by jun | 2019/04/26

EMC4枚組のダニダオルティス第2弾。
今んところ2つ出てんのは彼だけですかね。
よくまあ短期間にボコボコと鬼クウォリティの作品リリースできるもんです。
このDVDセットは2014年リリースですが、この前のレクチャーで演じてたのもあって今でもダニダオルティスのレパートリーとなってる作品も多数収録されています。
2巻では単著も出てるシステムとスタックの解説もあり、実践を交えた理論解説もあって非常に学ぶ範囲の広いDVDです。
どちらか1本というならUtopiaの方を勧めるかもしらませんが、今となってはセットで1本て感じなので両方行きましょう。

Disc1 – 100% DAORTIZ

サロンぐらいの規模のショーががっつり収録されてます。
他のディスクでも同じ場所での演技が入ってるので丸々入ってる感じではありませんがこのディスクのパートで一つの流れは出来てるのでそこらへんも参考になりますし、ステージとテーブルを大きく使ってどのトリックにも観客の選択が深く関わるので楽しくて良いです。
古今東西のマジシャンのトリビュートというのもテーマになっています。

L’HOMME MASQUE

何人かの観客にカードを見て覚えてもらいますが、みんな同じカードを覚えていて、デックからそのカードが消えてテーブルの上に置いてあるカードがそのカードになります。

他のDVDでも解説してるネタですが、複数の観客に覚えさせるのが良いです。
不可能性も高まってるし保険にもなってて、そこからカードがクリーンに消えるから「みんなが同じものを覚えるように仕向けられた」という疑いも反らせてます。

EXACTLY 10 CARDS

ヘンリーエバンスのあれのレギュラーバージョン。
EXACTLY 9にしてマークを観客に決めさせるところがうまい。
カットパートは100% DAORTIZという他ない解決なのですが、あれで観客のこと持っていく畳み掛けのリズムの良さはさすがという感じ。
観客にカットさせるのもおもろい。

MEMORISED DECK

シャッフルしてもらったデックから始める記憶術のデモンストレーション。
恐ろしくよく練られた構成で、終盤に向けてどんどん不思議に、より盛り上がるような手順になっています。
ポケットから観客のカード出すところが気に入りました。記憶術の中であれやるとすごく良いと思います。
演者の負担も最小限で、まあ特定のスキルは要りますが即興で始められてあのエンディングならバランスは悪くないでしょう。
ある程度演技中に頭使うってのは見た目上の怪しさは消せるので、適切に取り込まれた手順は頑張って覚えたいものですね。

ACE ASSEMBLY

エースアセンブリ。
見せ方的にはスローモーション風で、消失を示したごとにリーダーパケットを広げてエースが増えてることを確認してもらいます。
ラスト1枚のをいかにフェアに見せれるかが鍵ですが、リーダーパケットにある関係ないカードの情報言うのが上手く効いててハンドリングも流れではほぼ違和感なし。
マックスメイビンのあれ的な何の上手い使い方だと思います。

TRAVELLING THOUGHT

エニエニからのthought cardの移動。
デックを2組使って行うもので、原理の巧妙さという意味では一番かもしれません。
全体通してダニダオルティスは消失の見せ方へのこだわりが強いですね。
ここで説得力あってフェアならどっかに移動しててもおかしくない的なというか、ちょっと仕事が残ってても堂々としてられます。

CTD COINCIDENCE

Sympathetic 13 のバリエーション。
観客がシャッフルしたデックからマークごとに分け、そこからまた順番を入れ替えたりするけどハートとダイヤ、スペードとクラブの並びが一致します。
レギュラーでやる同種のプロットの中ではベストじゃないでしょうか。ビジュアルに変化するより現象が絞れてていいし、随所に観客の選択があって不思議楽しい手順です。
一致の示し方とかスイッチパートの見せ方とか演技的に参考になる部分も多くて、後半の盛り上げ方とか最高すね。

TRIPLE INTUITION 2

前作TRIPLE INTUITIONとは違って観客の選ぶカードは1枚。
それをどんどん観客の指示で減らしていって最後に残ったカードが観客のカード。
同一テーマの作品は多々ありますが、ダニダオルティスがこの手法を取ってるというのがまず興味深いところです。
まず観客が想像しそうな予想は徹底的に排除されていくし、前編サトルティのきめ細やかさがあって流れるように可能性が消えていきます。

どっちかってとTRIPLE INTUITIONの方が好きかなと思ってましたがレクチャーで見てかなり印象が変わった手品の一つ。
臨場感というか、まさかまさかで盛り上げるタイプの作品なので会場のアゲ感に完全に当てられました。

HER MAJESTY SOLO

ショーのトリにダニダオルティスがよく演じてるというネタで、トリネタに適してるっぷりがすごいです。
選ばれたカード以外全部同じカードでしたというネタなんですが、全部同じカードという部分にも観客の選択が影響してるので気持ち悪さ半端なく、トリック的にもまあ良く出来てます。
スペリング要素ありますが日本語でも不思議さ損なわずに演技可能。
単品販売もされてるネタですが、ちょっと演じ方は違うみたいですね。

