マゴミゲことミゲルプーガさんのDVD4巻組。
2000年FISMのクロースアップ部門で2位、2003年にはカードマジック部門で1位になってる人で、その演技の解説も含まれます。
EMCのシリーズの中では地味な方で、プロットは古典的でオリジナルな部分もちょっとしたことだったりしますが、それだけにその細部が刺さる人には刺さるはずです。
後半のディスクではギミックカードを使ったマジックが解説されていて、レギュラーでは不可能なフェアさを達成していてどちらかというと見所はそっちにあります。
演技は全体的にコメディ調で、あまり緊迫感とか緩急がなく、結構インパクトある現象が起こる場面でもおちゃらけていてもったいないなと思わんでもないですが、笑いにまぶしてコソコソする部分も多く、サロン系のアクトでは特に参考になるとこもありました。
DVDで見ててゲラゲラ笑うタイプの感じではないものの、ショーの雰囲気は良いし安定感もあってたまに見返したくなる一本。
Disc 1 – Stand Up
ステージでのカードマジック。
サロンよりちょっと大きい劇場みたいなとこでの演技です。
さすがに後ろの人はカード見えんと思いますが、テーブル使わず垂直に現象起こせてだいたいの見た目とちょっとした説明で現象を伝えられるのでこういうのは覚えておきたいもんですね。
Card and Glass
ワイングラスの中に1枚カードが入っていて、観客に1枚好きなカードを言ってもらいます。
ワイングラスの中のカードを見るとジョーカーですが、ハンカチでひゅっとやると観客のカードに変わります。
軽いジョークから入れてビジュアルだし観客に前に出てきてもらわなくていいのでオープニングに最適なトリックです。
似たようなことをやろうと思えば解決法はいくつもありますが、観客が近くにいないサロンアクトならほぼベストな解決かと思います。
Card Printing
タマリッツシルクです。
シルクをあれするところがよくて、前に出た観客がどう思うかはわからんですけど、公明正大さのアピールと観客いじりでうまーく注意をシルクに集中させて、「観客がずっと持っていた」ということを刷り込みは完璧で、気さくなキャラもあってかオフビートを作るのもとても上手いです。
サロンではよく使われる手法ですが、こういう無敵状態を上手く作れたらなんでも出来て楽しいでしょうね。
Bill in Lemon
ビルインレモンです。
なんか観客が全員レモンを持っていて、何人かに適当に投げてもらって、そこから選んだ1個の中に入ってるというおもろい見せ方です。
別に数個でも良いとは言ってましたが、この規模だからこその面白さかなとは思います。
インした札の確認は破片で行い、そこにもう一工夫あって、観客が選んだレモンから出てくるので良い感じに気持ち悪いです。
お札特有のギャグも入ってますが、どっちかというとカードでやりたい現象っすね。
Silver Prestige
コインがグラスの中に移動します。
後半は小さいグラスの上に大きいグラスをかぶせて、その上にハンカチをかぶせますが移動します。
めっっちゃ不思議なんですが、特殊すぎる道具が必要でたぶんこれ見てもほとんど演じる人はいないと思います。
クックパッドでフードプロセッサーが必要なレシピに出会った時のあの感じというか、絶対それ使った方が美味しいんだろうけどめんどくさそうだからつくれぽ数も伸びないレシピみたいな。
しかしまあこの手の道具を使った手品の見せ方としては好きな方でした。
こういうのシリアスにやりすぎたり、見せれるからと言って全部見せたりしたら、なんか知らんけどそういう機械があるんだろうなと思われて終わりだと思うんで、あえて想像の余地を残してるあたりはさすがだなーと。
Cards to Pocket
観客を2人ステージに挙げて、両手をしっかり掴んでもらいながら行うカードトゥポケット。
大まかな流れはよくあるやつと同じ。
観客に腕掴んでもらうとこは絵面は面白いけど、不可能性が高まってるかどうかは微妙ではあります。
結局ポケットに手入れるわけですし。
Disc 2 – Regular Cards
2巻目はレギュラーデックを使った手順を解説しています。
ここからはテーブル使うやつも多いです。
割とオーソドックスな現象が続き、技法より演出に見所あります。
Imagination
レギュラーでインビジブルデックっぽいリバース現象をやろうとしてる作品。
結構好きです。
イマジネーション上のカードを扱うことに説得力を持たせる演出で、ややオチのインパクトを弱める気もしますが、いきなり想像上の選ばれたカードを抜き出してひっくり返して元に戻すというよりも見やすくて、本当にそういうことをしたという印象も強まると思います。
Poker
ポーカーつってもポーカーデモンストレーションではなく、4枚のKを4つのパケットの1箇所に移動させ、KがあったところにAがあるみたいな現象です。
カットは観客にやってもらえるので、スペクテイターカットエース的な効果もあって良いですね。
観客に持ってもってもらえばテーブルも要らないし、ガスタフェローのあれ的な見せ方もできるかなと。
このディスクの中では一番気に入ってます。
Not Your Card?
