by jun | 2020/11/28

1981年に出たGeoffrey Scalbertのカードマジック本。
全く知らん人でしたがアロンソン本に名前が出てきたので読んでみました。
アロンソン本では原理系のものが引用されてまして、そっちで良いのも多かったですし、爆受け系の現象や演出が粋なのもあり、巧妙さも楽しめて満足度高かったです。
現象を書かないスタイル&本文読み辛フォントの苦行仕様で萎えまくってましたけど読み終わるころにはテンション上がってました。

After Dai Vernon

AとKとQを出すオープナー。
4つに分けたパケットから段階的に出てきて楽しいです。
Cutting the Acesのバリエーションということになっていますが、シャッフルしながらカットしていくスタイル。
別に2種類でもいいので、AとKを4枚ずつ出したい時に便利そう。

An Arabian Legend

マトリョーシカ式入れ子封筒の一番奥だけ窓がついてて外が見えるようになってて、そこにハートのQを入れて封をしてサインをしてもらいマトリョーシカを閉じていく。なんやかんやあって封筒を開けるとハートのQが消えてて他の3枚のQが入ってます。
シンプルで巧妙な原理を使っていてとても気にいりました。
イスタンブールの王がハーレムをどうというストーリーがついてますが、普通にどんなカードでもできます。サインカードでもなんかやり方考えればできそう。

The Sunken Key Again

サンクンキーというよりオートマチックプレイスメント系の原理ですが、なんか見たことあるようで知らない方法でした。
ずっと観客が操作できるタイプでもないんですけど、知ってても不思議系。

Not Without Trace

上の原理を応用した2枚のカード当て。1枚はあらかじめ枚数目を予言しておけれるというもの。
セットされる枚数目を好きなように変えられる応用例でもあるので、なにかの原理と組み合わせる可能性が広がります。

Cardsharping Without Skill

いろんなギャンブリングデモを少数枚のセットで連続して行う手順。
正直この中で行われるゲームをポーカーしか知らなかったのでピンときませんでしたが、ブラックジャックとポーカーとかならもっとエコにできそうだったりすると思います。

Another Automatic Speller

反則的なスペリングトリック。
レギュラーでできないスペリングトリックとかなかなかやろうとは思えないものですけど、やられたら普通に不思議だと思います。
こういうのをレギュラー風にセットする方法など参考になりますね。

Adolphus And His Gong

ステージ向けなマルチプルセレクションのカード当て。
ステージカード手品らしい豪快な手法とかもあるのですが、フォースしてコントロールしてみたいなわずらわしさがなく、サクサクと手順が進むので楽しいです。
ストーリー仕立てでそれぞれ別の当たり方する感じとかも好き。
一番良さげな書いてあった文字が変化して当たるところが日本語不可なのが残念。

The Blind Deuces

サンドイッチカード。
シャッフルしながら観客がストップした場所のカードをひっくり返すというのを2回やって、スプレッドするとひっくり返したカードの間にセレクトカードが来ます。
適当なカードでサンドイッチになるやつ好きじゃないですけど、ストップしたところで脇に避けておいたジョーカーを反対向きに置くのでもいけますね。
偶然そうなったようにも見せれるし、Sercher風に見せることもできて良いトリックじゃないでしょうか。

Sunk….

原理もののカード当てですが、ちょっとめんどくさい位置にカードがくるのを上手い演出で見せていて、なおかつカードがポケットから出てくるようになってます。良い。

The Stabbing Trick

ナイフを刺すカードスタブのハンドリング。
要はあれを残しつつシャッフルする方法なんで、色々なシーンで使えます。
結構しっくりきました。

Location Twenty-Six

スタックの原理を使ったカード当て。
その原理自体は超基本のものなのですが、ちょっとシャッフルしたりすることで全然そういうものに見えません。
解説されてる手順はレギュラーデックでは行えませんが、同じ原理でレギュラーデックでも不思議なカード当てをすることができます。
マニア向けのカード当てとして色々応用できそうな原理。

500 Dollar Location

システムを使ったカード当て。
これはまあそこまでしなくてもって感じではありますが、例えば複数枚を不可能な感じで当てる時の一つがこの手法みたいな応用のさせ方はできます。

The Milton Aces

グラスにデックを入れて、ハンカチをシャッとするとAが表に出てきます。
連続で行うのですが、セットによってシャッした時にあれしたようには感じない構成になってました。(Aをどかした時にフェイスに見えるカードが毎回同じ)

