2001年にHermetic Pressから出たポールカリー全集。
ポールカリーについては説明不用だと思いますが、と書こうと思ったけど、この本まだの人には今一度説明したい。
ポールカリーは凄い。
Passport
最初のチャプターは技法集。
Turnover Changeはおさえておきたいですし、ダブルや他のスイッチも面白いのがあります。
The Time ChangeとThe Drawback Vanishがお気に入り。
Packing
カードマジックのチャプター。
Circle of Fire
2枚のコインに挟んだ紙をボウってやると選ばれたカードのインデックスが紙に転写されます。
何か変わったカードの示し方があって、あとはフォースするだけみたいなトリックはよっぽどの事じゃないと演じる気にならないんですが、これはよっぽどの事な名作。
Exchange Of Fire
紙に適当に点々をつけてもらって、バーン燃やすと点々が選んだカードの文字になるという現象。
Circle of Fire同様フラッシュペーパーの面白みを上手く活かした手品です。燃やした事によって何かが起きたという印象ではこちらの方が上でしょうか。おもろい。
Two-Card Routine
怒涛の2カードルーティン。トランスポジション、移動、リバース、コインシデンスなどなど色んなことが起こります。
技法の使い方の資料としても非常に有用で、特にスイッチ系は現象の見せ方の幅の広さが本当におもろいです。
ハイライトは最後の四方をクリップで止めた状態でカードが移動するところ。
Sure Thing
裏色違い、しかも片方は真ん中に穴が空いたカードで行うトランスポジション。
なんでそんなことをやろうと思ったのかというレベルで無理ゲー感ある現象を、演出含め上手いことやってます。
個人的お気に入りの一つ。凄い。
The Color-Changing Deck
カラーチェンジングデックの手順。
この手順の良いところは、最後に観客のカードの色が他のカードと同じ色になるところをじっくり見せられるところ。
なんかこう触られる前に変えますみたいな勢いでやっちゃいがちですけど、しっかり繋ぎがあって、その間にちゃんと裏の色が他と違うのだということを印象付けることが出来る手順です。
You’re a Liar
手軽に出来る嘘発見器的なもののアイデア。
観客が嘘をついたタイミングはわかりようがないわけだから、その時に反応すればこういうものでも良いよなーという感じです。
一発集中型で、高級な道具に見劣りしない面白ポテンシャルはあります。
The Truth-Telling Joker
観客が抜き出してポケットに入れたカードを当てます。
基礎的な原理を巧みに応用した一作。
実際やろうとすると時間かかるし観客の負担もあるけど、演じられるシチュエーションであればかなり説得力のあるプレゼンテーションではないかと。
Half Gone
デックバニッシュの手順。
ハンカチの中で消えるタイプで、演出によって厳し目の技法がかなりカバーされています。
Out of the Past
Thought Cards Across。
実際に選んでもらうカードは3枚で、中には普通に選んでもらうカードもあるんですが、1枚目は演者が選び、2枚目は観客が選び、3枚目はいつの間にか反対側のパケットに移動するという見せ方で、Thought Cards Acrossのおもろい部分がクライマックスになっていてとても良い手順です。
無理に全部をThoughtにせず、印象としてはThoughtと手を触れずに移動したところが残る。こういう構成の賢さもずば抜けていますね。
Phantasy Under Glass
透明のボールの中でのホーンテッドデック。
エンドグリーンになるあれの仕組みだけで読む価値あります。
セッティングのハンドリングも自然でとても良い。
Under Wraps
手にビニール袋を被せるホーンテッドデック。
変わった動きをします。
Pressto
赤デックで選んだカードが青デックに貫通する現象。
現象も使われてる技法も今風な感じですが41年考案らしい。
色違いのカードを使う技法で似たようなことをする手順は最近でもよくありますが、更に一工夫して説得力高めてるあたりは今読んでこそ感動できますね。
Teacher’s Pet
キーカードロケーションを観客に教える設定のサカートリック。
現象はカラーチェンジなのですが、意外性もあり、キーカードを説明してる体裁なので技法の負担も低くなってます。
演出によってカードはここにありますというのを強く印象付けられるので、カラーチェンジの見え方は結構変わった感じになるのではないかと。
Postcards
カード以外の手順。
Probability Zero
名刺の片側に1〜9の数字を書いてその面を伏せてバラバラにしてテーブルに置き、観客に順番に選んでいってもらい順番通りに裏側に番号を書く。ひっくり返して見ると1の裏には1、2の裏には2と完全に一致します。
いやーさすがにその仕掛けはちょっと、という所はさすがに直接使われるわけではなく、むしろ別の強い機能を果たしていて、めっちゃ良い手品でした。
これめっちゃ好き。
Matchmaker
ESPカードのルーティン。
原理も賢く、本格メンタルなセリフも解説されていてとても面白いです。