観客のカードではなく、同じ数字の違うマークのカードばっかり出してしまって、その間から観客のカードが出てきます。
同じ数字のカードが連続で出るって、実はわかってるくせにわざと間違えてることが観客にも伝わるわけで、演じ方が難しい手品だと思います。
どうせわかってんのにが伝わった時点で早くしろやって感情も芽生えるし、いくらコミカルにしても長く感じてしまうんでオチにもう一捻り欲しいあたりです。
The Bubble
Everywhere Nowhere的な、3枚のカードが全部観客のカードになる手順。
空中の泡の中にカードが浮いてるという設定です。
これ系の手順って、元に戻った後歓喜のカードをどうするかで好み分かれるとこですが、この泡の演出はそこらへん上手く解決してると思いました。
全部同じカードになるとこが泡とどう関係してるのかはよーわからんでしたが。
Cards Across
サロンでのカードアクロス。
ダイレクトな方法ですが、ハンドリングは練られていて、パケットを観客に渡してマジシャンが触れないようにしてから、観客に移動させる枚数を決めてもらうフェーズがあるのが良いところ。
Card on the Floor
カードを選んでポケットに入れてもらい、それと同じ数のカードを3枚出すと言い、一枚ずつ出して床に落としていきますが、外れてます。
床のカードを見ると3枚とも観客のカードのフォーオブアカインドに変化しています。
テーブルでやるとなんてことない手順ですが、床に落とすところが面白い手品です。
別にこの手順じゃなくても、この原理使って床に落としたカードが変化するのは良さそう。
Card on Forehead
デックを箱に入れて、おでこのとこで回転させると選ばれたカードが抜け出しておでこにくっつきます。
箱から一枚あれする方法の話なのですけど、これがなかなかいい感じです。
どうやっても音がするんでクロースアップじゃ厳しいけど、体を大きく動かせるとこだとストレスなくできるかなと。
Dracula
ドラキュラのストーリーに合わせたカードの変化現象。
血吸って黒いカードが赤くなるみたいな感じです。
なんか怖い声のナレーションが入るんですがここだけ日本語字幕が抜けてることもあってかあんまピンと来ませんでした。
擬人化したストーリーだけの演出手品があんま好きじゃないってのもありますが。
Card in Glass
観客の持ってるグラスにカードが入るというこれどこでやるんって手品です。
The Vanishing
2人の観客にカードを選んでもらい、1枚目は普通に当てますが、2枚目はそのカードと同じ色のカードを全部消すっつって実際にデックが半分になります。
全消しじゃないことでストレスも低く演じやすい手順です。
なんか選り分けてそのカードだけ上手く残した感も強いですし。
Disc 3 – Cards With Props
色んなギミックやデュプリケートなどを使った手順が解説されてます。
Stapled Card
いわゆるホッチキスで止めたカードというやつ。
2枚のジョーカーをホッチキスでとめ、その間に観客のカードが挟まります。
元になってるのがラモンリオボーの手順で、これがとても良いので間違いない感じです。
カードにサインもさせれるし素敵。
Invisible Triumph
トライアンフですが、観客が言ったカードで行います。
たまーにこれを使ったトライアンフを見ますが、これをそのまま演じるのより跳ねるかどうかは疑問ありますね。
トライアンフにすることで観客が自由に言ったカードというのはボヤけますし、トライアンフもクリーンとはいかないので。
箱から出して表裏混ぜるとこまでの流れは綺麗だし、その他ハンドリングも悪くはないのですが。
The Lovers
2枚のカップルのカードを離した場所に戻してもくっつくというあれ。
オチは他のカードが全部ブランクになります。
この手の手順の演出として恋人同士が云々というのはだいたいなんか恥ずかしい感じになりますがマゴミゲさんは下ネタも入れてきてて結構アウトな感じでした。
こういうの本当に気をつけないとやばいなと思います。
Four Ace Routine
ギャフを使うアセンブリーです。
