by jun | 2021/04/17

2016年にHermetic Pressから出たVanni Bossiの作品集。Stephen Minch著。
一風変わったカードマジックとコインマジックが楽しめるとてもとても良い本です。
道具やギミックをあわせて使うものが多いですが、手順的にも仕掛け的にも実用的で演じやすくしてくれてるものが多く、手製ギミックにありがちな不安定さもないですし、セットした状態で持ち運べないというような使いにくさもありません。
全編あらゆる手法とサトルティを駆使した手順が楽しめ現象の見せ方も無類に面白いという万人に激奨できる一冊。
特にレギュラーだけで行うカードやコインにまんねりしてる人にはおすすめですね。
手法にこだわりがある人が読んでも絶対なんかの刺激になります。

La Belle Captive

コップの中に急にカードが現れます。
カードカレッジの3巻に載ってるやつですね。
また、Carrollのテクニックの応用でコップの下からカードをプロダクションしていくのも解説されていまして、これがとても面白い見た目のものになってます。

Framing the Sandman

カードインフレームとT&Rの組み合わせ。
派手なものではありませんが、とてもディセプティブで不思議な手順です。
サインカードではなく破れ目の一致で示す方式で、ここの手つきもまず観客に渡す分だけを切り取ってそこからビリビリに破くという方法で、古典的な方法でも良いっちゃ良いけど一部だけ千切れた状態という復活の形を先に見せておけるのは強いです。
傑作。

The Money Card

観客のサインカードがお札の束の中から折り畳まれた状態で出てきます。
基本的な構造は箱とかでやるのと似たようなものですがペラペラのお札の中からということでクリーンな印象がとても強く、あれをした感じもかなり薄まってるんじゃないでしょうか。
このテーマは高価なギミックが定期的に発売されますが、この手順は道具の自然さもフェアさも最高峰といっても良いと思ってます。

Card in the Head

コップの中の飲み物の上にカードが折り畳まれた状態で浮いてるという手品。
目の前にあったものの中に折られたカードがというのはあまりない気がしますが、見てない間においたのではなく移動したという感じは強そうです。
手法としてもデックに視線を集めやすい方法で通用するんじゃないかと思います。

With Your Peanuts

ピーナッツ缶の中から観客のサインカードが出てきます。
仕掛けがとても面白く、あーそれってそういう使い方ができたかという感じで、演じやすくバレないようにと工夫がされてる一作です。
作ってみた感じ最初ちょっとボーンなったけど加減すれば見た目も音も全く気になりません。
ボーナスとしてアルコーランのメダリオンをピーナッツ缶でやるのが解説されていてこれもとても良いアイデアだと思いました。

Bottom Feeder

これはサインカードが指輪箱に入るやつで、なかなか大胆な仕掛けですが技法さえできれば手順の流れ自体はすっきりしていて、スイッチしない方法ではかなりシンプルな見た目だと思います。
この後にThe Folding Color Changeというのが解説されてて、これはセレクトカードを2枚にしてまず折り畳まれた1枚を示し、再び折って広げるともう1枚に変化してるというもの。
指輪箱に移動するところがピークではありますが、現象の質が違うのでこれはこれで良い流れかと思います。
テクニック的にちょっと難しくなるところはあるけど、チェンジのところは流れるような気持ち良いハンドリング。

The Card in Finger Ring

観客に指輪を後ろ手にもっていてもらい、そこにサインカードが丸まった状態で入るホフジンサープロブレム。
カードも指輪もノーデュプリケート。
しかも観客の指輪に触れてないような印象を与えることができ、このプロブレムはここの加減で不思議さやフェアさが変わってきますが、かなりバランスがよく動機付けもしっかりした手順のように思います。
難所がいくつかある手順ですが、練習すれば安定するレベル。
指輪デュプリケート版も解説されていて、実際指輪はある程度制約があるのでサインカードでやればこれはこれで十分かなと。指輪に触れてないように見せるための肝となるアイデアが優れてるので、カードが移動した感はそんな薄れないしグッと負担が減ってる感じ。
指輪借りれる版はジェイサンキーとかジョシュアジェイとかトムハートがやっていてそれはそれで良い手順だけど、たぶんサインカードの方がこのプロットの魅力がよく伝わる気がします。

Fresco

カードオンシーリングについて。
これめっちゃ良いですね。
少しの準備をしておけばあれしたりこれしたりとごちゃごちゃしなくてよくなるという方法。

Cornered

ロケーターカードの話。
見た目も機能も損なわない方法で超便利。

A Germain Twist

輪ゴムで縛ったデックをビニール袋に入れてフェイスカードが変わる手品。
見せ方としては変化というよりフェイスに移動してきたように見せる感じ。
古典のバリエーションですがやってみると思いの外綺麗に変わります。
道具はチープになっているけど良く言えばラフに行えるし色々使い道ある方法です。

