by jun | 2019/01/04

どうも明けましておめでとうございます。
今年も大いにエキセントリックに手品を楽しみましょう。
んなわけで読書感想文もウルトラ名著で景気良く初めたいと思います。
1992年にクリスケナーが出した本で、Hellbound、Three Fry、For 4 For、Sybil、S.W. Elevatorあたりを筆頭に現代マジックに半端じゃない影響を与えた一冊です。
昔の本で影響がどうのと書くとお勉強感が出ますが今読んでも普通に面白い本で、最近のビジュアル手品が好きな人なら絶対楽しめます。

この前やってた紅白歌合戦でユーミン出てきて超盛り上がったじゃないですか。「ひこうき雲」は73年、「やさしさに包まれたなら」は74年ですからね。平成最後とか知るか、良い音楽はいつ聞いても良いんじゃという力強さがありました。
ユーミンは去年サブスクリプションサービスでの配信が解禁されて、それを若い人が聞いてかっこいいかっこいい言うてます。
洋楽の影響が強いアーティストなんでインターネット以降そこらへんのリテラシーが上がった今の人が聴くとより良く聞こえたりするのかもしれません。

クリスケナーの手品もそういうとこがあって、パッと見もすごいし今だからこそわかる凄みも味わえます。
個人的にも初めて読んだ英語の本ってことで思い入れが深く、ズブズブと沼にハマるきっかけとなった本です。
30トリック全てが別のテーマのデザインで解説されていて、わかりやすさは損なわずに盛大に遊んでいて様々なカルチャーの引用も楽しく、それがトリック自体の遊び心と一致していてスタイルだけではなく全てがクール。
有名なものは構成の堅さと高度なテクニックで綺麗にはまってるものが多いですが、一般的なクリスケナーのイメージとは少し違ったアプローチの作品もあります。
レギュラーのみで解決できたらそれに越したことはないんですけども、全体の流れやラフさを損なうようなら手段は問わないという感じでしょうか。
クリスケナーが技法のみでの解決を考えてないはずがないので、むしろそういう作品の方が見た目的な完成度は高いように思えたりします。
エキセントリックかどうかは一旦置いておきましょう。

Missing Link

でっかい輪ゴムと普通の輪ゴムを使ったリンキング現象。
理想的な輪ゴムと輪ゴムのリンクを極めてクリーンに見せることができます。
最初繋がるとこは例のあれ風に見えるのですが、その後手を離してぶらんと見せれるのが強すぎます。
ややこしいことを一瞬でやらないといけないのもポップな解説スタイルのおかげで覚えるのが楽。

Hellbound

銀貨から銅貨へのチェンジ、2枚使ってることが露呈するも2枚とも銀、それが移動したりしつつ最後は2枚とも銅貨に。
プロットの面白さを100パー活かした構成に震えます。色々と改案が出てるプロットですがオリジナルのクウォリティも異常ですね。ノーギミックでテーブル使わずにこんなことできんのかと感動しました。
技法は限定されるし別にそこまで変なテクニックを使うわけでもないのに全く新しいことができるコイン手品の面白さが詰まってます。

Three Fry

ここで解説されてるのは皆さんご存知、の形ではなくて3枚のコインが消えて、銅貨3枚になって出てくるというものです。
コンセプト的にはヘルバウンドの方が近いですね。

これが今のThree F”l”yになる経緯については石田さんのコラムに詳しく書かれてます。
コラム:3フライの最初とその後

Perversion

リバースルーティンです。
普通にリバースして最後はセレクトカード以外のデック全体がリバースするみたいなやつ。
発表順はこっちの方が先ですが、Bill Kalushの”The Fidgeting Card”が元ネタみたいなことがPaper Engineに書いてましたね。

ケナー版はビジュアルな変化をオチまで取ってあるのがインパクト強めてていい気がします。

Travlrs 1

オープントラベラー。
クリーンさにこだわった解決法です。
この手法はクリーンさを目的としつつもハンドリングが重たくなりがちですが、あれするのにもたもたしない流れになってます。
コインで似たような構造の手品も作ってますし得意分野なのでしょうね。
これ使うならラスト1枚ももう少し工夫が欲しいあたりではありますが。

