Countear”とかは普通に手品。
小ネタでもインパクト狙いなのはさすがです。

カード折ったり破ったりするもんも多いですが、ここぞという時のレパートリーを探してる人には良い本だと思います。
クリスマスも近いですしそれまでに犬のフンの出し方を覚えておきたい人は必読。

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