by jun | 2018/07/04

2007年にリリースされた最強の双子のDVDで、現在のビジュアルマジックに多大な影響を与えた作品集です。
3巻組の1巻目には強烈なビジュアルマジックが14種類解説されています。

14種類もあるのに演技パートだけ再生しても7分30秒しかなく、全部1分以内に終わります。
YouTubeがサービス開始したのが2005年で、いわゆる動画マジック的なブームとぴったりタイミングが合ったこともヒットの要因でしょうか。
短いマジックだから良いということはないと思いますが、無駄な動きは全部スライトで削ってるので誰が見ても参考になる部分は多いかと思いますし、その上でクイックビジュアルや動画マジックの是非とか全部ねじ伏せる破壊力があります。
10年前の作品でも全く古く見えず、短い演技の中に新しい解決法がてんこ盛りで、見た目も裏も全部が斬新。
まだ見てない人が羨ましいです。
ガーンとかパーンとかシュパっとかの擬音だらけになることが容易に想像できますが、各作品紹介していきます。

TiVo Transpo

ドリブルして真ん中のカードを一枚覚えて真ん中に突き出した状態にしておいて、トップカードを表にします。
そのままドリブルするとトップカードが真ん中のカードに変わり、突き出していたカードがトップカードに変わります。

テーブルを使わないトランスポジション。
全編目の錯覚を利用したトリックですが、ぱっと見全く違和感ありません。
コントロールもカラーチェンジもすげえんですが、どちらも横からの角度に弱く、上から見下ろしてもらうような角度だと最強。
このコントロールはダミーを真ん中に突き出した状態にしておけるのでマスターするとかなり強いやつです。

TiVo 2.0

TiVo Transpoのバリエーション。
カラーチェンジはよりビジュアルに、真ん中のカードを取った感はより強くなっています。
どちらも「真ん中のカードは真ん中に、上のカードは上に」という状態で入れ替わりますが、こっちのバリエーションは本当にそのままの位置を保ったまま変わってしまうので入れ替わった感が半端ではありません。

突き出したカードはまっすぐにできるようになったし、角度も実用的なものになり、正統派2.0だと思います。

素敵すぎる手品なので、後に色んな人がバリエーションを発表していますが、さすがにこれ超えるのは結構厳しい感じありますね。
個人的にはクリスメイヒューのCards exchangeを使ったあれが結構好き。
真ん中の方をビジュアルに変えるというのはあんまり例がなく、もうちょい発展するかなと思います。

Subway

上の方からカードを1枚覚えてもらい突き出しておき、下の方でカードを2枚表向きにして突き出しておいて、上と下でパケットを分けて、それぞれ押し込むと上の1枚が下の2枚に挟まれます。
移動した瞬間がにゅるんと見えるのが最高で、1段目からビジュアルなサンドイッチができるやつの中でも最強の部類。

ポイントはコンビンシングコントロールのバリエーションを使ってるところで、最近それの2.0とかが出てまた流行りましたが、ここでも解説されてます。
コンビンシングコントロールをよりコンビンシングに見せる方法で、特にこの手順には不可欠。
コンビンシングコントロールじゃなかなかあのにゅるんとした感じが出ません。

最初に2枚ひっくり返すとこは適当なカードでやると結構な情報量になっちゃうので、ジョーカー2枚を差し込んでおくのでもいい気がします。

Card Across

真ん中でカード1枚を覚えてもらい、デックを二つに分け、覚えてもらったカードを片方に入れますが、反対側のパケットから表向きで飛び出してきます。

ここで使われるスイッチは自然かどうかは置いといてめちゃくちゃ有用なやつです。
プロダクションはアーロンフィッシャーのあれですが、やっぱり表向きで出てくるのは良いですね。
他の場所な移動するんじゃなく、あくまでトランプの中を移動するというコンセプトが好き。

Hand to Mouth

Card Acrossで使われてるのと同じスイッチを使ったカードトゥマウス。
口にあるのにめっちゃ喋ってるのがポイント。

Deja Vu

まず真ん中でカードを表向きにして、シュパってやるとそのカードを赤いAがサンドイッチした状態になります。
その3枚をテーブルに置いて、また真ん中で別のカードを表向きにして、シュパってやるとテーブルに置いたはずの3枚に変わります。
テーブルに置いてあるカードを見ると、2枚目のカードが黒いエースにサンドイッチされた状態のものがあります。

キックバックというかなんというかみたいな現象で、デジャブというタイトルめちゃくちゃ上手いですね。
中々現象をプレゼンするのがむずい手品ですが、先にプロダクション的な現象を見せ、ほぼ同じ構図でカラーチェンジが行われ、それがトランスポジションにもなってるというのが巧みです。
複数枚のスイッチがめちゃんこ上手くて必見。
この現象で表向きのセットが要らないのも高ポイント。

Twinsplit Remix

クラブの3が2と1に分裂し、また合体します。
そうとしか言いようがなく、実際にそういうことが起こります。
分裂というより3から1が取れて2になったみたいな見え方で、合体パートはそれを無理矢理くっつけるみたいな。

