アールネルソンが1978年に出した名著Variationsの今手に入るバージョンです。
なんか四角くなってイラストが写真になってます。
写真は白黒ですがツルツルの紙が使われてるので画質は良く、写真の量も多い親切設計。
トリックによっては元の版から加筆されていたり、最後にNew Materialというパートが丸々付け加えられたりしています。
アールネルソンはそんなに作品数が多くないので知名度はあんまりかも知れませんが、普通にクラシック化してる作品が多く、あーこれもアールネルソンなのかという手品がこの本にたくさん載ってます。
この本自体がタイトル通り何かのバリエーションで、ここに載ってる作品のバリエーションも大量にあるという、今読むとそこら辺も味わい深いあたりでしょうか。
Reset, Reset
リセットです。
ポールハリスの原案と大きく違うのはAとKの示し方。
今だとこっちのやり方でやる人が多いと思いますが、裏の色を隠せたりAとKが混ざるオチが出来たりチェンジのパートの都合を調整したりと何かと便利な方法ですね。
チェンジのパートも大筋はアールネルソンのを踏襲してる人が多いと思いますし、リセットの演じ方についてもさらりと大事な事が書かれてるんで未読の方は是非に。
Between Your Points of Departure
パームオフです。
4枚のAを示してからあれするところが特徴で、とても説得力があり、パームオフのプロットにも合ってる流れで綺麗。
この手のあれは結構使い所多いので、覚えておくと便利です。
Slow Motion Top Change
トップチェンジ、主にコントロールで使う場合のハンドリングです。
通常のトップチェンジと違って物理的にシュッとならないのが良いところ。
動機付けがちゃんとしてて、身振りでカバーする必要はないのでシチュエーションによってはかなり有用。
Color Changing Deck
カラーチェンジングデック。
他の作品でもそうですが、何かをした後の状態を最初の状態に見せる手順の組み方が本当に上手い。
最初からセットしていたデックでは出ないインパクトがあるし、超良い手順だと思います。
The Haunted Card / Exploding Aces
レギュラー即興で出来るホーンテッドカードと、それを使ったAプロダクションの手順。
さすがにデックに手を触れずにとはいかないのですが、カードが勝手に出てきたようには全然見えます。
そのホーンテッドをオチにしたExploding Acesは全部のエースがぴょこぴょこ生きてるみたいに出てきてとても楽しいです。
Pass the Sandwich
2枚のサンドイッチカードは一番上と一番下、選ばれたカードは真ん中、この状態から上と下のカードが消えて真ん中で選ばれたカードをサンドイッチしています。
「ジョーカーがカードを探しに行く」みたいな演出ならこれがベストではないでしょうか。このサンドイッチ感は本当凄い。
人は最初に見たサンドイッチカードを親だと思う習性がありますが、自分が人生で最初に見たサンドイッチカードがこれで、マジックにズブる前の感動としていまだにその時の衝撃が残ってます。
ちなみに北新地のY’s CafeにいたOrionに見せてもらったのですけど、今思い返すとあのパスの工夫はとてもよかった気がしますね。
この本ではアールネルソンおすすめのパスについて触れられています。
Submarine Sandwich
こちらはちょっと移動の仕方が違うサンドイッチカードです。
確実に別の場所に差し込んだのに〜という感じ。
Dan & DaveのSubwayの元ネタになったのがこれで、彼らはさらに距離を離して移動をビジュアルに見せてあれも大変な傑作でした。
あとLattaのDeadlier Than The Maleというサンドイッチもこれ的な要素あって、あれはアウトジョグしたサンドイッチカードが上に上がって行く過程でカードを捕まえるな演出で、なんか状態的に色んな演出を作りやすいサンドイッチカードなんだと思います。
About Faces Aces
Kをデックに戻し、Aでツイスト現象をやった後Kにチェンジ、Aがデックから出てくるという手順です。
これは残務処理になりがちなA出現パートがとても綺麗っすね。
うるさ型的にはちょっとあれなところもあるのですが、あくまでAのマジックであるという感じで押し切れる感じはあります。
Sleeve Aces
袖でこするとフェイスのカードがAに変化していくという手順。
これはほとんど完璧な手順でしょう。
本当に気持ちよーく変えていけます。
ほとんどと書いたのは、これの一箇所ちょっとあれなところをデビッドウィリアムソンが改案したバージョンがあるからなんですが、まあ動き上そんなにおかしくはないとは思います。
Pretty Good Coins Across
こっからコインです。
4枚のコインのコインズアクロス。
