水沢克也さんのセカンドDVD、フォーク曲げ解説です。
前作のSMOKEと同じく使われてる技法自体は既存のもの中心ですが、ルーティンとして完成されているのでこれだけ見ておけばだいたいなんとかなる感あります。
フォーク曲げの中ではマジック的な見せ方で胡散臭い雰囲気はなく、それでいて「触らずに曲げる」ことにこだわってるあたりがポイントです。
カジュアルな感じもありつつ、インパクトある現象を軽くしすぎないバランスは水沢さんの作品全部に共通してるあたりかなと思います。
このDVD出たのは2011年で、その頃から比べるとフォーク曲げも結構一般化してきて、メタルベンディングについて何かしらの印象を持ってる人も増えたと思うので、メンタルに振り切るより万人が演じやすい見せ方なんじゃないでしょうか。鶴になるっていうエンディングの気の効き方も後味良いです。
ルーティンは2本のフォークを使い、曲がったり捻れたり折れたりしつつ、最後はフォークが鶴の形になるオチ。
2本のフォークを使うことに抵抗感じる人も多いかもしれませんが、より自然に破壊力ある現象を起こすための解決としてはこれしかないかなと思います。
フォークはいちいち新品使うのでもったいない気持ちもありますが、日用品が変形するマジックは現象が起こったあとのオフビートが強く、その間に何もしない方がもったいないです。
手順的にもお客さんに調べてもらったり触ってもらったりのパートが適度に配されているので、いちいち変形したフォークに注目が集まります。
どちらかというと難しいのはコインアンダーザウォッチのパートで、今までとは明らかに別の現象が入ってくるのでうまく演じればスパイスになりますが、ルーティンとしての印象がボヤけないように見せるプレゼン力は必要になってきます。
ここも強力なオフビートとしての機能はあるものの、絶対必要なものではないので上級者向き。
別の現象をぶっこむ分、観客の意識を反らせることはできるので、コインアンダーザウォッチの中ではかなり楽な方だとは思います。
プレゼン力という意味では折れた後に捻れたり先端が曲がったりするのも難しいあたりかもしれません。
普通に考えたら折れるのが一番意味わからないので、尻すぼみにならないようにせにゃいけません。
ただ、捻れるのは「力では絶対に無理」という強みがあるので、それまでの曲げ方がとても良い伏線になってます。
「力では絶対に無理」を説明する間に2手先まで仕事してしまう構成も見事。
手法を変えて観客の想像の可能性を潰していくのはどんなマジックでも定石ですが、それを言葉での説明なしに積み上げていく序盤がどんどん効いてきます。
メタルベンディングに限らず同様の現象が繰り返し起こる手品は後半はだんだん当たり前になってきて盛り上げるのが難しかったりしますが、この手順はそういう意味での心配はありません。
手順がかっちりしてるとプレゼンに余裕ができるので、全体的に良い感じの演技になります。
可能な限り力が入ってるように見えないようにしないといけない手品なので、ゆとり持って演じられる手順はありがたいです。
フォーク曲げのほかに、SMOKEのスピンオフ的な感じでタバコとライターの手品が二個解説されています。
Cigarettes Coming Backは空のタバコケースからタバコが出てくるもので、箱にちょっとした工作するだけでいいので、喫煙者の方は是非。
Burn patientはライターの火を吸って唇を火傷した状態にして、それが一瞬で元に戻ります。
実はこのあたりに水沢克也という人の真骨頂があって、唇火傷した時の顔とかスリリングな演出とかオチが一番不思議じゃない感じとか最高すぎます。
なんかイケメンでもこんなことやりまっせー的な嫌な感じが全くなくて本当に信頼できます。
いや、イケメンだとより受けるものだからズルいはズルいんですけど、結構こういうギャグが受けるところに自分を持っていくっていうのはコメディ手品の本質的な何かがある気がしてて、顔とのギャップ以上にガチで不思議なことができる人がやるからおもろいってことだと思いますし、そのためにイケメンじゃなくても手品頑張るのです。
演者が真面目であればあるほど、それを見てると笑えるもんで、フォーク曲げてる時と唇腫らしてる時の真剣さが同じあたりがポイント。
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