Disc2- FASCINATIONS

テーマ別解説。
このディスクにMY STACKED DECKとC10のpdfがついてます。
C10はスクリプトマヌーヴァから日本語版が出た模様。
C10 | スクリプト・マヌーヴァ

HANDLING THE DOUBLE

ダブルカードの扱いについて。
エースアセンブリの解説もここでされてます。
あと”Queens Production”という4カードプロダクション。これもレクチャーで見て、ちょっと演出足されてておもろかったですね。
ダニダオルティスはカウントとかターンオーバー的なぱっと見怪しいディスプレイ系の技法はあんま使わない人ですがダブルカードの扱いはめちゃ上手いです。
自然に見えるテクニックもそうだし、使い所が肝だと思いました。あまり現象に直結するとこでは使わない感じ。

TRIUMPH

トライアンフについて色々。
例の状態になってからのハンドリングとか、表に広げるか裏に広げるかみたいな話まで。
ここでの主張に反してオープントライアンフは表の中に裏で見せてますが、あれは構造上そうするしかないからでしょうね。1回反転させれば裏から見せれるけどクリーンさはかなり減退しそうだし。

アイデアとして紹介されてるネタはどれもマニア相手には超面白いネタで、ある程度の前提を共有している事を逆手に取るという考え方としても超参考になります。

MY STACKED DECK

ダニダオルティスが愛用してるスタックについての解説。
組み方から特性までわかりやすいです。
詳しくは前に書いたのでこちらを。

My Personal Stack by Dani DaOrtiz

C10 SYSTEM

超簡単なセットで色々できちゃうよーというシステムの話。
演技としてエニエニと予言のやつ見れます。
結構レクチャーで使ってて、ショーの途中に強烈な現象起こすのに超ハマってました。
これも前に書いたのでこの辺で。

C10 by Dani DaOrtiz

GENERAL CARD

複数の観客に別のカードを見せたように思わせて実は同じカードを見せるというあれ。
テクニックそのものよりエンディングが難しいので3つのルーティンは参考になりましたね。
中でも”Robert-Houdin”というジョーカーが3人のカードに次々と変化するネタは面白いし良い使い方だと思いました。
最後ジョーカーに戻るからエンディング問題もないし、周り囲まれた感じだと意外と自然にできて良さそう。

DISC3 – PSYCHOLOGY

Utopiaで語ってたサイコロジーより観客の思考に重点を置いた感じでしょうか。
見ることと感じることの違い、期待のコントロールなど手品をより不思議に見せるという話が前半。
ここはトラバハンドエンカサで語ってる内容と被ってる部分が多く、レクチャーで強調していたこともありましたので超大事なところ。

後半は見て覚えてもらうカードの話で、周辺テクニックであるフォースとフィッシングについてたっぷり語っています。
いくらジャジースタイルでどうにでもできると言ってもやはり基礎理論しっかりしてるからというのも確認できますね。可能な限り怪しさを消すか忘れてもらうような話。
スペイン式の理論がこれだけで足りるかというとそんなことはないんですが、比較的取り入れやすい話が多いのでこんな感じだよーってのを掴むには良いと思います。
フィッシングとエキボックの話はレクチャーでもしていて、DVDには入ってないおもろいのもありました。DVDでも手法というより心構えについて語られてるので、安全でフェアなものというより無敵状態でやりたい放題を学びましょう。
このディスクのデマトスインタビューパートで、ダニダオルティスの失敗からの鬼リカバリー映像が収録されてるのでそこも超参考になります。
ドグマティックでドラマティックな手品を目指す人は必見のディスク。

DISC4 – SEMI-AUTOMATIC

もう全然セミオートちゃうやろというのもありますが一応そういうディスク。
でもバランスとしてはこんぐらいハンドリング頑張る的な物の方が演じやすいのかもしんないですね。その上サイコロジカル要素も頑張れなのもあったりしますが。
本筋の手法よりも細部のサトルティに見所があります。

OIL & WATER

3-3の水油でオチは全部赤になります。
ちょっと変わったカード構成でおもろいすね。
なんとかかんとかカウント的な、ちょっと変だけど説得力の強い技法を全編に使うのですが、同じ動きでクリーンに見せるとこの挟み込み具合が上手くて巧妙ですね。

SPECTATOR OIL & WATER

観客と一緒にやる傑作オイルアンドウォーター。
細かいとこまでまあよく考えられていて超良いです。
これフルデックバージョンもあるけどここまででも十分不思議。
片方は混ざらないっての見せるのは超効果的ですね。

ONE SECOND MIRACLE

観客2人が選ぶカードが一致する手順。
片方の観客はテーブルの下で一枚裏向きに、もう一人の観客はポケットの中から1枚抜き出します。
どちらの操作にも演者はノータッチで観客の自由度が高くてとても不思議。

