by jun | 2019/10/16

1989年に発行されたジャスティンハイアムのレクチャーノートです。
現物は入手困難だと思いますが、Vanishing Incでジャスティンハイアムの本かDVDを買うとおまけでこの本のpdfファイルがついてきます。
内容は12種類のカードマジック手順で、カード当てとかはなく全て4Aを使った移動、変化、トランスポジションの現象ばかり。
意外なオチがついてるのも共通点で、手続き上どうしてもそこに残ってしまうというだけの話をツイストかかったように見せたりする手順も多く、上手く演じるのは難しいのですが考え方としてとても面白いです。
図も写真もなく、演出やセリフについての記述もほぼされておらず、どう不思議に見せるかというポイントも書いてなかったりするし、古い技法名がポンポン出てくるので読むの大変。

Prelude

4枚のKを取り出し、それがAに変わってまたKを出すという手順です。
ジャスティンハイアムは割と即興の演技を好む人ですが、これはセットが必要なオープナーになってます。
普通だとK取り出す→置く→Aを取り出そうとするけどまたKが出てくる→Kを見るとAになってる、みたいな流れが多くその方がひっくり返り感は出ますが、これはそこのツイストより再びKが出るところに工夫がされています。
まあより事態がややこしくなったとも取れるわけですけども、キックバックにありがちな何故それを裏向きに置きっぱなしにするのか問題はないし、変化の現象を見せたいというのなら綺麗な流れではないでしょうか。

Packet Vanish

Kの中にAを入れると消えていって、ポケットの中にAあるかなーと思ったらポケットの中からKが出てきてみたいなあれです。
現象も良いしこの手の現象の中では比較的低負担で出来ます。
まあ消していくところが長いといえば長いしどんどん怪しくなってはいくのは課題ではありますが、4-4ではこのあたりが限界な気もします。
似たような落ちでガスタフェローの”Homage to Homing”とかビルグッドウィンの”Slap”とか、1-4の方がシンプルで派手には見えると思います。
あとこれ、上のPreludeでAとK出した後に続けてやると良いよ的なことが書いてて、普通に考えたらキックバック的なオチが続くの辛いと思うのですが、上手く見せればコンセプチュアルになって良い感じになったりするのでしょうか。

Four in a Row

ハートのAと5枚の黒いカードを使って、消失と交換を繰り返し、黒いカードだと思われてたカードをめくると他の3枚のAになってます。
なかなか気持ちいい手順ですが、プレゼンテーションの難易度はかなり高そうです。
ジャズエーセス的なと言いましょうか、入れます消えます置きますみたいなことが続くんで、観客も入れた消えた置いたという感情になると思います。
ただ、ハートのAと黒いカードしか使わないことに説得力を持たせる構成にはなってるので意外と混乱はしないはず。

Routined Illusion

4枚のクイーンとジョーカーを使ったルーティン。
観客がジョーカーを差し込んだところからクイーンが出てきて、クイーンとジョーカーが消えたり出たりします。
残務処理が綺麗にはまった手順というか、あんまり無理矢理くっつけた感はないです。
ただ消失はちょっと弱い。他の手順でもあんまりこの人消失に興味ないんじゃないのと思うところがあって、軽く示してさっさと次に進みたいタイプのよう。
まあどうせちゃんと示せるわけじゃないので、そこにコストかけるなら次に繋がりやすいように手数少なく済ませるのも正解だとは思います。
ルーティンの中で変わったスイッチとかが使われるので、参考になるとこ多いです。

Before Your Time

よくあるアンビシャスカードに時間を巻き戻したという演出をつけるあれですが、アシンメトリカルトランスポジション的な要素もあってとても面白いです。
しっかり観客に状況を理解させ、どの時点に戻るのかも示せるので演出もハマってます。
この本の中では比較的簡単な部類でテーブルも不要なので演じやすそうです。

