by jun | 2018/06/27

不勉強にもこの本読むまで全く知りませんでしたが、ロンウィルソンさんはスコットランド出身のマジシャンで、マジックキャッスルにも出演し、ジェニングスもころっと騙したとかなんとかで、その手順が解説されてます。
元の本は87年に発行されたものでリチャードカウフマンが書いてます。

手順自体は何かの改案だったりするものが多く、練り込まれた台本で巧みにダーティワークをカバーするような作品が多いです。
動きとセリフによってミスディレクションを発生させるのがとても合理的で、プロット自体もちょっと変わったものが多いのでマニアもころっといかせることができるかもしれません。

使うものはカード、指輪、新聞紙、シルク、チョップカップ、ロープと幅広く、クロースアップからサロンまでカバーしています。
特に気になったものを中心にいきましょう。

ハイランドホップ

サインさせたカードで行う1枚のカードアクロスです。
赤いカードの中から一枚選んでもらってサインさせ、それが黒いカードの中に移動します。
即興で行えてサインカード1枚が移動するので非常にわかりやすく、直前まで確かにそこにカードがあったという説得力も高いですし、その時点で仕事して終了してるのでとてもクリーン。

手法的にも好きな感じのやつで、バラリノのあのサンドイッチに似てますが、カードアクロスっぷりはサンドイッチより赤黒のパケット間で行われた方が移動という部分がわかりやすい気がします。

あと、個人的名前がかっこいい手品ランキングの上位に入るマジックです。

この世の果てへの道

観客にシャッフルしてもらうタイプのアウトオブディスワールド。
混ぜさせるやり方はアウトオブディスワールド以外で使ってる人が多いですが、筋から外れることなく賢く使われています。
指示の出し方も計算されてて、混ぜたのに!混ぜたのに!感は強いです。

手法上、通常のアウトオブディスワールドみたいに終わるのは難しいので、間違えた数を予言するというオマケがついています。
ここに関してはどうかなと思うとこがあって、あの現象のあとに予言がくっついてもそれ以上盛り上げるのはちょっと難しそう。
ちょっと不自然でも完璧に揃えたいもんですが、それするとこの手順の良さは失われますし難しいあたりです。

メンフィスの奇跡

お客さんに表裏ぐちゃぐちゃに混ぜてもらって3枚のカードを抜き出してポケットに入れてもらいますが、そのカードを当ててしまいます。
いろんな意味で難易度高い作品で、演じる人はなかなかいなさそうなので逆にチャンス感あります。
こういう頭使いまくるやつを極めたら最強なんでしょうけど、あほなので技法とかより怪しく見せれる自信があります。

奇跡のミクロ・マクロ

ジョンハーマンのミクロマクロ。
元ネタはレギュラーデックから小さくなって元に戻るというものですが、ウィルソンバージョンはミニデックから始まりレギュラーデックに戻ります。
直前までミニデックでなんかやって、このミクロマクロに移行する方法が紹介されていて、ミニデックであることの説得力はマックスです。
個人的にもこっちのやり方の方が好きで、ギミックもギャフより見た目強くて簡単に作れるものでした。
スイッチまでの構成も見事で、これなら怖くありません。

ミニデックといえば最近新しいやつが出ましたが、あれはサイズがポーカーサイズの半分になってなくて結構微妙です。

囁くクイーン

テーブルの下でカードを抜いてもらいますが、それをクイーンが教えてくれるという演出の不思議カード当て。
マニア向けの方法も紹介されていて、松田さんの本ではそのやり方がメインで解説されていたからそっちが元ネタだと思ってましたが、普通は安全にやれば良いのですね。
唯一必要な仕事の部分は大胆かつ記憶に残りにくい方法で、図々しくてとても良いと思いました。

冷静に考えるとクイーンが囁いてくれるってなんやねんという話はありますが、そこの好みだけで、とても不思議なマジックだと思います。
他の良い解決法ありそうでないですし、まあベストなのではないでしょうか。

ただカードを見てください

見て覚えてもらっただけのカードを当てる方法です。
このマジックは100年以上前の本にも載ってるぐらいで、非常にダイレクトで本質的な手法を使いますが、アウトも含めて色々考えられています。

それでもまあまあ危険なので、最悪次の「消失するデック」で回避する方法も紹介されていました。

消失するデック

箱の中からデックが丸ごと消えます。
消えたことを示すのに箱をビリビリに破るので、毎回ギミック作成しなきゃいけません。

今だとシンリムのあれでええやんって気もしますが、安定性を求めるなら毎回作った方が良いかもしれません。
シンリムのあれもどうせ軽く作らなきゃいけませんし。

奇妙なチョップ・カップ

紙のコーヒーカップとショットグラスをつかったがっつりルーティン。
オチはもちろんお酒入ったショットグラスになり、出し方も丁寧に解説されてます。

チョップカップはシンプルな機構が醍醐味ではありますが、こういう複雑なルーティンもなかなかええものですね。

千里眼

ブレインウェーブデックっぽいやつです。
あんまり使わないのですが、ブレインウェーブデックよりこっちの方が良いと思いました。
見せ方の違い大事。

ホイの遺産

輪ゴムでとめたデックを客席に投げて、5人にカードを見て覚えてもらいますが全部当たります。
様々なシチュエーションで最大の盛り上げを引き出す演出と、サトルティの解説がメイン。
サロンでできるメンタル風手順で、サトルティも大人数であることを活かしたものなのでこれは覚えておきたいです。

リングマジック

リングフライトと観客に借りた3本の指輪が繋がる手順が解説されてます。

リングフライトはギミックだけに頼らず色んなところに配慮された感じに仕上がってます。
要はちょこちょこ移動させることで音を減らすのですが、ギャグを絡めつつうまく負担を分散させ説得力も消えないウィルソンテイスト。
ちゃんとした演じ方知らなかったのでとても勉強になりました。

指輪が繋がるやつはあれを使いますがサクラは不要。
かなり賢く、観客のリング同士が繋がっていきます。
例のあれは使い道謎すぎたのでちょっとやってみたいです。
ただクロースアップでは見せれないやり方で、指輪という小さいもの使う手品なのでシチュエーションが限定的。

ウィルソンがやったことがあるサクラの使い方も必読です。

ゆっくり行う「破っても元通りになる新聞 」

こんな感じです。

これめっちゃよくないですかね。
改めとか完璧です。
テンヨーが出してる新聞復活ギミックも良いですが、改めの部分はこちらの方が優れてんじゃないでしょうか。
当然これも工作が必要ですが、作り方は丁寧に解説されていて、道具も別に要らないし機構さえ覚えれば簡単に作れるようになります。

個人的ベストをあげようと思うと、ハイランドホップ、新聞の復活あたりですが、やりたいやつとなるとここに挙げたほとんどの手順をやってみたいです。
負担的にはかなり軽減されてますし、怖い部分を怖くなくしてくれるぐらいカッチリした解説がされてるのでどれも演じてみたくなります。

東京堂出版から出てる手品本は自分が生まれた80年代後半に原著が出版されたものが多く、全く古びない感じに毎度圧倒されますし、ただひたすらおじさんになってしまったのが本当に悲しくなりますね。

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