Match

デックを2つそれぞれグラスに入れて、片方のデックはカットしてもらう。パワーオブソート的に1枚ずつ見ていった時に、最初に一致するカードを当てることができます。
これってこういうことできたんですね。
セットと簡単なルールを覚えればできるので実用的。
1デックメイト一致版も解説されてます。

Matchmaking

上のやつの逆で、観客が言った数字を一致させるようにカットします。
マジかってぐらいマニアックな仕上がりになっててめっちゃ好き。

Diception

サイコロ2つ転がした分だけカードを取ってそこのカードを覚えてもらい、うんたらかんたらするとポケットにカードが移動します。
原理だけ見るとまあまあって感じですけど、サイコロの目をどう知る方法とか、いかにこっそりポケットに入れられるかとか、頑張れる余地があって超不思議なものに見せれる可能性がありそう。

P.S.E.

ESPカードの手順。
実は失敗することもある手順なのですが、メンタル手品はこれぐらいギリギリ責めてアウトにいくバランスが面白いですね。
やってもらうことがごくシンプルで、当て方のセリフ例も良い感じでした。

Oil And Queens

水姫でクイーン以外の4枚のスポットカードをクリーンに示す方法。
これはまあその欲求がないのでなんとも。
いや、示せた方がいいとは思うんですが…

Nowhere And Everywhere

ノーウェアで見せるカードが同じカードで、デックを見ると全部当たりのカードに見えるようなEverywhere Nowhereのバリエーション。
デュプリケートを使うタイプなんですが、外れの時に何回も同じカードが出てくることで本丸のEverywhereに説得力が出る感じで面白そうでした。
あんまりないアプローチだと思いますが、ありなんじゃないでしょうか。

The Triple Voodoo

ステランコのVoodoo Cardのバリエーション。
選ばれたカードが別のデックで何度も表向きになる現象で、スマートに赤青の入れ替わりまでやっていてめっちゃ良かったです。
余分なカードは最小限、エンドクリーンな構成も素敵。

Elmsley And The Wolf

4カードトリック的なエルムズレイカウントネタ。
色があっちいったりしてオチのインパクトにはどうかというところがありますが、エンドクリーンなのでこういう見せ方もありかなと。

Voices In The Pack / Money For Jam

システムを使ったカード当て2つ。
何か不可能感を高めた感の時にあれを見ます。

Mis-Made Diamonds / Mis-Made Diamonds Again

ピップがおかしくなる系のパケットトリック。
Againの方は「思ったカードが印刷される」はずが観客の雑念たるブロンド美女が出てきたりして、遠回りしつつ当たりのカードに辿り着く感じで楽しいです。

How The Deuce?

システムを使って2枚のカードを当てる方法。
別々の位置のカードを覚えてもらっても表を広げて見ずに2枚とも当てれます。なるほどたしかに。

Cutting The Coloured Aces

裏色違いオチのCutting the Aces。
演出がとても面白く、小道具をしっかり裏の仕掛けにも使っていて綺麗な手品です。
プレゼンテーション的にそういうオチになるとは予想がつかないけど、演出としてはまとまっていてカラーチェンジオチのとても良い見せ方だと思います。
かなり好き。

Impromptu E.S.P. Again

外国の人の名前限定ですが、スペリングで微調整する方法です。

The Fantastic Agent

カードケースの中でサンドイッチしたり、ポケットからカードがせりあがってきたりします。
胸ポケットからにょきにょき出るやつ、どうも移動してそこから出てきたという風に見せるのが難しいですが、その前に不可能性の高い移動を挟むことで説得力上がってるんじゃないでしょうか。
ストーリーとしてもハマってると思います。

Giant Bro. Hamman

ジャンボカードでハーマンカウントみたいなことをやる方法。
トリックとして、アルファベットが書いたカードが演者の名前の順に並ぶものが解説されてます。
メッセージが表示されるものにも応用できるので、ステージ手品でこういうのができると便利そうです。

Printer’s Error

カードが印刷されていくパケットトリック。
カード構成やカウントの作法なんかは売りネタによくある感じのものですが、表示されるものと演出がちょっと変わってます。

Dicey

サイコロを使ったセルフワーキングカード当て。
なかなかワイルドにダイレクトで怖いです。

The Four Islands

Matching the Cards的なところからA〜K並ぶのを見せる手品。
4つの島がありましてみたいなセリフで、プロダクション、変化、移動、綺麗に並んでるじゃーーんと段階的にオチに持っていけるのが楽しいです。
フォールスシャッフルがうまけりゃめっちゃ不思議だと思います。まあそれを言ったらなんでもそうですが。

