2013年に出たJohn Bornさんの本。
めちゃんこに良い本ですよこれは。
とにかく不思議と自然さを突き詰めてる人で、できるだけ技法したくないしカードの表は見たくないしなんならデックに触りたくないって感じでそのためにはなんだってするんですけど、エニエニ本のMeant To Beに比べると扱いやすく色々応用できるテクニックとか原理が多いです。
例えばシステムを使っていてカードをピークする時にパケットを傾けたくないとか、ワンウェイ手品で観客に操作してもらうのにできるだけ自然にやりたいとかそういう話で、この二つは特に素晴らしいです。
他にもデックスイッチやカードをスプレッドしながら数えるテクニックなど使えるツールが結構ありますし、複数の原理を組み合わせたものは軒並みクールで膝打つような賢さがあります。
メモライズドデックについては最強の本の完璧な日本語版が出たので持て余してる人もいないと思いますが、この本には知っておけば即戦力かつかなり不思議なものも含まれているので普通に推せるメモライズド本の一つ。
The Perfect Pick
観客の嘘を見破る式のカード当て。
まあカード当てですからそういう演出をつければどういうやり方でもできるわけですが、この原理はとてもクレバーで演者はデックに触らず観客にやってもらうことも中から一枚抜き出してもらうだけ。
演者は一切観客の方を見てなかったように感じさせることが出来るような凄い手品です。
スーパー最高。
Seeking the Bridge (The Bridging Principle)
リフルピークで3人バラバラの位置から覚えてもらいますが、全員のカードがわかります。
既存のムーブにも工夫があり自然なものに見えますし、ピークすら不要な方法も解説されていてこれがめちゃくちゃ良いです。
手順で解説されてる”Sticking the Bridge”は3人にバラバラの位置のカードをピークしてもらって速攻観客に渡してシャッフルしてもらえるもの。フォースではなく演者はカードを覚えてもらってからデックを渡すまでずっと後ろ向きでいられるのですがとある方法で当てます。
これは飛び道具の中でも比較的扱いやすいもので、使い方としてもシンプルかつSeeking the Bridgeとの相性も良いです。
慣れるまで結構疲れるテクニックではあるんですが、メンタル系の当て物にはかなり有用な技法。
Numerical Reverse Revisited
観客のカードを当て、観客がその枚数目を予言したように見せる手品。
操作自体はクラシックなものなのですが、カード当てるところがスムーズでそこから綺麗にエニーナンバーに繋がるから同じことをやっててもかなり印象違います。
こういう先制パンチ出して後のメンタルパワーに説得力を持たせる見せ方が上手い人。
An Instinct for Cards Revisited
こちらもクラシックの応用カード当て。
まずなるほどとなってBornらしいバリエーションでぎゃーーってなります。
これはそこまでやるネタかと言われたらそうでもない気がするんですけど、見た目的にはそこまでやった方が圧倒的に良いし確かに演技中のデメリットもそんなにないし、彼の手品観の入り口になるような作品です。
これぐらいなら準備もそんな大変じゃないし、なんでもありすぎると萎えるけど原理との組み合わせが面白いし、不思議さの跳ね方が凄い。
Jazzing Baker
エニエニなんですが、考え方が面白くてとても気に入っています。
タイトル通りジャズ系のあれなんですけど、自然かつ自由度が高い感じでカードを選んでもらえて、まさかまさかという空気を作りやすいです。
エニエニオチと武器をいくつも用意してるので安心して堂々としていれられるのもポイント。
ここまで完全武装で行かなくてもそれなりにそれっぽく見せるやりようはありますが、これは一切余計な動きをしたくない系なのでここまでやってこそという感じです。
デックを2つ使うエニエニの盛り上げ方としてもかなり良いアプローチだと思ってます。
Mind Mix
オートマチックプレイスメント系の原理の応用。
枚数目を当てたり配っていって当てるのではなく、演者には絶対知りようもないカードが当たります。
例の手続きに好き嫌いはありましょうが、こういう思ってるより早い段階で当てられる手品だと他に手掛かりが全く見えないので、そういうカードの決め方をすることが誰にもわからないカードを決めるための方法だと思わせられる感じ。
Lucky Penny