A Golden Change

カードを投げるとめっちゃビジュアルにカードが変わります。
めっちゃむずいけど決まれば綺麗に変わります。
ゲットレディもやりやすいタイプのカラーチェンジなのでいつかはできるようになりたい…

The Case of Mistaken Identity

2枚のカードを覚えてもらって箱の中にしまい、箱を手の上で叩くと1枚飛び出してきて、そのカードを叩くと2枚目のカードに変化。
とてもシンプルな仕掛けで驚くほどの安定性です。
特に変化が楽しい。

Stick-Stab

新聞紙にくるんだ状態でのカードスタブ(ナイフ)。
新聞紙に仕掛けをしておかなくても良いタイプの手順で、新聞紙に入れてから観客にしゃかしゃかしてもらえてステージ映えもする見せ方で素敵です。
狡い感じも味わえる手順になってます。

The Surfing Card Stab

ジョーカーをサーフィンみたいにスプレッドの上を滑らせ、観客のカードの隣に刺さるという技。
刺さるだけじゃなくひっくり返って向きも変わるというビジュアルがとても面白いです。
ちょっと安定さすのは難しいけど、カードの状態が良ければ確度は上がります。

The Secluded Card Rise

ビニール袋に入れた状態でのライジング。
密閉された中プラス、一度間違ったカードが上がってきて位置を変えずに当たりのカードが上がってくるのでマニア向けにも面白い感じです。
シンプルすぎる仕掛けを悟られない工夫が大変勉強になります。

Straight Up with a Twist

ライジングしたあとにカードが回転します。
文句なしに面白い。

Under a Tack

観客のカードが画鋲でテーブルの下に固定されます。
画鋲をあれする時に扱いやすくするための仕掛けで、壁とか天井にやるやつにも使えるもの。
画鋲というのは小さいしどうしても向きがコロコロするし不安定だと血出たり大変ですが、不規則性が全くない工夫がされていています。

Prematrix

カードを4枚置くとその下にコインが置かれてるというもの。
箱から出すところからはじめられ、がっしゃんがっしゃんカードを動かせるようになってて凄い。
普通にカードマジックするようにしか思えないので意外性あってとても良いですね。

Hangups

4枚のハンギングコイン。意外とノーギミック。
フックする手と動きが統一されてて見やすいのが良いですね。

Hole-Due-Chination

2枚のチャイニーズコインと紐で行う貫通現象。
3段階になっていて、後半に行くにつれフェアに見えるお手本のような手順です。
道具のセット的に他にもやりようは考えられそうだけど、重たくなりすぎないようにとてもよく考えられてるように思います。

No Fleshy Barrier

手の甲からコインが貫通するやつ。
小ネタだけど、かなりリアリティのある見せ方。
動きの無駄のなさは他の作品にも共通してるところで、小品ながららしさが出てます。

A Trick to Please the Pope

2枚のコインの両面をあらためてから、こすりあわせると間から1枚出現します。
コインの中で特に一推しのトリック。
クリーンに見えるあらためがとても良いです。

The Flaming Coin-Fold

コインフォールド。
手軽さは失われてるけど、確かにそうすればいいのかというやり方です。
手順によってはこの見せ方の方がしっくりくる場合もありそう。

Okito, Italian Style

オキトボックスの技法がめっちゃ解説されてます。
ここ読むだけで満足できると言っても良いぐらい非常に充実した内容。

Half-Buck Torture Cell

オキトボックスを使った水とコインが貫通する手品。
道具を活かした現象の面白さ、手法も構成も最高です。
最高。

Stick It to Them

観客の手と演者のおでこを使ったトランスポジション。
見た目も面白く、同様の手法を使うトランスポジションのもろもろの問題をうまいこと処理してます。
これもめっちゃ好き。

High Strung and Lapless

面白い仕掛けを使ったカンガルーコイン。
立って行えるものでとてもクリーンです。
特にラスト一枚が素晴らしいですね。
何かしらの仕掛けを使って連続する手順をやろうとするとそこにこだわりすぎて雑になるとこが出てきたりしますがこの処理は本当に上手い。

True Pencil through Bill

普通のえんぴつと借りたお札でやるビルスルー。
指でもみもみすると穴が消えます。
指定のあれで試してないけどたぶんまあまあ近くても行けるはず。
凄い。

Memorable Wonders

最後に2つ、メモラブルなワンダー手品が解説されてます。絶対に記憶に残る。
一つは車、一つはプールが必要なのですが、普通に有用なTipsもあるし超おもろいので是非。

ユニークな現象と賢い解決とかっこいい装丁、手品の本にこれ以上何を求めましょうかという一冊ですよ。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です