For 4 For

一部界隈では必須になってる4-4のスイッチ技法。
4-4じゃなくてもいけるんでアセンブリとかにも使いやすいですし、ブラウエアディションだと難しい入れ替えをさくっと終わらせることができます。
割と素早くやられたり横向いたり縦にぐわんと広げたりするのをよく見る気がしますが、ここで解説されてる方法は角度にも強くディスプレイも自然で、パケットの時なんかでも使いやすいです。

Diet

カニバルカードです。
4枚のKが2枚のカードを食べて4枚の8になります。
ダイエットのタイトルはプロットだけでなく見た目も非常に軽くて良いです。
くるくる示すやつだとなかなかこの感じは出ません。
カードの枚数を示すタイミングとかなんのカードをいつ出すのとか、混乱させないように誤魔化す構成がいちいち見事。

Aftershock

1カード4コインのアセンブリ。
バックファイアオチです。
4隅にこだわらなければバックファイアも手で戻しただけ感がなくて良いですね。
手とカードの下だからわかりやすいですし意外性も作りやすいかと思います。

In Ten City

黒の10が赤の10に変わる連続ダブルカラーチェンジ。
最近だとYoann Fontynがやってたのが有名でしょうか。
プロダクションフェイズもあってボトムからカード飛ばす方法も解説されてます。
最後のチェンジはトップとボトムに置いてどっちも瞬間に変わるというマニアックなものですが、物理的に無理感が出ててとても良いと思います。

Long Gone Silver

ウォンドを使ったスリーコインバニッシュとプロダクション。
スタンディングでできるしウォンドあるだけで片方の手に渡す動きも自然に見えるし複数枚が1枚ずつ消えるような手品の入門には良い手順だと思います。
プロダクションのとこもかっちょいいです。

Menage et trois

これがいわゆるThree Flyの原型のやつですね。
今どんぐらいバリエーションあるんでしょうか。
ラスト1枚問題の解決はこれがベストだと思ってます。

Cloth and Pence

こっちはシルクを使ったスリーコイン。
セッティング的にカジュアルにできるもんではないんですが、視覚的にも音的にも移動が見えるシルクコインはええですね。
バニッシュのとこもめっちゃ好き。
ホルダーの使い方もおもろいですね。
こういうちょっと手間なコインマジックはスルーしがちなんですけども、観客参加型だしサロンでもいけるし覚えておきたいあたり。

Print Shop

名刺の印刷手順です。
何枚かロゴだけが印刷されてる名刺を見せて、それに名前と電話番号とかが印刷されるというような感じで、一気に全部いくので気持ちいいです。
白紙からじゃなくてもビジュアルは良くサトルティも強くなってるような気がしますね。
折れたりしないしそれぞれ渡してしまえば隠蔽できるというのが名刺を使ってる上手さ。

Schwing

ノーギミックのライジングカード。
ムーブは有名なやつですが安全に行えるようになってます。
事故るし事故ったらどうしようもないんでこういう保険はあったほうがええかもですね。
ライジング系はカードをデックに戻してからのフェアさあると不思議さ増しますし。

Twin Peeks

2枚のカード当て。
不思議な2枚目がメインで1枚目を当てつつごにょれる構成で、最小限のセットでなかなかキモい当て方ができます。
見た目的にはこの本の中で一番地味ですが、現象の組み立て方には他と共通するとこ多いです。

Twister

Aのツイスト現象からKに変わってまたすぐAに戻るという色んなアイデアをごった煮したもの。
面構成考えると確かに綺麗な作りですが、あっちこっちに処理すべきものが残るので演じにくさはあります。
Maxi Twist的なやつでよくある、ツイストがあらかた終わってから1枚だけ表向きにみたいな謎の流れもなく、普通に表見せてそれがKに変わるから自然。

The Deep

4枚のコインの移動でテーブル使わず手の上だけで転がしています。
むずい。
手を開いてしまえば直前の怪しいとこはチャラ的なとこがありますが、やっぱかなりスムーズにやらんと怪しいのでかなりきついです。
これのあれ版が流行ったりしましたよね。

Into the Woods

木製のタバコとそれが入らないサイズのパースを使ったルーティン。
ちょっと道具が特殊であれなんですが、これぐらいのサイズのものの消し方として参考になる部分は多いです。
ちっこい入れ物から長いものが出てくるのはやっぱおもろいすね。

