by jun | 2020/10/02


2016年に出たDrew Backenstossのebook。
サブタイトルはTwo Innovative Approaches to the “Memorized” Deckということで、なんか新しいメモライズドデックの使い方的な話かと思って説明文とか読まずに買ったらスタック自体の話でした。説明文はちゃんと読んだ方が良い。


それでどういうスタックの話かというと、曰く、サイステビンスシステムとブレイクスルーシステムとレイジーマジシャンズメモライズドデックの良いとこ取りをしたような、要は前後のカードを特定しやすくバラバラに見えて計算で位置を割り出せるような並びです。
割り出しにそこそこ時間かかって良い手品なら丸ごと覚えなくても計算だけで演じられますし、もし一からスタックを覚えるにしても計算した経験から頭に染みつきやすくなるというような狙いもあるようです。
解説のスタイルとしても最初にこういう並びですよという写真があるわけじゃなく、仕組みの説明から入って「1枚ずつ順番に計算しながら組んでいく苦痛を乗り越えたら覚えてますよ」とか書いてます。完全にランダムなものやニューオーダーから操作して組むスタックでは使えない記憶法なので、なんでもいいから覚えたいという人には良いかもしんない。

まずBase Stack。
これは一見バラバラに見えるのですが”Trio”という概念さえ覚えれば計算で前後のカードや枚数目を特定できるようになってます。
近いところで言うと、あれはメモライズドを想定していませんがDaOrtiz Stackがあげられるでしょうか。DaOrtiz Stackはシステムを基に例外を作り出したようなもので、見る人が見ればシステムっぽいところが残ってますけどこのBase Stackの並びは本当にバラバラ。

Trioというのはマークやランクごとに決められた計算ルールみたいなもんで、それと計算順序に慣れれば暗算自体はそこまで大変でもないです。
カードから枚数目は簡単。数字からカードは逆をやればいいだけですがワンクッション入るので結構慣れが必要っぽい。隣のカードはシステムにしてはかなり面倒。ちなみにQuartettoはA〜Kまでできます。
Base Stackは完成系というわけではなく、思考プロセスを示すために収録したということみたいで後半で解説されてるスタックこそが本番。

んで、その”Panacea Stack”。
これはまた別の考え方で作られたスタックで、同じように計算で割り出せるようになってますがBase Stackと比較すると遥かに規則が覚えやすいです。
マークだけちょっとややこいけど絵面でなんとなく頭に入るし30分もあればそこそこ使えるようになります。
並びは見る人がスタックだと思って見れば気付かれるようなものではありますが、まあ普通に扱えば大丈夫。
また、このスタックはちょっといじれば別のスタックに変化させることができたりするので既に何かメモライズドデックを覚えてる人でも取り組む価値が高いです。
この本はこのスタックだから出来る手順というようなものは解説していませんが、マルローあたりを掘ればメモ書きぐらいは出てきそう。
そうでなくても同じスタックから別のことができるのはとても便利で、リターンさえできればルーティンの組み合わせが圧倒的に広がりますし、丸覚えしなくて良いので割と楽にオプションを増やせます。

この本で解説されてる手順は一つだけ。
“V.A.C.A.A.N.”というエニエニです。
片方が実はエニではないので好き嫌いは確実に別れるものですが、サクラを使わずにデックに触らなくていい手順になってます。
これ手法に合わせたプレゼンテーションがめっちゃ良くて、エニエニの変わった演出としてはかなりの出来。こういうやり方ならまだ発展のの余地あるなーと。
現象としてエニエニであることの意味も強いですし、職業マジシャンのプロモーションとしても機能するようになっていたり、前振りの小咄と現象を示すときのセリフが綺麗に繋がっていたり、強い手法をセリフでトゥーパーフェクトすぎないようにしてるバランスとかも素晴らしいです。
プロブレムとしてエニエニに取り組んでる人も一読の価値はあるかと思います。

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