ストップトリック+不思議な予言。
ストップトリック前はがっつりシャッフルしてもらえてすぐ配り始められる方法で、自由度が高い選び方をするのでストップトリックからの予言という流れが思いの外ハマってると思います。
一見ただ足しただけにも見えるんですけど、手法の絡ませ方の方がかなり上手くいっててフェアかつ演者がすることが最小限の手数で済むようになってる手順。
Slugged / A Blackjack Bet
メモライズドデックを使ったイカサマデモンストレーション。
地味っちゃ地味なんですが、記憶術のデモンストレーションをやるのに実用性を証明する方が引きが強いとは思います。
結構カード散らかして元にも戻せる方法が解説されてるし、これの後にメモライズド感のないメモライズド手順をするのはなかなか粋なんじゃないでしょうか。
Mathematical 3-Card Monte Revisited
Mathematical 3-Card Monteの応用編。
スプレッドしたデックから観客が3枚抜き出してそのまま始められる仕組みがいくつか解説されてます。比較的手軽なのもあり、どれもとても賢いです。
まずこれはそういう考え方をしたことがないし、知りさえすれば格段に不思議さをアップさせられるもので超興奮できます。
Finally Matched Revisited
3フェーズのメイトマッチングルーティン。
それぞれのフェーズは既存のものなのですが、2フェーズ目から3フェーズ目への移行がとてもスムーズであそこにそういう繋げ方があるのかという喜びがあります。最後にあれができるのはめっちゃ嬉しい。
Right on the Money / Casino Card Killer
カードを1枚決めてもらって、その裏を見ると何か書いてあってそれが予言されてる系のネタ2つ。
他のカードの裏を見ても別のことが書いていて、そこのあらために重きをおきつつ準備は最小限になるようにしてくれてる、はず。
カードを取り出すタイミングとか周辺のセリフもサラッとしててよく出来てます。
めんどいといえばめんどいけど、低負担かつ観客が自由に選択できることのバランスを考えたら普通に良い解決法じゃないでしょうか。
My Ladies
デックを表向きにスプレッドして観客に一枚選んでもらい、スプレッドをターンオーバーするとQにサンドイッチされます。
やや大胆なフォースなのですが、怪しいとこなくいきなりビジュアルにドーンして勢いで持っていく感じです。
もう一声欲しい。
Twelfth-Method Match
メイトカードを使った予言で、観客に選んでもらうパケットをシャッフルしてもらえるもの。
良い感じに終われる時の成功率と現象のバランスがちょうど良く、割とうまくいく部類だと思います。
リーアッシャーの補足コメントが良くて、こういう現象で観客になんかしてもらう時の準備段階の話をしてます。
Watch Transpo
時計に挟んでいたはずのカードを観客がまた選んでしまうトランスポジション現象。サインカードでできます。
どうすればそこにあるカードをすり替えたように見えないかというのを突き詰めている手法でその説得力はかなり強いです。
Queens Prediction / My Cards
カード箱に字が書いてあってそれが変化する手品二つ。
なんかめんどくさそうだと思って読み飛ばしていましたが別にそこまで手間なこともなく普通に面白い気がします。
何も書いてないから現れるのも消えるのもできるので結構色々使い方もありそう。
ここで解説されてるのはあっさりしたギャグ的なもので、ネタのバランスとしてはそれぐらいがいいのかもしれませんが、サカー的な予言とか色違いカードを絡めたナニとかで時間差で出すのも渋くて良いんじゃないでしょうか。
Card in Spectator’s Pocket / Card under Spectator’s Shoe
観客のポケットにカードが移動したり観客の足の下にカードが移動したりという手品です。
足の下のやつはシチュエーション自体がなかなか難しい感じですが、ポケットの方はポジショニングが強くて全然実演可能なもの。
先週ネットショップをポチポチしてたらこの本の在庫があるの見て感想を書き始めたのですけど今見たらOut of Stockでして、見間違えたか先週のうちに売り切れたかのどっちかで意地悪ではないんですが、超面白い本です。
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