Sybil

フラリッシュですが、たぶん皆さんがイメージされるシビルではありません。
なんか縦回転します。
文章でこの動き説明してんのすごいですね。

The Five Faces of Sybil

皆さんが大好きなシビルはこっちです。
5つのパケットに分かれるやつ。

Bad Credit

コレクターです。
ワンアヘッド型というか、うまく仕事を分散させる形式のやつで、4枚のKをテーブルに置く→3枚選んでもらう→Kを箱に入れる→3枚バラバラに戻す→箱の中のKに挟まってるという流れ。
Kを乗せて挟まるでもいけるんですが箱の使い方が賢いです。
セレクトカードとKを分離させて見せるから不可能性高く見せる機能ありますし、箱に入れる前にしゅこしゅこ改めるというのも筋は通ります。
応用範囲の広い技法がいくつも詰め込まれてる強い手順。

3,2, Gone

ウォンドを使った3コインのプロダクション&バニッシュです。
Long Gone Silverより色々と高度で、ウォンドの活かし力もこちらの方が一枚上。
こういう誤魔化し手品を表現すんのにウォンドて便利ですね。

Paint by Numbers

トライアンフのラストでファロー噛ませた状態でマットの上を滑らせてカードが1枚ずつ並ぶやつです。
4列に並べて全部ロイヤルフラッシュ。
まあよくこんなこと思いつきますね。
テーブルを広く使うのこれだけなんですが、このビジュアルはえぐいです。
混ぜるとこも良いし、更なるクライマックスがつくトライアンフとしての構成も超素敵。

Must be 21 to Enter

マニアもびっくり21カードトリック。
21枚の中から覚えてもらって、残りのデックとシャッフルしてから当てます。
元の原理は関係なく、21枚配ってあーあれねと思わせて予想外の行動をして質問することなく当てれるやらしさ。
21カードトリックがメジャーな文化圏であれば楽しいことだと思いますが、日本だとマニアでもそんなにピンと来なかったりしますし辛いです。

Poker in the Eyes

2枚の2からスタートして、2が増えたりジャックに変わったりしつつ、最後はロイヤルフラッシュに変化するルーティン。
途中でデックをカットすることなくデックの上でカードを返すだけで表向きのカードが増えたり変わったりして楽しいです。

S.W. Elevator

アウトジョグした状態でのアンビシャスカード。
タイトル通りの技法使うので難易度はマックスです。
クリスケナーはこの後比較的簡単な”Shifty”を発表していますが、この手順の中にもちょっとその片鱗があるのが面白いところ。

Sybil the Trick

シビルを使ったカードアットエニーナンバー的な何か。
フラリッシュ使うので枚数のとこはテクニックでなんかした感を出すんですが、予言トリックでもあって裏は数理的な原理も使います。
シビルのバリエーション多数あれどこういうマジックに活かした例ってそんなないと思いますしオリジネーター強しというのを再確認した次第。

O.O.S.P.C.A.

“Only-One-Shuttle-Pass Coins Across”の略で、その通りの4コインズアクロス。
3Fly考える人なんだからそれぐらい余裕やろという感じですが、テーブル使うとより意味不明な動き感が消えます。
欲張ったアヘッド稼ぎもしてないのに本当に綺麗だしこの本の中のコインでは簡単な方。

Five Speed

アンビシャスクラシックのバリエーション。
選ばれたカードをデックに戻した後、確実にスペードのA〜5までを抜き出し、カジュアルなタッチでオチまでいけます。
Aと2でアンビシャスカードやった後は345でモンテ的なことをやって5が選ばれたカードに変わるという感じの流れで非常に良いです。

3-D Ropes

3本ロープの手順。
リストアありビヨーンて長くなるのありのてんこ盛り。
3本ロープはレギュラー手順も好きですが、やっぱビヨーンがあると楽しくて良いです。
ロープ苦手だけど比較的覚えやすい方だと思います。ちゃんと事故の心配なく動かせる構成になってるし、メリハリがあってくどくないので見せ方の難しさもそんなないんじゃないでしょうか。

さて、皆さんが毎日チェックされている東京堂出版のリリース予定ページにエキセントリックな本が追加されました。
クリス・ケナー エキセントリック・マジック – 株式会社 東京堂出版

『TOTALLY OUT OF CONTROL:SUPREME MME EDITION』を待望の翻訳。

なにやら出るという話は聞いたことあったんですけどSUPREME MME EDITIONの方なんですね。
SUPREME MME EDITIONってのは去年ぐらいに出たなんかが追加されたバージョンというぼんやりしたことしか知らない情弱なので読むの楽しみです。

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