ジョンラッカーバーマーが80種類のカウントを解説している本です。原著は2004年に発売されたもので元のタイトルはCOUNTHESOURUS。
この本全く買うつもりなかったんですが、昔Amazonでデレック・ディングルカードマジックを注文した時にいつのまにかショッピングカートにシークレットアディションされていて自分のミスだし返品するのもあれだしと思ってなんとなく手元に置いてちらちら読んでました。
原著の解説は写真のようですが日本語版はTONおのさかさんによるイラストに変わっています。
これがかなりわかりやすくて、1枚の図に手の動きとカードの位置関係が一緒に書かれているのでたぶん写真より理解しやすいです。
80種類のカウントはアルファベット順に書かれていて、これはやや不便だったりします。
カウントと言っても枚数を誤魔化すのと見えちゃいけないものを隠すものがあるので、用途別や派生技法は並べて書いて欲しかったですね。
元々いつでも参照できる事典的な目的で書かれた本のようですが、手品の場合は目的によって調べることの方が多いと思いますし、ルーティン内で動きを統一したい場合にはグリップごとに分かれてた方が調べやすい感あります。
基本的に技法のみの解説で、それを使ったトリックは書かれていません。
本の最後に練習用の「ハイパーツイスト」という、裏の色も表も変わる手順が解説されていて、これはデックからカードを抜き出して演じることができるタイプのパケットトリックです。
あとレナートグリーンのMIRROR COUNTが載ってて、これはそのまま現象になります。
20枚の中から1枚抜いてもらってそのカードだけ赤で他は全部黒みたいな現象。
リズムカウントみたいな形ですがカードの枚数増えてることで非常に説得力のあるものです。
バーノンのPINCH GRIPのとこではツイスティングジエーセスにおける2枚をあれする動きが2種解説されています。
どちらもスペードのエース!!って言いながら手首くねらせなくていい方法で、2つ目のやつはリズミカルで見た目の矛盾もなくていい感じ。
カウントの歴史的な序文をマックスメイヴィンが書いてるのですが、エルムズレイカウントをピンチグリップでやりだしたのはバーノンでエルムズレイは別の持ち方をしていたらしいです。
さらにエルムズレイカウントに関する衝撃の事実もさらっと書かれています。
歴史的には1958年〜1960年の間にハーマンカウントとエルムズレイカウント、ツイスティングエースが発表されたようなので、今風のパケットトリックは60年前が起源の模様。
そこから色んなカウント技法が生み出されこんなマニアックな本が出来上がったわけです。
あんまりパケットトリックに詳しくないので今読んでも知らんのめっちゃありました。
全部同じカードに見せる系だと、3枚のカードを同じに見せるマルローのNEW QUICK THREE-WAYあたりが渋くて良かったです。
フラストレーションカウントより全部のカードの位置を示せるのでちょっとだけ説得力上がってます。
マルローものはMARLO’S FLUSHTRATION COUNTというのも解説されていて、ビドルグリップに抵抗ある人にはオススメです。
リズムカウント系だと、FINGERTIP RHYTHMが普通にリズムカウントするより手の動きが好み。
オイルアンドウォーターとかでさらっとやると良さそうです。
JACK’S RHYTHM COUNTは絵札限定ですが、視覚的により説得力を増す感じになってます。
カウントは全般にテンポだけで持っていく感じがあるので、ビジュアルでも錯覚させると強いですね。
枚数を誤魔化す系ではテーブルに置きながら増やすCOPDIDDLE COUNTが気に入りました。
やはり手の中でくるくる回すだけだと誤魔化した感出ますし、数えてますって感じはテーブルに置いていく方が出ます。
カードアクロスに使えそうなのは何枚でも好きなように減らせるHIDE-OUT COUNTで、これは手の中でやりますが1枚ずつカードをひっくり返すことで枚数を強調でき、枚数調整も簡単で覚えやすいです。
比率的には見えちゃいけないカードを隠すものが多く、エルムズレイカウントやジョーダンカウントはもちろん、佐藤清さんの影響で人気のTOWNSENT ELMSLEY COUNTも解説されています。
これは非常に便利な技法で、表も裏も示しながらどっちの都合悪いカードも隠すことができます。
見た目はややアクロバティックなので使い所や回数には制限出てくると思いますが本当に便利。
これが特に有用なのって裏の色にも注目してほしいってことを観客と共有できてる時で、あんまり最初の改めで使うと変に見えたりすることが多いです。
