「裏から見てわかるんでしょ」って言われる割に手品好きでマークドデック使う人は少ないです。
マークドデックを使わなくてもカードを当てられる手段は山のようにあること、マークドデックを使った良い手順があまりないこと、バレるのが怖いこと、理由は様々だと思いますが、なんとなくマークドを使うことに抵抗を感じてる人は多いのではないでしょうか。
マークドデック使うにしても使わないにしてもTransparency読んでから判断した方がいいです。
ぶっちゃけ読んだの1年ぐらい前で未だにこの本に載ってる手順やったことないのですが、ここぞという時にはやってみたいものがいくつかありました。
ここぞという場面がそんなになく、ここぞという場面以外で苦労して作ったマークドデックを消耗していきたくないって感じで、マークドデックを使うことへの抵抗はなく、手品は不思議に見えればなんでもいいと思っていて、むしろ過剰なスライト主義の押し付けに抵抗あるぐらいです。
よく「あの手品をギミックなしでやってみました!」的な作品がありますが、だいたいワンアクション以上多かったり不自然な手つきになったりしがちで、レギュラー縛りって遊びとしてはとても楽しいのですけど、不思議さが減ってしまうんだったら手品としてはちょっとあれです。
もちろんレギュラーでできると演じる機会も増えますし、道具を改めることができるという大きなメリットもあり、良いのができたら自己満足もできるのですが、ギミック使ってる人を否定するような風潮を感じたりすることもあって、別にそれぞれ好きなようにやってダイバーシティ化が進めばいいと思います。
訳者あとがきでも手品好きがマークドデックをどう思ってるかという話が書かれていて、そんな状況でこんな本を出してくれた東京堂出版と日本一信頼できる手品本翻訳者の富山達也さんにはまじ感謝です。
マークドデックはレギュラーでできる手品をもっと不思議にしてくれます。
「一般の人にはこれで十分」みたいな話もありますが、マークドデックは基本的に手順がシンプルになりますし、演者がカードの表を見るのを省略できることが多いので誰が見ても不思議さがアップします。
この本にも無理矢理マークド使った感な手順はあるものの、それでも表を一切見ない手順は魅力的です。
Chapter 1
Concept of the Boris Wild Marked Deck
ボリスワイルドマークドデックの解説パートです。
現在はバイシクルライダーバックのものが販売されておらずメイデンバック版しか売られてないようで、これは非常に残念であります。
マニアはもちろん、一般の人でもバイシクルのトランプを見慣れてる人もいるでしょうし、微妙にバイシクルとデザインが違うものが出てきたらその時点であってなるじゃないですか。
ライダーバックでやりたい場合は自作する必要があり、作り方も解説されてます。
普通に売ってるもので作れますし、オリジナルのボリスワイルドマークドデックが気に入らない場合は自分好みに変えれるので頑張りましょう。
たぶん多くの人が気に入らないって言う部分は絵札のJ、Q、Kのマークで、これはさすがにちょっとと思います。知ってて見るからというのを抜きにしてもこれはやばいです。
ボリスワイルドマークドデックは読みやすさを追求しているので仕方ないのですが、ちょっと変えても別に読めるのでそこは変えました。
読みやすさが売りなだけあって速攻でなんのカードかわかります。
特定のカードを探すのも、さーっとデックをスプレッドすれば表見るのと同じ感覚で探せます。
バレにくさに関してはなんとも言えませんが、ボリスワイルドさん自身がバレたことないって言うぐらいなので大丈夫でしょう。
そもそもここに載ってる手順はカードの裏を直接的に見て当てるだけみたいなことがほとんどないので、調べさせてって言われないのだと思います。
読みやすさとバレにくさのバランスはかなり良いものの、個人的にはもうちょいバレにくい方向に振りたいので、マークも少し小さく作りました。
視力がいいことだけが取り柄の人間なので多少小さくしても読みやすさは失われません。
バイシクル以外でもごちゃごちゃした模様のデックなら割となんでもいけるかなと思いましたが意外と条件に合うデックってないですね。
ホイルもタリホーもちょっと厳しいです。
Chapter 2
Miracles With a Shuffled Deck
ノーセットでできる即席手順のパートです。
このパートは割とマークドを直接的に使うものもありますが、演出でカバーしてるみたいなのが多いです。
カード当てばっかりじゃないのが良いですね。
いくつか抜粋で。
The Ideal Effect
演者は後ろ向いた状態でカード引いてもらって好きなとこに戻してもらって混ぜてもらってから当てちゃうっていう不可能設定。
