2000年にHermetic Pressから出たドイツとスイスのマジシャンがたくさん参加しているカードマジック本。
New Card Compositionsのサブタイトル通り、現象のアイデア自体が面白い作品が多くとてもお気に入りの一冊です。
My Name Is…? (Andreas Affeldt)
観客にデックをシャッフルしてもらい、デックを表向きに広げると白いカードの中に何枚か文字が書かれたカードが入っていて、演者の名前が順番通りに並んでるというオープニングにふさわしいトリックです。
日本人でもひらがなにすれば十分不思議に見えるかと思います。
文字数少ないとシャッフルのバリエーションも色々考えられそうです。
Perfect Harmony (Manfred Bacia)
2デック使ったカードの一致現象。
中編ぐらいのルーティンになっていて、読んでてもそこでそれやっちゃって大丈夫なのかと思うところがあるぐらい巧妙です。
Cutting Corners (Christoph Borer)
トーンアンドレストア現象。
復活した後のオチがとても面白いです。
かなりお気に入りのトリックで一時期よくやってました。
ということはこうなってたのではないかという想像をさせない絶妙なサトルティが素敵です。
Rainbow (Christoph Borer)
レインボーデックオチの予言トリックです。
このトリックに合ったフォースの解説がメインで、徐々にカードを減らしていく系で楽しい感じになってます。
表を見ていいシチュエーションなら普通に実用的。
Triple Somersault (Dieter Ebel)
連続するリバース現象から、カードが消えてジャケットの胸ポケットからライジングしてきます。
脈絡は微妙と言えば微妙ですが、胸ポケットライジングはストレスも低いしビジュアルで楽しそうです。
工夫すればいつの間にか移動してたというような見せ方も出来そうですね。
Chicago – and Beyond (Oliver Erens)
シカゴオープナーのバリエーション。
2段目の見せ方がちょっと違ってて、「じゃあさっきのやつはどうなったの」となりにくい終わり方。
あーそこでその技法かーと一瞬思いましたけど、セリフと合わせるとそこまで変ではなく、説得力もある見せ方です。
Pressing On (Oliver Erens)
4枚の白いカードにエースが印刷されていく手品。
変化のシークエンスではカウントを使わず、軽やかに1枚ずつ変わっていきます。
最後の1枚もクリーンに見せられるようになってます。
パケットの中に何かがあれするので、ちょっと扱い辛さもありますが特に処理にストレスもないし、無理に何かに繋げずパケットトリックとして見せても十分ではないでしょうか。
Fade Away (Oliver Erens)
選ばれたカードの表が消えてブランクになるという手順。
スイッチ技法の解説がメインで、元のやり方からちょっとした工夫があり、イロジカル感がちょっと軽減されてます。
手順は技法の違いと演出によって観客の印象を変えられる構成という感じになっていて、シンプルな手順ながら参考になる部分多いです。
The Light-reft Spread Pass (Piet Forton, Wolff von Keyserlingk)
コントロール技法です。
スプレッドを閉じたら終わります。
このコンセプトは有名なバリエーションがあったりしますが、Gagnon本の中でこれをテーブルでやってるやつがあってやばいなと思いました。
この技法使った手順が2つ解説されてますが、まあコントロールだし特にこの技法である必要はない感じです。
Sprung (Gerry)
トランプに輪ゴム巻いてプロダクションするやつ。
ピョコーンと飛び出すやつじゃなく、ピョコンと立つみたいな感じのやつで、見た目とても楽しいです。
吹っ飛びすぎる事故リスクが低いのは良いのですが、ややカードが痛みます。
Shaker Uprising (Gerry)
箱の中にデックを入れて、シャカシャカするとセレクトカードがアップライジングします。
軽い準備は必要ですが、この方法で上がってくるのかという感じがあって楽しいです。
デックはレギュラーなので好きなタイミングで演じることができます。
A Case for Premonition (Roberto Giobbi)
観客が完全に自由に言ったカードがデックの中になく、演者のポケットから出てきます。
ダイレクトなコールカードのカードトゥポケットだとちょっと大変なところをプレモニション的な見せ方にして怪しくなくしていて、プレゼンテーション的にも面白いです。
Blackout (Peter Grandt)
トーンアンドレストアカード。
サインカードで行う完全復活バージョンです。
最後のピースをはめるところが良いですね。
完全復活で手渡せる形だとかなり良い方だと思います。