ギミックありバートラムの技法ありと愉快な感じですが、手数を稼ぎつつその都度手を開いて見せられるようになっていて普通に良い手順だと思います。
コインあんま知らないのでこのコイン構成自体でやるアクロス自体がわりと新鮮。
Coined Card
コインカットです。
デックの上に置いたコインがバーン消えて選ばれたカードのとこまで貫通してます。
シンプルながらサトルティが効いていて説得力も十分。
これちょっと頑張ればダイレクトアタック可能ですね。
なんかそういうのも誰かが発表していた気がしますが。
The $1.50 Vanish
3枚のコインと1枚のカードを使った手順。
1枚ずつ消えてカードの下に全部あるというものです。
この本のコインの中ではこれが一番好きですね。
カード1枚でこれだけ綺麗に3枚消せるかという構成で、マトリックスとかカードとコイン使う手品の練習用としても良いと思います。
Four the Hard Way / Four the Easy Way
カードの間から4枚のコインをプロダクションする手順。
Hardの方はHardでEasyの方はEasyです。
Hardというか、これ系はコンディションが安定してないときついというのがありますね。
Clifton’s Ring Move
Ring & Stringで使う有名なムーブ。
普通に抜けたようにも見せれるし移動等にも使えるのに超フェアで難易度を上げたようにも見せれるという夢のような技法です。
Earl’s Ring Move
こちらもRing & Stringのやり方。
すーーっと通して通ってるとこ見せてからすっと抜くことができます。
Clifton’s Ring Moveも入ってるし、Ring & Stringはこの本だけ読んでおけばとりあえずOKと言っても差し支えないと思います。
Impromptu Flying Ring
リングフライトを即興でやるアイデア。
一応単体でも演じられますが、指輪の手順に繋げた方が怖くないぐらいの感じです。
お客さんから指輪借りるの自体すごい抵抗ある派ですけど、もしやるなら事故率低いこういうの覚えておきたいっすね。
Hit and Run Aces
ロールオーバーエースのエース出すだけバージョン。
ディングルの本に載ってる手順やりたいけど重たいしセットめんどいしあのクルクルするとこだけやりたい!という人にはちょうどいいハンドリングになっています。
The Changing of the Card
デックにコイン乗せてその下のカードが変わります。
あらためてハンドリング読むと、あーそっちからじゃなくてそう動いてからそう!みたいな納得感がありました。
あまり演出やセリフが詳しくない本ですが、これやるにあたって観客にどうカードを選ばせるかというとこが書かれていて、コインを乗せるのがただ難しくするためだけじゃないというのが良いっすね。
Section Five : New Material
Revised版の追加パート。
MVPというコントロールがメインです。
なかなかパワフルなコントロールですが、応用手順はちょっとこれじゃないとリズム崩れるので頑張るしかなさそう。
ここ最近ちょっと流行ったなんとかかんとかというコントロールに似てます。
“Low Fat Sandwich”はなんかはやや技法先行型の手順という感じがします。
ただこれは他の技法に置き換えができて、サンドイッチカードが消えてまた出てきた時には捕まえていたというコンセプト自体は綺麗です。
Allan Zola Kronzekの”Playing with the Jokers”とかはルーティンの中に上手く取り込んでいてよかった気がします。
“Inspired by Marnase”はデックの中で行う2枚のカードのトランスポジション。今でも人気のプロットですが、このアプローチはそんなにない気がします。
変化も鮮やかで、入れ替わりの示し方もバタバタせずに見せれるのが強み。
“Face Up Flyers Re-Blocked”はオープントラベラーみたいなやつで、終始デックを持ってやるのですが最期のあれが逆に気にならないから逆にありな気はします。
ただ、構成的に最初の方は見せれて後は見せれないという感じなのでその辺で演じる難しさはありますね。
消し方足し方は面白いのですが。
全体の特徴としてはビジュアルってより鮮やかと言いましょうか、コンセプトがはっきりしていて視覚的にそれが観客に伝わるようなものが多いです。
なんか言葉で説明されなくても動きだけで表現したいものがわかる感じ。
改案ポイントも意図がはっきりしてるし、その効果もこれ以上ないぐらい分かりやすいです。
しかしまあ40年前で原型保ったまま今も残ってるアイデアが多いの凄いですね。
とんがりコーンの発売がちょうど1978年らしく、あの箱が当時からあれだったそうで、この順番で書くととんがりコーンの凄さの方が際立ってしまいそうですけど、本当良い本なので是非。
とんがりヒストリー | ハウス食品
Comments
No comments yet...