現象としては裏向きのESPカードに観客が指を置いてそれを読み取るというもので、最初に自由にシャッフルしてもらえるしクライマックスの派手で良い。
Out of This Phone Book
電話帳から自由に開かれたページの選んだカードの行を見てもらい、それを当てる手品。
日本人にはお馴染みのとあるアレを気合いで解決しています。
Padding
演者と観客はメモを持ち、誕生年や人生で大事なイベントがあった年などを書いて、最後に数字を合計すると一致するという手品。
ポールカリーって当たり前のことを当たり前じゃなく見せるセンスがあると思うんですけど、これはセリフとプレゼンテーションだけで上手いことやってます。
Payoff
観客に借りたお札のシリアルナンバーを読み取ります。
面白いギミックを使うのですが、何か使わなければならない道具と都合がある時のプレゼンテーションについての考え方の解説があり、大変勉強になりました。
A Turn in Time
変なパケットトリック。
現象としてはリバースなんですが、ブランクカードに観客と演者のサインを書くところから始まるのがおもしろく、そういう手順ならではの達成があって良いです。
2段目は輪ゴムで固定したパケットに変化を起こすもので、このハンドリングも最高。
Suitcases
Out of This World
演じたり改案を考えたりする人はこの後のBest of Possible WorldsとThe Charm of Luckと共にいっぺん読んで置いた方がいいです。どのようにして赤黒混ざってるデックに見せるか、どういう理由でガイドカードを交換するのか、あの動きはどういうタイミングでやるのか、などなど。
特にセルフ改案の2作は本人がどういうとこ気になってどういじってるのか読むの面白いです。
Another Stop!
スタックを使ったカード当て。
パーシャルでピークも不要、手続きもストップ言ってもらうだけかつフォース感も出ないので色々使い道はあるかなと。
Think of a Card
Think a Cardを当てます。
実際にはデックを使いますが、こういう演出を丁寧にやれば心を読んだように見せることが出来るという手順ではないでしょうか。
One Down
観客が1枚だけひっくり返したカードを当てる手品。
このあたりは似たような手法のものが多いけど、一つの手法で使い方もそんなに変わらないのに全く別の手品にするセンスはさすがでございます。
Touch
代表作の一つ。
裏向きで予言を書いたカードを伏せておき、観客には表向きで自由にカードを選んでもらいますが、予言が当たります。
すんごく自然に手法をカバーする手続きが入っていてマジ名作ですね。
Double Prediction
観客が選ぶカードと、そのカードを差し込んだ隣のカードを予言します。
ワンアヘッド、テクニック、大胆さのバランスがとても良く、超良い手品です。
Three Cards in the Future
観客に3つの山に分けてもらって、それぞれのボトムカードが予言されています。
こちらも変則的なワンアヘッドもので、後から書く必要がある件を変わった角度から解決していて面白いです。
3つのワンアヘッド系だと順繰りに書くのが基本ですが、これは最初に3枚とも書いてテーブルに置くところから始まります。
いやー、これは普通思いつかん。凄い。
Thoughts from Afar
電話越しの相手にカードを当ててもらうやつ。
自然な会話であれする方法が載ってます。
最近これをあれに応用できることを知ったのでタメになりました。
The Open Prediction
ポールカリーのこのバージョンてどれくらい知られてるんでしょうか。
このテーマ好きな人が積極的に評価するようなトリックではなさそうですが、トリックの筋的に許されるギリギリの手法みたいなの好き。
Out of Mind
後ろ向きの状態で観客に支持してAから10までのカードを順番に並べるトリック。
カードをシャッフルするところから始めるのですが、そこを殊更に強調する見せ方が面白い。
A Period of Darkness
カードを選んでもらってから黒板に観客の名前を書いてもらい、裏には演者のサインを書く。まずデックに指を置いてもらってから、電気を消してまたつけると観客のカードがひっくり返っていて、同じことをスレートでもやると、黒板もひっくり返る。
良い現象すぎる上に手法もめっちゃ好き。
Travel Tips
Tipsと言いつつ十分手順になってるようなアイデアも色々解説されています。
センターティアやタバコの手順まで色々。
ポールハリスのReflex(Whack Your Pack)の原型みたいなアイデアが1947年に考案されていたり、簡単な原理でちょっと凄く見えるカードの示し方など、あんまり書く人いないけど凄い人のこういうのは読みたい。
Shred Destinations
Stamp-It
1枚のカードの表に切手を貼り、シャッフルして観客に裏向きでカードを選んでもらうと、それが切手のカードであるという現象。
実際には裏面にも切手を貼って云々という手続きがあり、切手のカードを選ぶ現象であればそのような手続きは不要なのですが、ちょっとしたゲームのようなセリフ回しでその辺のもやもやはあんまり残らない感じになってます。
この辺り本当に上手い。
A Cur(r)i-ous Prediction
言わずと知れたOPです。
Mind Reading?