LAZY SPECTATOR

観客がカットしたところの数字の枚数目から出てくる、というやつの少し捻ったバージョン。
レクチャーでも関心が高かったやつですねこれ。
同種のトリックの問題を色々と解決しててとても賢いです。
解説はされてないけどシャッフルさせるところもすごい説得力。
Here & Nowでちょっと別バージョンが解説されてましたが、筋は本作の方が断然強いと思います。

BACK IN TIME

時間が戻るという演出のトーンアンドレストアードカード。
サインさせるバージョンもありますが、こちらの方がすっきりしていて演じやすく、演出も効いてるから破ったカードが復活した感もそんなに損なわれてないと思います。
しかし上手い。

CARD IN BOX

ちょっと変わった方法でカードを選んでもらって、そのカードが箱の中に移動します。
その選ばせ方は一体なんだというものですが、楽しくてそういうことが気にならないのが良いところであり難しいところですね。

SPECTATORS FIND THE ACES

好きな枚数、カット、ストップと観客が色々やって4つのパケット作ってトップがAになります。
ダニダオルティスならそのやり方じゃなくても出来るでしょうというようなトリックで、良い感じに負担減ってて良いです。
この手の現象で観客の操作に統一感がないのは演者の都合を感じてしまうことも多いですが、意図的に色んなことさせてるってのが伝わる構成ならこれはこれであり。

CARD AT NUMBER

ホフジンサーのカードアットナンバープロブレム。
観客が選んだ2枚の合計値の枚数目からカードが出てきます。
デックを半分に分けて行うので1デックで可能になってて、セットも楽になってるのが良いですね。
ダニダオルティス作品の中ではかなり簡単な方。

CONCOARDANCIA

観客が取った枚数の数のカード4枚を一瞬で出します。
似た感じのいくつかありますが、このやり方が1番多く解説されてますかね。
このDVDではすげえ強引な演技です。

TAPED TRAVELLER

サインカード4枚のトラベラー、別々のポケットから出てきます。最後1枚はテープで蓋したポケットから。
ジャケット不要で半袖でもできるのが良いところ。
そして賢くて上手い。
パームのちょっとしたコツやコントロールなど色々と勉強になる部分も多い手順です。

CARD IN BOTTLE

ダニダオルティス流カードインボトル。
なかなか演じるシチュエーションが難しいですがインパクトは強烈で、ダニダオルティス式のテーマの捉え方がよく見える作品です。

RED AND BLACK TRANSPO

Utopiaの演技でやってたけど解説されてない、赤と黒のパケットがまるごと入れ替わるというネタ。
しかし今回も解説してない部分が…
解説してるとこだけでも一発ネタとしては良いんですが、他と比べると観客の参加部分が少なく結構微妙な感じします。そのための後半だと思うのですが。

CARDS ACROSS

10枚から13枚に、そんで選んだカードも飛びます。
なぜ3枚移動すんのかというところにも理由を持たせつつ、セレクトカードも飛ぶので移動がわかりやすく不思議度も上がった感があります。
説得力の高いフォールスカウントも解説。

OUT OF THIS SUIT

2枚のうち1枚を連続で選択させて、それがスペードのA〜Kになります。
オーダーネタでここまで観客の自由度が高いとおもろいですね。
TRIPLE INTUITION的なさりげない設定説明によるサトルティが素敵。

REFLECTION

鏡に写したようにカードが変化していく手順。
Carrollの原案に予言というかカードを選択させる要素を足しているのがらしいあたりでしょうか。
4枚のAからスタートせずにバラバラの3枚が次々変わるように見せるのも構成的に好み。

HOFZINSER’S EIGHTH PROBLEM

2枚のカードの数字の合計と観客が取った枚数が一致するやつ。
CARD AT NUMBERよりは難易度高めですが、サイコロテクの使いやすさが結構いい感じです。
このテーマ自体そんなに惹かれなかったけどレクチャーでおもろいの何個も見て興味が出てきました。
フリーチョイス感というか、そういう意味でライブ向き手品のように思います。
しかしここ2カ月ルドヴィコ療法かという勢いでダニダオルティス見まくってますが、やっぱり映像の限界はありますね。
同じトリックでも実物はもっと凄く見えたし、そもそも映像で伝わりきらんトリックも多いです。
映像でも更に想像力を働かせて見る価値のあるものなので連休中にじっくり見るのに向いてるかもしれません。
実は一昨日ぐらいまで「ボリューム満点!しかも良質!GWに見たい3枚組以上のDVDセット!」という女子向けキュレーションサイトみたいなタイトルのいかがでしたか記事を書いていたのですが、何故か下書きが消えてしまって同じ文章もっかい書く気にもなれずボリューム多くて質も高くて連休中に見たいこの4枚組DVDの感想を書きました。
消えた記事の内容は、たまに寄せられる「こういう手品とかこんなマジシャンが好きなんですけど、おすすめありますか?」という質問全てにDenis BehrのMagic on Tapで返すというもので、Magic on Tapマジ最高という500回ぐらい言った話をまたしてるだけだし別に1行で済んだので良かったですね。実際にだいたいの問題はMagic on Tapで解決できるということも確認できたりしました。

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