分裂パートはかなり角度に厳しいですが、角度1点集中型のマジックとしては最強の部類で、動画手品にしておくのもったいない感じあります。

Fission for Aces

8が2枚の4になって4が2枚の2になって2が2枚の1になります。
なるんだからしょうがないです。

Hofzzy Osbourne

まさかのホフジンザープロブレム。
エースプロダクションから鬼クールで、選ばせる方法はピーク、ちょっと変則的な流れからカラーチェンジしてホフジンザーの流れ。

流れ的には4枚のエース出てくる、カードを見て覚えてもらう(ハートの7)、ハートのAだけ裏返る、デック広げると1枚裏返ってる、見るとクラブの7、クラブの7がカラーチェンジしてハートのエースに、ハートのエースだと思われてたのがハートの7に、みたいな感じ。
ちょっとまどろっこしいように見えるかもしれませんが、セリフだと「ハート?」「7?」「ハートの?」「こっちがハートの7」てテンポ良く行きます。

このテンポの良さがポイントで、フォースやセットをマイナス面に捉える人もいるみたいですけど、エース置いてデック持って、またエース見て、みたいなもっさり感があるよりは良いです。
エースプロダクションから入るのもスイッチ感を減らしていますし、スイッチの手法もとても有用なもの。

クラブの7からハートのAのカラーチェンジを入れることで、ハートの7もまだデックの中にあると暗に示せているし、ビジュアルを心理的な誘導の効果に使ってるあたりマジ天才だと思います。

The Queens

4枚のクイーンが1枚ずつ消えて、また一瞬で出てきます。
大流行りしましたね。
もう6年ぐらい前は動画界隈みんなやってました。
それぐらいクールでイカした手順です。

フラリッシュ系の4プロダクションの問題として、カードを1枚か2枚表向きにセットしておかないといけないものが多く、ちょっと負担だったりします。
この手順はクイーンを消す過程で同時にプロダクションできる形にしてしまうという試みです。
しかも消す過程に全く無駄な動きがなく、それぞれ違った方法で消していき、デックの上で操作するのに中に埋めた気配も感じません。

ラスト一枚はクリップシフトで消してますが、解説ではサイドスチールでやってて、それを見た時のショックは今でも忘れることができません。

Swiss Made

カードを1枚覚えて真ん中に戻して、トップカードを表向きにデックの真ん中にアウトジョグします。
それをくるっと回転させると選ばれたカードに変わります。

ここでもちょっと変わったコントロールが紹介されていて、テーブル使わずにダミーを突き出した状態にしておけるやつでおもろいです。
メインは後半のカラーチェンジ。
同じセットからだとインパルスチェンジができますが、くるっと回す動きからカードが変化することが想像できないのでとても変わった感触のカラーチェンジになってます。
どちらかというとマニア向きで、ダブルカードの上を消すことでチェンジを見せるタイプで、どうやって処理したかというのを追えない形にしてるのがとても賢いと思いました。

Collectors

カードを2枚選んでもらってデックに戻します。
シュパってやると赤と黒のAが1枚ずつ出てきて、更にシュパっとやると残り2枚のAも出現、同時に赤と赤の間にカードが1枚、黒と黒の間にカードが1枚挟まった形になります。

カード2枚のコレクター。
「このカードが捕まえます」を説明するタイミングもなくいきなりダブルで捕まえててえぐいです。

コレクターで最初から4カードを出してないのはどうかと思うものも多いのですが、プロダクションが現象になっていて、かつプロダクション後になんちゃらムーブみたいなのがないのですっきり見えます。

Hedbergs Perk

トップカードとボトムカードが入れ替わり、二段階目は意外な方法でトップとボトムを入れ替えます。

アーロンフィッシャーがクレジットされていますが、重力のあれを使うだけじゃなく、トップとボトムの概念にまつわるあたりは”Standing Challenge”の影響も見られます。
なんか「実は全部ひっくり返ってました」というマジックもありますが、トップとは何か、ボトムとは何かを問うようなこの見せ方は面白いです。
ダンデブさんは”Uzumaki”でも非常に面白いオールリバースの演出をしていましたし、ビジュアルだけじゃなく筋との整合性みたいなものをあちこちに感じることができます。

Sixty Nine

4枚の6が4枚の9になるパケットトリック。
やたら難度の高いオサレカウントから、ビジュアルなカラーチェンジ、とてもクリーンに見えるラストのあらためなど、パケットトリック見てて「あっ」てなる瞬間をなくしています。
まあ最初のカウントは「あっ」といえば「あっ」なんですけど、そんなこんなのうちにもう変わってるので「あっ」という暇もなく終わりです。

んなわけでいつ見ても良いDVDです。
本当にノイズは全部排除されてるのでずっと見てられますね。
個人的ベストはSubway。Hofzzy Osbourneもかなり好きです。

どうしてもスタイリッシュな面やビジュアルな現象面に目がいってしまいますが、考えや狙いみたいなとこを想像していくとより深い楽しみ方ができます。
演出的にもビジュアルだけを頼りにしていなくて、むしろ演出のためにビジュアルがあるという印象の方が強いです。
無駄をなくして、より物理的な不可能性を高めるためのスライハンドは、ただテクニックに走ってるだけではなく「そんな難しいことする必要ある?」には「これよりリアルに見せれる方法ある?」と返せる手順ばかり。
ビジュアルや高難度が目的化しそうな時こそ振り返りたい作品集だと思います。

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