さりげなくなく裏の色を意識させる方法だとBROKEN-UP ELMSLEY COUNTあたりがいいのかと思いますが、まあ普通にデックからカード抜いて裏は特に改めず、みたいな使い方がすっきりしそうです。あとは色違いでやるリセットとかでしょうか。
複数のダブルブランクの中の表を隠せるKOSKY COUNT、TAKAGI TURNOVER COUNTあたりはメッセージカードにちょうど良いです。
ブランクカードの場合はパケットケースから出しても不自然×不自然で逆に不自然さ減ると思いますし、メッセージが出る系はプレゼントにも予言にも使えます。
このあたりの隠す系カウントは一通り手を動かしてみるとOPEC COUNTの異常性がよくわかりますね。
そもそもピンチグリップでくるくるするのもギリですし、OPEC COUNTは見た目的にイロジカルな部分もあって本当に都合だけの技法だと思います。
技法ってやっぱ口実が大事だと思うんですけど、すげえデートに誘うのが下手なおじさんみたいな目的先走りっぷりがやばいです。
その他、いわゆるカウントではありませんがカードを隠すASCANIO SPREAD、BUCKLE COUNT、D’AMICO SPREADあたりの解説もあります。
他にも1枚だけ裏向きのカードを表向きにを戻しながらカウントするCLEAN-UP SISPLAY MOVEや、デックを使った4枚のスイッチFIFTH PEELなどの技法も載ってました。
全てに共通するのは「普通に広げて見せろや」ってとこで、それを言い出すとお終いですがその見せ方をする理屈みたいなもんは考える必要があります。
便利だからパズル的に組み込まれがちなカウント技法ですけども、うまく使われてる手順は何がよくてダメなものはなんでダメなのか考えるとうまく取り入れることができそうです。
エルムズレイカウントだと、ツイスティングジエーセスは1枚ずつ変化するから1枚ずつ見せるのがそこまでおかしくないです。裏向きスタートかつオチのスペードまではずっと同じ動きなのも大きいかもしれません。
逆にMaxi Twistの原案なんかはエルムズレイカウントしたりしなかったりでかなり違和感があります。
4枚のエースがありますつって表向きにカウントしたりしてスタートするのはおかしいけど、デックから4枚出して軽く改めるならセーフとか。
個人的にエルムズレイカウント使うので好きなのはヘルダーギマレスの4 FOR FOURなんですが、あれは前後の動きに一連の流れがありますしカウント後のディスプレイ、その後の処理まで本当に素敵です。
ああいうの見ると本当技法は使い方次第だなって思いますね。
エルムズレイカウントの場合はなんとなく4枚であることがはっきりしてるものに良いのが多い気がします。
嘘をつく箇所が減って、現象がわかりやすくなるからってのがあるでしょうか。
デビッドウィリアムソンのあれとかは例外ですが、あれは増えることが現象でそこのみに現象を絞っていることや途中リアル4枚なのが大きいかと思います。
あと、全ての動きが統一されてなくてもおかしくないものもあります。
例えばリセットだとA→Kの変化とK→Aの変化で別の見せ方をしますが、あれは1枚ずつ変化したのと全部いっぺんに変わったという別の現象というのがはっきりしてるのでそこまで違和感ありません。
オイルアンドウォーターとかでもテーブルに置いてるカードを示すのと手に持ってるカードを示すのに違いがあっても変じゃないですし、カウントの見た目が違う時はほかに観客にもはっきりした相違点があると良さそうです。
あと当たり前ですがセリフはやっぱり大事ですよね。
シチュエーションによって異なるのでこの本でもさすがにあまり踏み込んでませんし、ちゃんと考えないといけません。
表向き1枚隠してる時に「全部裏向きです」は「普通に広げて見せろや」ってなりますし、枚数誤魔化す時に「1枚2枚3枚4枚」も「普通に広げて見せろや」ってなります。
あとビドルトリックとかで明らかに5枚デックから取ったのに取ってからまた「1枚2枚3枚4枚5枚」とかも考えものですね。デックから取る時は枚数じゃなくカードの表に言及して、取ってから数えるんならまだわかるのですが。
なんにしても「普通に広げて見せろや」って思われたら負けの戦だということは意識して使いたいものですね。
カウントだけを大量に浴びるとそれぞれの技法の不自然な動きに気付けて色々考えるきっかけになるのでおすすめです。
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