by jun | 2021/12/09

今年出たボリスワイルドの新刊。
カードマジックのバリエーションと、更にこういうやり方もあるよというバリエーションが解説されています。だいたいの手品の本はそういうものですが、いくつかの手順ではボリスワイルドマークドデックを使うと…ってのがあるので、そのあたりはボリスワイルドならではと言えるかもしれません。
これは著者の意図したところではないと思いますけど、この「ボリスワイルドマークドデックを使うと…」というのを読むと、それがアリなんやったらこれも出来るやろという縛りなしの発想に至りやすく、それは結構この本の良いところだと思いました。
逆に今回はほぼレギュラーデックかつ即興寄りの作品が多いので、Transparencyにあったイカつさは控えめ。
作品数も7つとこじんまりしておりますが、演出や観客とのやりとり重視のプロっぽい手順でまとまっています。

Zoom 9

9枚のパケットを持って1枚覚えてもらい、スペリングでカードを動かしますが演者はカードを当てれます。
元ネタはJim SteinmeyerのNine Card Problemで、本作はスペリングしてもらうものを縛るところに工夫があり、カードの動かし方もちょっと変わってる感じ。
演者はずっと後ろ向きで全ての操作は観客が行いスペリングする単語も決めてもらえますが、実際はちょっと制限があるのでここをうまいことやるには日本語の場合特に工夫する必要はあります。
スペリングを当てる時の演出に使えるんで、ここの単語の選ばせ方を考えるのは面白そう。
タイトル通り、遠隔でやる場合のバリエーションの解説もあります。

ARCAAN

RはreverseのR。
ACAANで観客の言った枚数目からひっくり返って出てくるやつです。
まずこれの好き嫌いって結構分かれると思うんですけど、個人的にはひっくり返って出てくるとACAANの枚数数え終わってまさかーーーの引っ張りが出来なくなるというだけでかなりマイナス。
ガスタフェローがやってた表向きに配って1枚だけ裏なら全然良いんですけど、特に観客が配る場合テンポをコントロールしにくくなるし現象としてもそんなにいいもんかしらというのがあります。
この手順の場合はひっくり返るのがサカー的な演出上必要ってのもあるんですけど、そのサカー的な見せ方も失敗時と成功事でやることが微妙に違ってたりしてイマイチ。
演出に沿って仕事を全部済ませる方向は好きなんですが、フリのためのフリという印象は結構強いと思います。
ACAANとしては確かに両方フリーコールのエニーで、その後カードを触る必要があるのでそこのカバー勝負になってきて、演技力次第では面白くなると思うけど手順としてはそんなに出来良くないです。
即興で出来るのは利点だし、ボリスワイルドマークドデック版はかなりアリ寄りにはなってますが。

Any Ambitious Card At Any Number

エニーナンバーを偶然の一致ではなく移動現象として見せる手順。
最近アンビシャスカードのコンセプトをずらすみたいなのちょっとした流行りな気がしますね。
アンビシャスカードのわかりやすさというのは魅力ですが、観客のインタラクションがあるのでじわじわ来る不思議さを残せるのはこっちだと思います。
手順も丁寧で、マニアックというわけではないけど普通に良い手品。

Predicolor

レインボーデックの手順で、予言のカードと観客の選んだカードの裏の色が一致してるという見せ方です。
古典的なギャグながら面白いしサトルティやフォースの工夫も良いです。このフォースは通常ではやや弱いですがギャグ演出だからこそ成立するバランスで手順にマッチしていて好き。
欲を言うと、この見せ方は裏面隠してただけなのかという印象を与えてしまい実際隠してるだけってなんかあれなんで、予言でも使える変化系の良い演出があればもっと良いとは思います。
ビジュアルが楽しいレインボーデックなので勢いでいけてしまうんだとは思いますが、振り返るとどういう手品だったのかと疑問に思う人はそれなりにいる気はする。

InvisiQuiz

ビドルトリックみたいなやつのパケット版というか、5枚が4枚になってひっくり返ってまたそのパケットに出現する的なやつです。
へーーまあ普通のビドルトリックでいいやぐらいの感想だったんですけど、ビドルトリックの課題である5枚に絞るとこを面白くしようとしてるのに好感を持ちました。
それ自体の仕掛けは大したことではないんですが、実際意味ないけど意味ありげで手品終わった頃には意味を考えてしまうようなコミュニケーションは好きです。
ちなみにビドルトリックで5枚にするとこも半分に分けるのも上手いこと解決してるのはドキムーンの手順。

Impossible Double Divination

2人の観客のカードを当てます。
手続きとしては、観客に半分に分けてもらって2人で半分ずつ持ち、覚えて混ぜてというだけでシンプル。
セットはちょっとかかるけど仕掛けとして覚える必要のあることも少なく、スティーブビームの本とかに載ってそうな良さがあります。
ボリスワイルド代表作の簡易版みたいな感じですけど、手軽さとインパクトのバランスも良く、サラッとやればマニア相手でも行けんじゃないでしょうか。

Color Changing Chicago

シカゴオープナーとカラーチェンジングデックを足したやつ。
説明が難しいんですが、シカゴオープナーであのカードはどこ行ったんってやつをデックから探そうとしたらデック全体の色が変わっててテーブル上のカードの色も変わってるみたいな見せ方です。
ただ足しただけの手順というのは微妙になりがちですが、プロットの気になるポイントをスッキリさせる方向の足し算なのでこれはあり。
超特殊デックを使うわけでもなく、カラーチェンジをドガジャーーんと見せれないんですが、技法だけじゃなく手順全体の流れと演技で錯覚させようとしてるところとかも結構面白いです。

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