by jun | 2018/05/26


この2つの作品はベンジャミンアールの公式サイトで売ってるpdf形式のレクチャーノートで、どちらもカードマジックの手順が解説されています。

Benjamin Earl | Face Value

Benjamin Earl | Red Herring


ベンジャミンアールのノートにお決まりの警告文はどちらのノートにも書いていて、テレビ、ネットの動画、お金取るショーで演技する場合は別に許可を取る必要があるようなのでご注意ください。

Face Value

現象はお客さんの手の中で起こる2枚のカードの交換で、ベンジャミンアールだからもちろんというべきかレギュラーデックのみで演技可能です。

この手の手法を使う手品としてセリフもよく考えられていて、モンテモンテしすぎない感じはとても良いですし、マルチエンディング(マルチプルアウトではない)の考え方も面白いです。

手法的にはデビッドウィリアムソンのメモリーテストの方が好みですが、ベンジャミンアールらしいタイミングと技法のクウォリティのコンボで現象までエリアルレイブしていく感じは嫌いじゃないですし、エンドノートで書かれてる手順の動作の意味みたいなものを読むと色々納得できました。
どのような時にどのようにすれば観客は欺かれて、こうすると無意識に観客はこう思うみたいな話、眉唾ものではありますが、別に大した負担ではなくデメリットもないのでそういうのを積み重ねていくのは大事だと思います。
考えてる人にとっては当たり前に何気なくやってることかもしれませんが、明確に文章にしてメソッド化してくれるとありがたいです。
まあこういうのは無闇にやりゃ良いってもんでもないので加減は難しいですけど、常に無意識に働きかけるぐらいのバランスにできるよう経験積むしかないですね。

トリックのエンディングに関しては納得できる部分はあるものの、なんかレギュラー縛りのせいでややこしいことになってる気がしないでもないです。
完全即興にはできないわけですし、デュプリケイト持ってればほぼ即興になるんだからそれでよくねと思いました。
高尚な理論からすればレベルの低い話ですけど、なんかロジックが先走りすぎてる感じは否めません。

Red Herring

観客が全部操作するタイプのカード当てです。
もちろん演者の指示は入りますが、途中で混ぜたり好きなとこで止めたりというのがあるのでかなり自由に見えます。

ベンジャミンアールの過去作で言うと”Sow by the Lug”に近いです。
“Sow by the Lug”は演者と観客が一緒に小話しながらできますが、こっちはただ指示するだけなので演じるのは難しいと思います。
やっぱり長いので、それなりの雰囲気作りと作業感減らすトーク力は必須です。
たぶんマニアが見ても最初はわからないと思いますが、長かったらそりゃ追えんわって感じもします。
長いのはデメリットばかりではなく、ちゃんと興味を持続させることができれば壮大な前振りとして機能するもので、特に操作してるお客さんはびっくりするでしょう。
あと長くてもわかりにくかったり落としたりするリスクがあるものじゃないので安心してデックを預けられます。

そんなわけで非常に演出が大事になってくるトリックですが、あんまりその部分については触れられていません。
一箇所だけ重要なポイントがあるので、そこだけ詳しくセリフについて語られてますが、その部分は操作的にはマニアを騙すためのもので、一般のお客さんにもその効果をわかってもらうために何らかの意味を後付けしたような感じです。
ただ、この操作とセリフがあるとないとでは結構不思議さは変わってきますし、フリー感のある操作で、割と色んなセルフワーキングに応用できそうな感じがあります。

それ以外の指示は読者にお任せという感じなのですけど、当て方はメンタル風になるのであんまり軽い感じにはできません。
ベンジャミンアールが演出で重要視してるのはカードの当て方で、そこでリアリティの話がちょっと出てきます。
最近彼が言ってるリアルの話とは少し違いますが、ここでがっつり心読む感を出して今までやってきた作業を作業と思わせないのが狙いです。
ただ、作業と思わせずがっつり心読む感を出すために、一個作業が増えてるのはいかがなものかと思います。
たしかに絶妙に胡散臭く手品っぽい嘘ではあるものの、そこの操作は結構間延びしてしまう上に、逆になんかの原理だと思われるリスクもなくはないです。
手順は直線的でなく思い出すのが難しいので逆算されにくいですが、なんかそういうものなのね感は出てしまいそう。

予言として使う方法も解説されていて、どちらかというとそっちの方がやりやすいかも。
長い操作も全部予言されてたみたいな見せ方できれば強いです。

Face ValueもRed Herringもスペインの人が使いそうな心理的サトルティを使っていて、そこに若干のテクを混ぜるあたりバランスの良い手品だと思います。
Real Ace Cuttingはリアルではありますが、どうしてもお客さんから見た感じテクニックっぽすぎるので、お客さんが参加するタイプの手品の方が不思議という意味では高まります。
Real Deck Switchesのようにお客さんには何もしてないように見えるテクに賢さを混ぜるか、演者は本当に何もしてないように見せるために賢さを発揮すれば良い感じのリアル手品ができるかもしれません。

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