Club Gambler

5枚の手札がロイヤルフラッシュに変化します。
使うのは本当に5枚だけ、財布に入れておけばいつでもできる、こういう手品が結構好きみたいですこの人。
変化後に裏を見せれることができるのが良いですね。
厳密に見せれるわけではないけど、こうなってんじゃないのってとこでさらっと納得させる感じ。

D.G.O.

予言の手品。
3枚のカードをフォースするだけなのですが、その後に観客の自由選択っぽいことがあったり、予言の扱いが面白かったりします。

A Demonstration Cull-Stock / Greekmanship Phoney Cull Stock

Aの間のカードの枚数をバラバラにしてデックに戻しますが、シャッフルすると特定の人にAを配ることができるデモンストレーション。フォールスディールなし。
地味ながら不思議です。
バラバラに入れたように見せてコントロールということをしなくていい分が不思議さに繋がってるような気がします。

The Mystery Of The Seventh Card

演者はずっと後ろ向きで、観客がシャッフルしたデックの中から7枚のカードを取り出してもらい、そのうち1枚をひっくり返してもらいます。他の6枚のカードを教えてもらうだけでひっくり返したカードを当てれます。
めちゃくちゃ不思議ですが、核心に触れずに何がどう良いかを伝えるのが難しい手品。以降これ系のがいくつか続くのでちょっと省略。

でもまあそれやったらなんでもありってところから更に手間をかけて不可能性を高めようとしてるのは凄いと思います。
時間当てるやつとか結構良かった。

Nikola Pairs / Mutus Memory

10組ほどのペアを作って、好きなペアの2枚を覚えてもらいよくシャッフルしてもらう。20枚のカードを5枚ずつ4列に並べ、何列目と何列目に覚えたカードがあるか教えてもらう。当てれる。
ニコラシステムを変な使い方してる珍味。
特殊セット&マニアックすぎてなかなか演じるシチュエーションが思いつかないですけど面白い原理でした。
メモライズドデックにそんな使い方があるとは。

Divination Frame / Pocket Divination Stand

現象はフレームに立てかけたカードの中から1枚選んでもらってそれを当てるというもの。
メンタル系の商品にこの手の手法のやつたまにありますが、ESPカードやレギュラーカードでシンプルに行えるものです。

Eight Kings Play Nap

カードを5枚ずつ4人の観客に渡して、中から1枚覚えてもらい、全員のカードを集めてシャッフルし、なんやかんやあって当たります。
今でも一部界隈で盛り上がってるプロットで、質問的なことはするけどそれだけではわかりっこないという何歩か先に進んでる感が面白いトリックです。
このプロットのMatt Baker版が気に入ってちょっと練習したんですが頭が疲れすぎて実演には至らず。このScalbert版はそういう意味でバランスの良い形だと思います。レギュラーでできないけど、どうしてもこの現象がやりたかったらそこそこの負担でいけます。

Scalbert’s Express System

オーバーハンドシャッフルの動きでポーカーハンドを配るのに都合良い場所にセットしたり、複数枚のカードを特定の枚数目にそれぞれコントロールする方法。
ここから先はこのテクニックの応用みたいなものの解説が続きます。
維持するだけであればリフトシャッフルですむわけですが、トップに固まってるのを散らばらせたり、観客の指定に合わせて間にカードを入れたりということができ、また多くの場合で最後の方までカードをランできるので混ぜた感も強いです。
現象でいうと、観客にカードを1枚選んでもらってから3つのサイコロを振って、その枚数分数えた場所のカードがそれぞれ選ばれたカードのフォーオブアカインドになってるというやつが良かった。
そういうこともできるし、即席でトップ数枚にどうにかしてセットして、それを都合のいい順番に並べ替えたりもできるから、習得すれば出来ることが増えそうです。

手順はレギュラーデックで出来るものが少ないですけど、それなりのリターンがありギャフやデュプリケートの使い方も上手い人だと思います。
フローティングキーやシステム周りの話もだいたい面白く、何か考えてみたくなるような原理が多かったです。
久々にあまり知られてない掘り出し物を当てた気分。

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