ちょっとひねりを加えるだけでマークド感なくなるという良い例です。
Peek Sandwich
サンドイッチカードです。
お客さんに好きなとこに2枚のカードを入れてもらってそこに挟まるという綺麗な手順。
これをコントロールもなしで表見ずにできるのはかなり良いです。
Intuitions
演者がカードを言ってお客さんに引いてもらうというのを3人にやると、その通りのカードを引いてしまうという現象をフォースなしで。
後半の処理を自分好みにすれば結構面白そうではありますが、選んでもらうカードをフォーエースとかにできないので、なんでそのカードなんって感じは残りそう。
Out of this Deck
Out of This World現象を本当にお客さんにやってもらえます。
これはですね、マークドデック以上に抵抗を感じる人が多いであるものを使うのですが、不思議さは格別です。
でもお客さんの手の中で起きる現象ってそれやってる人が一番驚いてもらわないと嫌なので、そうならない時点でかなりリアリティは削がれる気はします。
やってみたい気持ちもあるけど怖い。
Impossible Divination
後ろ向きで引いてもらって戻してもらって混ぜてもらって当てれるやつです。
これはめちゃくちゃ良いですし、レギュラーデックでやる場合にも応用できます。
たまに事故も発生するのでマークド使うならこのやり方じゃなくても良い気はしますが、アウトの場合も一つ現象足されるような演出でとても好み。
Invisible… But Marked!
インビジブルデック現象をやります。
これはさすがにインビジブルデック使えばいいのではという気がします。
表を見ないのはいいですが、やっぱり箱から出してすぐ広げるというのがインビジブルデックの良さだと思いますし、なんならこの本にインビジブルデックを必要とする手順があったりして一体どういう考えなのかがよくわかりませんでした。
Chapter 3
Miracles with a Stacked Deck
ボリスワイルドマークドデックとスタックの組み合わせでちょっと派手な現象を起こします。
デック二つ使うものもあったり色んな意味で重たさはあるのですが、どうせマークド使うならここまでやりたいものです。
どちらかというと手法より演出が参考になります。
The Gravity Shuffle
スタックを崩さないフォールスシャッフルです。
テーブル使わずにできて、そこまでフラリッシュ的に見えないので結構良いです。
カットだけじゃなくなんとなく混ぜた感も出てます。
マークドデック使うマジックはメンタルチックなものも多いので使い所は難しいかもしれませんが。
Mental Picture
マークドを疑われないカード当て。
基本的な使い方ですが、ボリスワイルド マークドデックパワーを使うともっと不思議に見えます。
Runaway
観客が選んだカードが何枚目かを当てます。
これはマークドよりガチエスティメーションを疑われそうで演じ方が難しいです。
それならそれでいいのかもしれませんが、マークドって不思議さを強調するための道具だと思うので器用にやったなと思う人が出かねない見せ方はちょっと厳しい感じあります。
Double Personality
デックからカードを一枚選んでもらって演者に見えないようにひっくり返してもらいます。
色の違うデックを取り出し、広げていくと一枚だけ裏向きで、観客がひっくり返したカードと一致してます。
この本の中で一番よくわからない手順でした。
確かにマークドで何のカードかわかってもすぐにはいこれですって言うのもつまらんと思いますが、別のギミックデックを使ってまでやる必要がよくわかりません。
ギミックの使い方もそれは本来の使い方をした方が不思議なのではって感じです。
Chapter 4
Miracles with the Boris Wild Memorized Deck
ボリスワイルドメモライズデックとボリスワイルドマークドデックを組み合わせて最強のボリスワイルドになります。
Concept of the Boris Wild Memorized Deck
ボリスワイルドメモライズデックの解説。
あんまり混ざってないように見える並びですが、計算は楽な方だと思います。
メモライズならなんでもいいのでネモニカとか他覚えてる人が覚えるメリットはなさそう。
Coincidence
色違いのデックを持っててもらって、紙に予言の数字を書きます。
デックからフリーチョイスで1枚選んでもらって、カードの名前を紙に書いてもらいます。
色違いのデックを見ると予言の数字の枚数目からそのカードが出てきます。
手法的にはとても好みですが、紙に書かせる理由がちょっと薄いかなとは思います。
マークドデックを予言風に使えるのは面白いです。
Miracle!