マスターパケットのカードを表向きにしておくのが特徴で、先に全部消してから1枚ずつマスターパケットのカードがAに変わっていきます。
全部のカードの表を見せれるのでフェアな印象は強いですが、消えて宙ぶらりんの時間が長いのはちょっと理屈がよくわからん感じもあり。
Nudist Deck
デックが裏表とも真っ白になって元に戻ります。
アスカニオが元ネタらしいです。
これラフ使ったなんちゃらデックってありましたが、ラフ使わない方が変に気使わなくて良いですね。
まあどっちも手渡しは出来ませんが、やっぱサラーっとカード広げられた方が自然だとは思います。
Cannibals
カニバルカード。
ここからシャドーカードを使う手順で、綺麗に食べられます。
しかしどうせシャドーカード使うならもうちょっと活かして欲しいなーってとこもあり、レギュラーでやる時のもっさり感が残ってたりもします。
まあシャドーカードはシャドーカードでストレスなんでバランス考えるとこういう感じになるのかなーと。
Transposition
2枚のカードのトランスポジション。
かなり入れ替わった感の強い見せ方です。
シャドーカードの使い方として消えるより変化の方が効果的だと思ってますが、トランスポジションでもわかりやすくて綺麗な現象になってます。
2枚のカードが入れ替わる手品にしては手続きが重たい感じもしますが、基本のトリックとしては良い例かと思います。
Frog and the Prince
カエルに折ったカードのあれ。
ぴょんぴょん飛ばせてカードを減らすんじゃなく、観客が好きな場所にカードを置いて、そこにあるカードがカエルにしたカードでカエルが観客のカードに変わってます。
カエルをあれする手法はマゴミゲさん好みの感じで、シャドーカード使う手順として他の一般的な技法に頼らず気配もなくとても良いです。
演出として古いカードつかうのも、大胆なカード構成も理にかなってます。
Zelig
1枚のジョーカーが3枚の観客のカードに変わる手順。
デックとの接近が最小限で4回チェンジしてとても不思議です。
これはシャドーにもそんな気を使わなくて良い仕様で一番取り入れやすいかも。
Zeligって邦題でカメレオンマンってついてるウディアレンの映画のタイトルで、その内容がカメレオンのようにどんな環境にも順応して姿形を変える男のフェイクドキュメンタリーなのですが、ウディアレンの映画の中でも飛び抜けて面白いのでおすすめです。
FISM ACTS
2003年のカード部門1位の全手順解説と、他にいくつかのトリックが解説されてます。
FISM ACT 1
これが2003年のやつ。
ワイングラスを使ったルーティンで、基本はカードの入れ替わり現象。
そん中でデック全体が変わったり色々あります。
オープニングはテーブルに伏せていたカードが観客が言ったカードと一致するトリックでこれがとにかく良いです。
中盤はややもったりするとこもありますが、2010年代以降のビジュアル特化なルーティンとはまた違った味わいがあって不思議。
FISM ACT 2
こっちは2000年のアクト。
フルアクトではないようで、スタジオでの無観客試合です。
解説されてるのはオールバックのルーティン。
がっつりダブルバックを見せるタイプで、最初に4枚の裏裏を置いておいて、最後にそれがAになってるのがオチです。
オールバックに何を求めるかにもよりますが、個人的には結構好きな手順でした。
やっぱり両面裏に説得力を持たせるには本当に両面裏のカードを見せるのが一番強くて、それをいかに処理するかが勝負だと思います。
裏のとこにカードを書き足すアイデアも良く、表が出てきた時のカタルシスも強い手順です。
あとは銀銅のトランスポジションとコインアンダーウォッチの解説があります。
どっちも普通目です。
いやでもこの普通というのがこの人の凄さというか、この感じで不思議さ面白さを演出するというのは凄いです。
EMCの1本買うならこれって感じではないですが、逆に他の出演者たちは何かが尖ってるから面白かったりするので、こういう普通に凄いみたいな魅力も見といて損ないと思います。
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