色んなアイデアが詰め込まれていて、クレジットも充実してるので勉強なります。
Jolly Jumper (Pit Hartling)
94年の横浜FISMで演じられたトリックだそうで、たぶん他で解説されてないのでこれだけのために買う価値があります。
現象はセレクトカードを使ったルーティンでメインは移動現象なのですが、確かにそのカードが移動したという説得力がとても高く、この手の手法を使うものとしてここまで隙なく作れるのかという手順です。
The World’s Greatest Card Trick
【現象】
観客がレギュラーデックの中から自由に1枚のカードを思い浮かべる。演者がそれを当てる。サクラなし。他の人に繰り返し演技可能。
【感想】
読んだ人それぞれが何かを感じとれば良いと思います。
いやまあ理論的な話というか、こういう知識は多いほど良いのでありがたいものではあるんですが。
Reversed (Juno)
リバース現象からのパケット間のカード移動。
手法のリサイクル的な構造になっており、無駄なく現象が起こせるだけでなく、ディスプレイなどの詰めも良くてとても綺麗なトリックです。
Clever Is as Foolish Does (Wolff von Keyserlingk)
観客がジョーカーを差し込んだところから観客のカードが出てくるルーティン。
3段回になっていて、解説で3段とも演じることを推奨している通り、前後の現象の手法のずらし方とか伏線の効かせ方がとてもよく出来た構成です。
Tablehopper’s Holy P.O.D. (Christian Knudsen)
穴あきジョーカーを使ったポイントオブデパーチャーから、カラーチェンジングデックへ。
穴あきジョーカーの手品はだいたい好きで、これもめちゃくちゃはまりました。
バニッシュの衝撃と、サトルティを活かしてカラーチェンジングオチまで持っていく貪欲さとても良いと思います。
穴あきバニッシュも色々ありますが、ここで解説されてる方法はサインカードでもできるしビジュアルだし最強の部類じゃないでしょうか。
Illusion in Red & Black (Erhard Liebenow)
残りは全部黒の中から1枚の赤を選びました的な手品です。
フォースの必要はなく、別の方法でそう見せるのですが、それだったらフォースしたいという気持ちと、やっぱり自由に選んでもらえるのはいいよねという気持ちと、色んな気持ちがあります。
Super O.O.T.W. (Magic Christian)
超自然なアウトオブディスワールド。
似た構造のもので有名なのがありますが、自然さを求めるとここに行き着くのだと思います。
ちょっとそこ大事なんじゃないですかーってとこがサラッと一文で済まされてたりしてあれなのですが、ハンドリングもそれをやるタイミングも良い感じです。
Thumb Print (Carlhorst Meier)
ブランクカードに親指で魔法のインクをペタペタすると選んだカードの模様になる手品。
絵面と演出勝負の手品ですが、絵面と演出面白いので大丈夫です。
Herschel (W.F.M.T.W. Melmoth)
観客のストップで2枚のカードを差し込み、その両隣が全部Aでしたという手品。
ディスプレイがオシャンで、かつ原理を上手く隠せてると思います。
ジェミニツインズ系のものと比較するとややストップの自由感がぼんやりしますが、さらっと4枚出せるのでいいかなと。
Afterimages (Reinhard Müller)
アンビシャスカードの後に、4枚のジャックの中にセレクトカードを入れるとそこから消えてまたデックのトップから出てくるという感じの手順です。
ハンドリングも凝っていて、Afterimagesの演出にも合ってます。
まったりと見せる手順だと思うのですが、物理的な移動現象を全く違う見せ方にするセリフも良いです。
Sample (Romi)
ビニール袋にジャンボカードの予言が入っていて、それは外れるのですが、もう1枚ポーカーサイズのカードが入っていてそれが観客のサインカードという手品です。
これがめちゃくちゃ良くて、サロンサイズぐらいならめちゃくちゃ映えるし見た目にも手法的にも楽しい手品になってます。
UFO (Santo)
ビジターというか入れ替わりというか、赤のKの間、黒のKの間、デックの中と3点方式で2枚のサインカードが移動する感じの手順です。
メインの変化がビジュアルで、現象前に疑われるポイントが別のところに隠されているのでフェアに手順を進めることができます。
処理は若干バタバタしますが、現象の中で行えるようになっていてエンドクリーン。
Easy and Strong (Wolfgang Sommer)
黒の中に1枚の赤いカードがあってそれが観客のカード的な手品で、見せ方がめちゃくちゃ面白く無理がありません。
タイトル通り難しいことすることなくインパクト強い絵面を見せられます。
