by jun | 2018/12/11

先週末にリリースされたベンジャミンアールの新作。
夏頃に告知されてたやつとは別のものですが、最近Vanishing Incでちょこちょこ販売されてるダウンロードものとは違い完全新作です。
メルマガにはクリスケナーやルーンクランの推薦コメントが載っていて、クランは傑作と評価していました。


“Roleplayer”の現象は観客が言った数字のフォーオブアカインドを観客自身がシャッフルされたデックの中から探し出すというもので、いくつかのアプローチが解説されています。
ベンジャミンアールで4枚出しといえば”Real Ace Cutting”が発表されたばかりですが、あれが演者のテクニックでどうにかするように見せるのに対して今回は観客が主体。
その上でリアルという方向性自体は変わらず、ストーリーだけではなくギャンブリング感も残していて、セルフワーキングでやるバージョンもちょっとテクニックがいるのも全体の印象としてはほとんど同じに見えるようになってます。

ベンジャミンアールはマニアックな作品も多いですが今回は盛り上げ型の手品で、観客が参加すればなんとなくアガるというだけじゃなくセリフや構成もエンジョイ仕様で練られていました。
同じ原理を使うSpectator Cut the Aces系のものより手数が少なく済んでますし、別に何もしてないのに不思議さにバリエーションを持たせていて説得力も強いです。
サトルティは心理的なものと見た目的なものを上手く織り交ぜて、「観客が」の部分をいちいち強調できるようになってます。
見た目の説得力がある分ちょっと説明過多だったり攻めすぎで怖いセリフもありましたが、やんわりとランダムなデックであることを伝える方法や演者の態度、観客へ指示を出すテンションの話なんかもあって読みどころは多いです。

技法的にはLess Is Moreとかぶる部分も多いものの、今回は演者が関与してないように見せるチューニングがされていて理論と自然なハンドリングで観客の記憶から流れるのが目標。
ベリーイージーベリーパワフォゥとはいかない難しさはありますがリアル世界に特化した技法の使い方は練習しておきたいもんです。
なんでLess Is Moreに載せんかったんやっていう話もちょっとあるので、Real Ace Cutting好きの人も読んで損はないと思います。
普通に読み比べても振れ幅がおもろいですし。

大筋はベンアール作品追ってる皆さんの予想を裏切らない範囲ではあるんですけど、またそれかって言わせない工夫があっておもろい本でした。
正直この方向ちょっと飽きてきたのはあって、もっと尖った物を期待してしまいますが、優れた手法であるのは間違いないですしトリックごとに違った策略もあって現象のバリエーションに留まらないあたりはさすがという感じです。
ある程度演技力がないと成立しない手品なんでハマる人はめっちゃハマると思います。

あとこれ買うとVanishing Incで今年発売されたダウンロード商品の”Red Herring”の動画がおまけでついてくるのでそれについても少しだけ。
色んな用途に使える原理で電子書籍版でもいくつか見せ方が紹介されてましたが、この動画で演じられてる方法はかなり好みでした。
最後は演者が探し出すという見せ方になっていて、ちょっとずつ介入していく具合も最後の当て方も派手すぎず不思議さを足してて良いです。
動画で見ると結構操作の部分が長く感じたのでデックに触れずに当てると原理感出そうですしロケーションで使うならこれがベストかなと。
そして最近のアールさんの動画は楽しそうでなによりです。
見た目もイカつくなられてPast Midnightの頃の眠そうにハードコア技法を使いこなす演技がもう帰ってこないと思うと寂しい気もしますね。

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