by jun | 2019/08/21


2019年のマジックマーケットで発売されたKohei Imadaさんのカードマジック作品集。
前作のSCREW BALLがとても面白くて楽しみにしていたので1番最初に読みました。
5作品と小ぶりになっていますが、どれもインパクトが強くしっかり演じられる作品に仕上がっています。

Palm Off Plus

パームオフの後に選ばれたカードのフォーオブアカインドがコレクター状態で挟まるというオチが付きます。
クラシックプロットにフォーオブアカインド落ちをくっつけるのはなかなか難しくて、そのせいでフォースは要るしハンドリングの邪魔にもなるし、そもそも元の現象の良さを潰してしまう危険もあります。
ただ、パームオフはカード当てじゃないから4枚出てきても1枚の時の現象を邪魔するわけでもなく予定調和感も出ないし、綺麗にカードが消えてそこからまた違うカードが3枚も挟まってるというのは意外性もあるし筋も通しやすいです。

まずパームオフ部分のハンドリングが凝っていて、カードをあれするところから消すまでの流れがとても綺麗。
消すとこもカウントしてあっしゃーという流れでなく、ゆっくりと1枚ずつ確認する動きでとても気に入りました。

それと比べるとコレクター部分はやや重たいですが、オフビートの中で動線がしっかりしたハンドリングなので何気ない動きに見えるはずです。

Lazy Interchange

バラバラのポケットに入れた4枚のAと手に持った4枚のKが入れ替わるインターチェンジ現象。
ノーギミックノーエキストラノーパームノージャケット加工、とても低負担で達成しています。

1枚目の入れ替わりの微妙な怪しさで良い味を出してその後一気に変わる流れが素敵。
ここはフラッシュリスクもあるしキャラクターによっては手突っ込んでギャグにしてしまってもいいかもしれません。
サインもさせられますが、サインさせたらカードを確認させる部分も欲しくなるので、観客に好きな数字のフォーオブアカインドを言ってもらうぐらいが良さそう。確かサドウィッツのやつはそうなってたはず。
角度も強いしテーブル不要で垂直に見せられる現象なのでかなり重宝しそうな感じです。

スイッチ部はリセットや4-4のトランスポジションに慣れてる人からすると新しい感じではありませんが、その後の動きがポケットの中のカードとの入れ替わり現象に特化されていてめちゃくちゃ跳ねてます。
例えば既存のスイッチを使って箱に入れて入れ替わりましたーだったらもう一工夫欲しくなると思うのですよね。
ちょっと前にヨーグルトの水分をドライフルーツに吸わせてギリシャヨーグルトを作ってドライフルーツに水気が戻ってそれもめちゃくちゃ美味しいみたいなのが流行りましたが、これって話だけ聞くと乾かせたフルーツを元に戻しただけやんって思うじゃないですか。
ところがヨーグルトから出る水分ってホエイ的なものが入ってるしドライフルーツも一旦旨味が凝縮されたものなんで、元の果物より美味しくなるわけです。
この場合果物がトランスポジション、スイッチが水分、ホエイとドライフルーツ作る工程がプロットに最適化されたハンドリングということになります。

Back Off

パケットのオールバックから、両面裏になるカード当てへ。

解決法は好みが分かれるところだと思いますが、個人的には「カードの両面が裏になる」というような意味不明なことが起こる現象の場合は出来るだけクリーンに軽いハンドリングで見せたいので、特に両面裏ですよーから始まるバックオフやオールバックはレギュラー縛りにこだわらないです。
この作品は後半のカード当てが面白くて、さすがにこれをレギュラーでやろうとするとかなりカチカチになるんでこの手法は全然ありですね。
カード当てパートではシャッフルさせられるし、バックオフからの流れで選ばれたカードが両面裏になるという流れも綺麗。
そこからカードが元に戻るまで、ほぼプレゼンテーション通りのことが起こったようにしか見えないはずです。

Chimera Aces

ジャズエーセスとアルティメットエーセスとインビジブルパームエーセスとオーヘンリーの要素が入ってるアセンブリマニアが嬉ション垂れ流す手順。
見た目上は4枚の両面白いカードからどんどんエースが移動するというもので、全部に3枚乗っけないからすっきりしてるし、ブランク使うことで通常のアセンブリより「移動」した感があります。
雛型となったレギュラーでの手順も解説されてますが断然ブランク使う手順の方が良いです。

手順は無理に色々詰め込んだというより上手く接続させるために各原理を取り込んだ感じで、かなり綺麗にまとまってると思います。
特にブランクはオーヘンリー(キックバック)との相性良いっすね。
見た目のインパクトも強いし、この手順だとブランクが邪魔になってなくてとても賢いです。
成り立ちを読むとアセンブリに感じる問題意識も似てるところがあって作品の納得度も高く、手を動かすとかなりしっくりきました。

Gambler in The Dark

オーダーエンドのギャンブリング手順なのですが、演出が変わってて引き強いです。
序盤がギャグ調でオチで後からその部分も不思議だと感じる構成なので演じる難易度はちょっと高そうではありますが、「全部の順番をコントロールしました」という言葉に説得力は出しやすいです。
下手にスートプロダクションとかやると混ぜてなかっただけと思われやすそうですけど、この手順の場合はそういうことになりにくいのが利点。
割と普通にスキルも要る手順ではあるものの、随所に処理の賢さとかデックがバラバラになった感のサトルティが効いていてコストパフォーマンスはかなり高いです。

というわけで期待通り面白い本でした。
適度に捻くれつつプラスアルファのアイデアでちゃんと見せれる作品にしていて、メジャープロットばかりでも全く別の見え方になってます。
足し算方向の改案だと本当にただ足しましたイェーイ!みたいになりがちだと思うんですけど、コンセプトはそのままに演出に手入れる加減とかも絶妙で、ハンドリングも可能な限り不自然な動きを排除する工夫が見られて勉強になることめっちゃ多いです。
勉強しなくても普通に手順いいので、もしどっかで買えることあれば抑えておきましょう。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です