動画。
エニエニ現象で、デックを二つ使う上に片方がエニーじゃないのでちょっとあれですが、選ばせる前に表を見ないのは強いです。
Pure Telepathy
これです。
売りネタで出されてるだけあってさすがに良いです。
演出にも無駄がないですし、カードを特定する手がかりは全くなさそう。
マークドデックだと知って見ても不思議に感じます。
たぶんここが到達点。
Chapter 5
Miracles with a Touch of Improvisation
観客にカードを減らしていってもらって残った一枚が予言と一致するという現象のマークドバージョンの解説と、マークドは他にも色々使い道あるよ!という章。
こんな時便利あんな時にも使えるってことがばーっと書いてるのでここから読み始めるのもいいかもしれません。
色々ありますが、リカバリーの時に表見ずに済むってのはかなり強力ですよね。
あとラッキーでガチ奇跡を起こせる話みたいなのも面白かったです。
というわけで読み終わる頃にはボリスワイルドマークドデックにがっつり浸かれます。
ほとんど全ての手順がボリスワイルドマークドデックでしか演じれないか、その他のマークドデックで演じると効果が半分以下になるようなトリックで構成されていて感心しました。
ボリスワイルドってマークドデック以外にも面白いことできる人なので、もう少し色んなカードマジックを載せた本とかにもなり得たかもしれませんが、読み終わった後はもっとボリスワイルドマークドデックの話をよこせってテンションになります。
個人的ベストはImpossible Divination。
この手順だけじゃないですが、レギュラーデックで演じる際にも参考になる演出や観客のコントロールなど読み所がたくさんありました。
カード当てるのに表見てはいこれってやるのはもったいないですし、盛り上がるし不思議な設定の作り込みの楽しさみたいなものもこの本で味わえます。
日本一信用できる手品本翻訳者の富山達也さんが訳を担当したカードカレッジライトもそういうとこがおもろい本でした。
レギュラーデックにも活かせる手法や考え方を学べて満足しちゃったというのも、この本を読んだのにマークドデック使ってない理由の一つです。
あとやっぱりカード当てにしか使えないという部分は割とはっきりしたと思います。
カード当て以外の現象がたくさんあるので期待したものの、個人的に気にいるものはありませんでした。
そこらへんに転がってるデックが全部ボリスワイルドマークドデックなら常用するのですけど、作るのめんどくさいというのはかなりのマイナス点です。
やりたいのもあるので面倒くさがりな自分の性格を呪うばかりですが、重い腰が上がりきらなかったというのも正直なところだったりします。
Pure Telepathyは最高です。
良くも悪くもマークドデックの頂点を見たような気がします。
ただ、この本に載ってることが全てではないというのも読んでるうちにわかってきまして、数々のアイデアを読んでるとじゃああれにも使えるやんってのが結構思いつきました。
もしかしたらいつもやってるあの手品がもっと強くなるかもって思える本とかギミックってあんまないと思うので、カードマジック好きなら結構楽しめるんじゃないでしょうか。
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