1978年に出版された本で、今はL&Lの電子版が出てます。お値段なんと5.95ドル。
6つの手順と技法1つ、おまけでコインのアイデアなんかも解説されていてかなりお得な感じになってます。
手順は今読んでも変わったものが多く、どれもインパクトがあり実践的で、ちゃんと練習しさえすればいけそうな感じがするぐらいの難易度もちょうど良いです。
Torn and Restored Card
4つ破ったカードが復活します。
ワグナーのバランス感覚がよくわかる作品で、復活は完璧ではないけど4つに破ったところの説得力は強く、そこまで無茶もありません。
一個ずつくっつけていけるタイプでもありませんがカードはフリーチョイスでいけます。
サインをさせないので破片を一つ残して同一カードであることを示す必要があり、完全復活でないのも筋が通る感じです。
「最後のそれはくっつかないの?」を防ぐためにはそれなりの盛り上げ力やテンポ感は必要になりそう。
処理のとこも好き嫌い別れるあたりでしょうけども、古典的ながら間違いないもので、破れるとこを綺麗に見せれる分違和感は少ないかと思います。
Matrix Torn and Restored Card
コインマトリックスを4つに破ったカードで行い、その後カードが復活します。
が、これも完全復活ではなく破片一つ残した形での復活です。
これはどうでしょう。どうなんでしょう。
マトリックスパートで4つ集まるカタルシスがある分、不完全な復活って残尿感がやばいです。
どぐされたマニアじゃなくても引っかかりを覚えるんじゃないでしょうか。
確かに破るとこからスタートしてマトリックスからの復活という流れをノイズなく見せれるハンドリングになっていて、この大筋を壊さないように完全復活にするのは無理で、このプロットの完成度自体は高いと思います。
プロットのひねり方としても申し分なく、コンセプトはめっちゃおもろいんですが…
たぶんワグナーさん自身は現場でなんの問題もなく使ってたネタなのでしょうけども、明らかにモヤるネタなのは確かなので演出面についてもう少し詳しく書いて欲しかった感じはあります。
まあ惜しいです。
カードをカードで隠すことによる優位性を活かしてなんとかなんないもんですかね。
Spectral Silk
デックをハンカチでくるむとハンカチがふわっと浮いて選んだカードが飛び出してきます。
これはマジ最高です。
何か面白い動きをするギミックがあった時に、なんとなくカードマジックとくっつけようとして素材本来の味は薄まるみたいなことは結構あると思いますが、これはそういうところに陥らず道具の解釈としても正しく、カードマジック化して現象がぼやけるようなことにもなっていません。
あれはあれ単体で使っても謎の余韻を残すことができて良いものなのですが、バシっと何かが決まった感じがする方が使いやすさはあります。
Mentally by Two
セミオートマティックなメンタル風カード当て。
思い浮かべてもらったカードと、見て覚えただけのカードを当てます。
似たような原理を使うカード当てはいかに数理的な原理臭さを消せるかが鍵になってきますが、カードを2枚にすることで上手く消臭効果を発揮しています。
最初にカードを取り除いてもらう意味が謎なので数字を囁く代わりにその枚数を2番目の観客に確認してもらうとかの方が良い気もしました。
質問したくない場合は候補をセットして聞いてから瞬時に出すとかでも悪くないかと思います。
ぶっちゃけ前読んだ時は飛ばしてたんですが最近これ系のにはまってて色々漁ってたところだったのでハマりました。
1つのアクションで2つのことを特定できるので、似たやつ知ってる人でも不思議なはず。
J .C.’s Color Changing Deck Routine
カラーチェンジングデック。
ビジュアルに変化するパターンではなく、2枚のカードを選んでもらってトライアンフ的なことをしつつ表向きの中で2枚の裏向きのカードが出現、他のカードを見ると色違いという感じです。
途中で何かを処理したりすることもなく速攻で全部調べてもらえるのが良いところで、2枚選んでもらうあたりに好みは別れましょうけども、これぐらいインパクトある現象だとすぐに調べてもらえるってのは小さくないメリットだったりもします。
変化前の色を強調するところにもちょっとした工夫があり、ビジュアル変化させないのもこのルーティンには合ってて良いです。
フラッシュに極端に気を使う必要もないのも良いのですが、カードを選ばせる方法に制限が出るパターンではあります。
元のDingle’s Deceptionに載ってる手順は知らんのですけど、デレックディングル カードマジックで解説されてる2つの手順と比べると遥かに演じやすくなっていて、そこまで説得力の部分を犠牲にしてないのも良いです。
Ace-Two-Three- Four
黒のA〜4の4枚でやるアンビシャスカードで4が赤になるやつ。
原理的に進んでいきますが、途中でえっていう技法が使われてたりしておもろかったです。
なんか簡単て書いてたけど難しくないですかこれ。
ボトムにないカードをボトムにあるように見せるための技法で極めたら捗りそうではあります。
この手順の流れでも強力なもので、マニア向けのマンネリ防止策に留まらないディセプティブさを発揮できるものです。
一番地味な手順で一番尖ったところが出てるの良いですね。
Pop-out Revelation 46
テーブルリフル中にカードが1枚飛び出すプロダクション。
リフルの途中なので演者の意思とは関係なく出てきちゃいましたー感があります。
テーブルワークでのプロダクションて演者が頑張って出す型のものが多くて、連続プロダクションする時なんかは出したり出てきたりが変に混ざってたりするとしっくり来なかったりしますし、こういうのも覚えておくと良いのでしょうね。
Bonus Section
おまけの3つ。
“Charisma Change”は手の中を通過させると変化するスペルバウンドで、その他応用例も紹介されてます。
両替的な使い方がええかもです。
ノーギミックのSilver and Copper Transpositionに使う演出も紹介されていて、手の中で変わるということを活かせる手品の中だと確かに効果的かと思いました。
ビジュアルに変わりすぎてもなーみたいな時には重宝しそうです。
“Wagnet Clink Pass”はチャリン言わせるやつのCP使わないバージョンで、”Triple Cut For Triumph”はトライアンフで例の状態になってからの例のあれをひっくり返す作業の話。
トライアンフのはちょっといい感じになってる気もするけど何かを戻してる感が出てるような気もしてなんとも言えん何かです。
なんか全面的に支持って感じではないのですが、ブラッシュアップの方向性はかなり好みで、そこ気になるねーみたいなとこは大体解消されています。
まああっちを立てればこっちが立たずになるのが手品ですけど、立てる場所の好み合う人に出会えるのは良いものですね。
ワグナーさんはThe Commercial MagicってのもL&Lの電子版にあってそっちもおすすめです。輪ゴムをカードにひっかけてパーンやるやつ解説されてます。
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