一応準備がいるトリックとして解説されてますが、別になくても手軽にできます。
Captain Hook’s Card Trick (Helge Thun)
フック船長のように、カードを引っ掛ける手品です。
指を曲げてしゅっとやると折り畳まれたカードが指に出現して、それが観客のカードという。
かなり細かいとこまでこだわってる手順で、デックに戻して観客にシャッフルしてもらうから強いです。
設定上片手で色々やる必要があって、面白ハード技法が紹介されてます。
Bulkoki (Helge Thun)
ビルチェンジして、チェンジ前のお札がデックの中のサインカードに巻き付いた状態で見つかります。
めっちゃ良い現象じゃないですか。
手法も賢く、よく練られています。
個人的にはこの本の中でもかなり好きな方のトリックです。
The Charm of the Queen of Hearts (Udo Wächter)
Spectator Cut the Acesから始まる色んな現象があれこれ起こる超大作。
クイーンが出現したり囁いたり消えたり入れ替ったり挟まったりします。
Out of the Blue (Thomas Waldeck)
4枚のエースがブランクに変わり、観客が選んだカードのみが色違いのカードでしたというトリック。
技法もちょこちょこ工夫があるものですが、こういう現象をどう見せるのかという話がメインです。
なんとなく見た目にわかりやすいから適当にやっちゃいがちですけど、どういうイメージで現象が起こったのかのセリフ入るだけで違うなと。
It Doesn’t Get Any Simpler (Thomas Waldeck)
観客の手の中で起こるサンドイッチカード現象。
超シンプルで効果も高いです。
ちょっとしたギャグ的な展開がうまいこと色々誤魔化せるのに機能していて、スイッチを使わない観客の手の中で起こる現象としてかなり理想的な解決に思います。
手の中で現象が起こるわけないからあの時にああなってたはず、みたいなことを思われにくい感じです。
Pentium Card 52 (Thomas Waldeck)
パソコンをテーマにしたトリックで、最後は観客のカードがフロッピーディスクにくっつきます。
フロッピーディスクはともかく、今だとパソコンの役割が違っててちょっとこのままのセリフで演じるのは難しそうですが、現象を起こしつつあれこれ準備しつつあれは隠しつつみたいな構成がうまくいってるので、参考になる部分は多いです。
Feminine Intuition (Jörg Alexander Weber)
観客が観客のカードを見つける手品です。
そういう現象として成立するほど万能なフォースが解説されてます。
手順全体の流れも自然です。
Electric Wand (Jörg Willich)
観客にカードを選んでもらいデックに戻しよくシャッフルしてもらう。更にカードをボウルの中に入れて電動泡立て器で混ぜる。カードが当たる。
いやー最高ですこれは。
カードが当たるところがとんでもなくドラマティックで本当に最高。
人生で1回だけ実演する機会に恵まれ、今でも手品を頼まれたらこれを演じられる場所かどうか考えるぐらい好きなトリックです。
Bizarre, Bizarre (Gerd Winkler)
タイトル通りちょっとビザール要素があるカード当て。
まぶたをホッチキスでがっしゃんします。
現象はカード当てなのでそこまでする必要があるのかとは思いましたけども、そこまでするからこそカード当ての演出が活きるのかなとも思います。
ちょっと感情の持って行き方に困りそうではあるものの、カードが当たって本当に怖いって感じにできそうです。
The Smoke Frame (Wittus Witt)
カードインフォトフレーム。
フレームは専用の道具が必要ですが、フォースとクリーンなバニッシュが一緒にできるセットが肝です。
数枚の中から1枚選ばせてそこから消したい時には有効かと思います。
数枚だと消えたことを示しやすいので良い方法です。
Backstage (Daryl X-tal)
首からぶら下げるタイプのネームケースの中にカードの破れ目を入れて観客にぶら下げてもらって、あれこれルーティンをした後にデックをビャってやると破れ目が出てきて、ネームケースの中から破ったカードの本体が出てくるという素敵現象。
バックステージパスに絡めた演出で行われ、然るべき場所でやったらめちゃくちゃ盛り上がりそうです。
手法もラフに行うような感じのもので超かっこいいっすね。
アンソロジーものはある程度の当たり外れは覚悟するものですが、この本はかなり打率が高い方だと思います。
兎にも角にも現象が愉快で、ここまでトランプで遊べるのかという手品が多いです。
全体的に見ると斜め上のばっかりじゃなく、バランスも良いので割と誰にでも勧められる一冊。
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