赤のデックに青のカードを1枚入れてシャッフルした後、観客に表向きの中から一枚覚えてもらうと、それが青いカードでしたという現象。
タイトルに?がついてる通りちょっとアレなナニなんですが、こういう事をやる時の段取りの丁寧さとか学ぶべきポイントはあるかなと。
Do as I Do
お互いにシャッフルしてトップカードが一致するというDo as I Do。
まあトップカードが一致するんだったらその手続きなによっていうのはあって、その手続きによってトップカードを示す一手間が増えてるのはちょっとどうかというのはあるんですが、まさかそんなことをしてるとは思わないようにはなっていてそこが魅力。
Next!
演者が「次のカードがあなたのカードです」とカードにメッセージを書き、そのカードを差し込むとメッセージ通りになります。
この現象だけやろうと思えばいくらでも方法はありそうですが、観客のカードをコントロールする必要がないのが肝。
Follow Me
カード一致のDo us I Do。
観客に背中の後ろで操作してもらうものですが、現象的にそういうことをするのが不自然でないのが良いですね。
The Perfect Miracle
観客が1枚だけカードを引っくり返して入れると、その隣に選ばれたカードがあります。
Magic Thrust系のトリックがいくつか解説されてますが、これが一番シンプルで好き。
Never in a Lifetime
OOTWみたいなやつだけど見せ方は違ってて、デックを半分こしてシャッフルしてシャッフルの結果お互いの赤と黒の配列が一致するという現象。
ちょっとこうなんでそういうことをするのかという目立つ部分があったりしますが、現象の見せ方としてはOOTWより好み。
Two Together
観客と演者で1枚ずつカードを覚えて同じ位置から出てくるsame position系のトリック。
コントロール不用のメンタルセレクションで行えるもので、手続きも2人で一枚ずつ覚える流れからすると不自然でもなく、これ系の現象の中ではかなり良いものだと思います。
Two For The Show
The Case of the Missing Hat
10枚のマジシャンのカードと10枚の帽子のカードがあり、数が変なことになる手品です。
ストーリーがしっかりした手品で、言葉遊び感もある手品なんですが、ちょっとした仕掛けとストーリーのわかりやすさで明らかに変な事が起きてるように見せており、センスの高さを感じる一作。
これだけで十分みたいなところからもう一歩先があるのが名人芸やなと。
On the Ropes
Linked
色違いの2本のロープのリンキング。
肩に垂らして後ろ向いて端っこを見せながらやるのが大変面白いです。個人的ロープマジック傑作の一つ。
次に解説されているMissing Linkと繋げられる手順なのも良いですね。
On and Off
輪っかにしたリボン、ナット、輪っかにしたリボンと連結させたものをアンリンクさせます。
ハンカチ被せて見えないようにするんですが、パワフル系のギミックの使い方としてこれぐらいがちょうど良いなって感じしますね。
リボンは色違いになっていて、ちょっとしたマジシャンズチョイスが楽しめるのも○
The Sliding Knot
切って結んだ結び目が観客の指定した好きな場所に移動します。
アシスタントを必要としますがめちゃくちゃに面白い仕掛け。
ロープマジックの現象としても理想的だと思う。
Restoration Supreme
The Sliding Knotと似たような仕掛けで復活をメインにしています。
Presentsに載ってるのは省略したので以前書いたエントリーをどうぞ。
Paul Curry Presents
溢れ出すクリエイティビティがすんごい密度で襲ってくる大変凄い一冊でした。
肝となるユニークな仕組みがあって、セリフと演出でその仕組みを活かせる舞台を作って、という極めて手品らしい手品を浴びるように接種できます。
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