Surprise Ace Assembly

アセンブリーなんですが、マスターパケット的なものはなく、一つのパケットで全部の消失を示します。
消失に説得力を持たせることができればかなりローコストのオーヘンリー的なあれができる手順で、このしれっとした感じは結構気に入りました。
まあ上手くやらないと隠していただけと思われて全損するので、やはりもう少し手順上で消失感が欲しいですね。
Aは全部表向きで見せておけるのでその点は強いのですが。

Four Aces, One by One

1枚のXカードが何回も出てきてその度にAに変わるという手順です。
3つバージョンが解説されてますが、操作的にはシンプルなので技法を知ってれば如何様にもできると思います。
ただどうやっても核の部分に負担が来るので、そこは頑張るしかありません。
手順としては気持ちいいし流れも良いので楽しく技法を練習する手順に良いです。

Cannibal Collectors

カニバルした後にコレクターします。
これは一応ちょっとしたセリフと設定がついてて筋は通ってる感じですが、手順はなかなか力技であんまり綺麗に消えたり挟まったりしてる雰囲気はありません。
あとやっぱカニバルカードは口をパクパクさせるあれがないと寂しいですね。
あれ気持ち悪いけどないと寂しい、この感覚なんかに似てるなーと思ったらあれですね、小林尊さんがホットドッグ食べる時に水に突っ込まないとなんか始まった感じがしないのとだいたい同じ。

Illusive Aces

4枚のエースの上に表向きでカードを1枚置いて、そのカードが移動してきたり別のカードが4枚のエースに変わったりまた表向きで出てきたりとかなり入り組んだ手順です。
エース以外に登場するカードが2枚で3店方式っぽく変わるのでとにかくややこしく、それぞれの現象の折り込み方もかなり雑な印象。
1枚のカードが4枚のエースに変わるところとか要所では鮮やかなのですが、そこに至る前振りがただ何か現象起こしてるだけで、イマイチ決まった感がありません。
予感がないことで起こるインパクトはあるとは思いつつ、短時間で共有しにくい文脈になってるのは難しいですね。

Making a Come-Back

帰ってくる方のホーミングカードのバリエーションです。
帰ってくる場所が手元のパケットではなくデックのトップというところがミソで、そのおかげでもうひとオチつけられるようになってます。
ただ、そのせいで1手増えてるしいつのまにか帰ってきた感じはかなり弱くなってるのは改悪といえば改悪。
あとまあオチから逆算するとそういうことだったのねともなりやすいです。
見た目的には綺麗なオチでも、観客を腑に落ちさせすぎるとある種の不思議さや気持ち悪さはなくなってしまいます。
ホーミングカードにおけるその部分ってそんなに弱点でもないと思うので。

Multi-Change Routine

バラバラの3枚のカードを他のカードに重ねると、同じ数字の4オブアカインドに変化するというのを3回繰り返し、最後は全部Aになります。
カロルの”Reflections”の方が先ですが、似たような現象です。

手順は物凄く綺麗ですが怖い部分はありますね。
この本の中で分厚さをカバーしなきゃいけない手順が多いんですけど、ハイアムはどうやってるんでしょうか。
あとこれ最初に3枚置くんじゃなくて、デックのトップカードをその都度使うみたいな見せ方じゃダメですかね。
デックを持ったり置いたりしなければそんなにせわしなくないとは思いますが。

Visual X-Change Aces

4枚のカードが1枚ずつAに変化していきます。
使う技法は全部同じで、にゅるんと変化します。
なんかこう水にちょんとリトマス試験紙つけたら変わったみたいな、ちょっとのカバーで変わる奥ゆかしさが良いですね。
終わった後にゴミが残るのですが、再利用しやすいエコな設計になってます。

全体的に現象は魅力的で、カードの動きも無駄がなくすっきりしているように思います。
ただ、実際にこの動きをどう説明するかとか、現象をどこまで言葉にするかとか考えると難しいっすね。
ジャスティンハイアムさんは演技態度に関する本とかも出されてるんで、その辺は上手くこなすのでしょうけども。

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