2013年にDark Art PressからリリースされたJared Kopfのカードマジック作品集。
2016年にrevised版が出て、マジックランドから小林洋介さんの翻訳による日本語版も出ています。
ついでに今は動画のDLCでこの本のトリックがほとんど発売されていて、Vanishing Incのバンドルで買うとこの本も動画も色々入ってるのでそれで買うのがおすすめです。
内容は技法とクラシックトリックのバリエーションで、非常に高度な事を要求されることもありますが、単にゴリ押しということはなく強いインパクトのために必要なことを無理なくやってるという感じがあります。
こういうテクニックを使いこなしてる人ならではの手順は創作論としてもおもろいし技法を習得するモチベーションにもなります。やっぱり単に知識として知ってるだけより実践レベルで出来ることが多い方が良い手順を作れる。
手順というのはそれぞれの箇所で目的があって効率よく辿り着くだけでなく、観客にどういう印象をもってもらいたいかというのを上手いこと伝える必要もあり、この人の手順はそこらへんのバランスが良い物ばっかりです。
Repelling Breathers
ブリーザークリンプを維持する方法について。
リフルシャッフルをやっちゃうと両面反らすことになるから弱くなっちゃうんですが、それでも観客にカットさせる手順ができる方法が解説されています。
ちょっと限定的な使い方で、例えば13枚目と39枚目のブリーザーをキープしておきたいみたいなことはできないです。
それでもスタックユーザーなら使わない手はないというtipsで、スタック手品ならアウトもいきやすいし観客カットの攻めた見せ方もできるんではないかと思います。
The Optical Run & Toss False Shuffle
オーバーハンドのフォールスの中でも最強クラスに自然に見えるやつです。
結構長い間角度が変わらずにランの動きを続けることができるので、オフビートの間でも混ぜたという印象は強いと思います。
やってることは以外とシンプルで解説もあっさり。
デルガウディオのやつとかダンフィッシュマンのやつに近いですかね。
ランの動きがあった方がいいとかどのタイミングでオプティカルするかとか好みに合わせようとすると沼ですが、この動きは覚えておくとバリエーション増えて自分の理想に近付くものです。
Riffled OOSOOM
Out of sight out of mindでしばしば問題視されるシャッフルパートをテーブルリフルで行えるようにしたもの。
手順としては原案通りにやるとしてというものなので、あくまであの状態に持っていくハンドリングという解説になってます。
まあこの人のテクならオーバーハンドでも自然にやるんでしょうけど、あのランの動きと質問パートが結びつくとどうしても絞り込んだだけ感が出てしまいますし、覚えさせた数枚を完全にバラバラの位置にしたように見せるリフルシャッフルの方がこのトリックには向いてると思います。
Shuffle Shift
テーブルで行うマルチプルシフト。
シフト系の技法はどんなに上手くやっても気配が出てしまうものですが、これは大きな動きでカバーするタイプのものなので誤魔化し切れる感じがあります。
また、カードを中に戻したビジュアルもはっきり見せられるので、例えばAを使ったトリックの後に4枚のAはもう使いません的に戻してコントロールとやってもバラバラなとこにある印象は残るんじゃないかと思います。
Far-Flung Collectors
観客の手の上で行うコレクター。
気合いと根性が必要なトリックですが、Aパケットとデックを接近させずに3枚のカードが移動したというのをこれ以上はっきり表現したものはあんまないんじゃないかと思います。
消失をはっきり見せて移動感を強調する構成も上手く、現象の強みが活きてて良いです。
観客の手の上でやらないでもまあまあのトリックな気もしますが、それだと途端にそこらへんのコレクター感になりそう。
An Open Display of Triumph
フォールスシャッフル的なことをせず、表裏を混ぜたことを良い感じに見せれるトライアンフ。
個人的に好きなトライアンフ5本の指に入るぐらい好き。
無茶なことしなくていいし全部の箇所でサトルティが完璧で超上手いこと出来てます。
E.G. Brown Revisited
BrownのThought Card Acrossは色んな人がチャレンジしておりますが、個人的にはこのバージョンがベストだと思っています。
仕掛けとテクニックと構成をフル活用した手順で、見た目的にも原案や多くの改案にあるスイッチ感がなく非常にクリーンに枚数が変化したことを示せます。
非常にクリーンに見せるには非常にクリーンに見えるように技法を行う必要があったりしますが、そこは手順的にストレスなく見せれる工夫があります。
あらためてこのプロット自体の面白さも味わえる傑作です。
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